2022年10月19日水曜日

断想: いまの経済状況・・・詰んでいるのだろうか?

国会審議が続いているが、日銀の黒田総裁に《円安》の責任を求め、「お辞めになったらいかがか」と言う風な攻撃的な批判を繰り返す野党には一言で言えばガッカリ、を通り越して、唖然とする。国際常識からも外れていて、だからこそバカにされるのだろう。岸田首相(も安倍元首相も同じだが)の経済オンチも明らかであるが、野党議員は総じて経済には無学であることが歴然としている。

ただ円安がインフレを招いているのは確かなので、「物価の番人」たる日本銀行も為替レートは所管外であると突っぱねるには無理がある。

さて・・・というわけで議論が進めばいいが、少なくとも「国会審議」には全く期待できまい。

下手な考え休むに似たり

というところか。エコノミストを国会に招待して公聴会を開くか、あるいはディスカッションをさせるなどすれば、社会の理解も進むだろう。


現在の円安を止めるには、日本も欧米に着いて行って攻撃的な金利引き上げを展開しなければならない。しかし、安倍政権8年間で定着してきた超低金利政策を転換して、金利引き上げを開始すれば、低金利で延命してきた中小企業は経営が行き詰るのは必至である。それを支えるのは政府の責任だと野党は主張するだろうが、経営不安を救済するには財源がいる。そこで金利引き上げプロセス下で国債を増発するなら金利負担が財政を圧迫する。その分は財政支出を削減しなければ計算が合わない。

大体、こんな財政運営は日本国民は望んでいないだろう?簡単にいえば、《現状維持》を望んでいるのではないか。だとすれば、低金利を続けざるを得ない理屈だ。とすれば、黒田日銀総裁の政策路線を変更するわけにはいかない・・・

このような経済状況を俗に《袋小路》という。つまり、

日本経済は(ある意味で)詰んでしまっている。

これが一つだ。

ただ本当の《詰み》ではなく打開策はある。但し、《荒療治》しか残っていない。

本ブログでも幾つか投稿してきたので《日本病》で検索すれば多数かかってくる。

これらをまとめると、むしろ野党の主張に沿って、本当にいま金利を上げて行ってインフレ抑え込みに乗り出すほうが、寧ろ日本経済は覚醒するのではないか、と。こんな風にも思ったりする。

思い切ってやったらどうだろうナア・・・

但し、本当にそうするなら、大規模な投資減税、法人税制見直しなど税制のアップデート、更には人材開発・教育投資減税、営業規制・開業規制の緩和、各種資格の柔軟化など、成長機会を顕在化させられるにもかかわらず自民党が避けてきた新規政策が不可欠だろう。

マ、昭和初年の《金解禁》も、当時の日本人がこぞって熱望したそうだから、日本の大衆社会には底知れない怖さがある。

ホント、いまの世相が過去のいつの時代に似ているかといって、昭和初年にソックリなところがある。

そう言えば、昭和初年の当時、日本は「国際連盟」の常任理事国で「世界の5大国」でございますと夜郎自大的に浮かれていた所まで今とソックリだ。

第一次世界大戦中のブームが去り、関東大震災という大打撃まで加わって、長期不況がずっと続く1920年代、政府はヌルマ湯的な金融緩和(=低金利政策)で企業を支援し続け、そのために国内はいいが国際金融システム再構築の流れには乗り遅れてしまった。マネー増発から円安となり、そのため輸入物価が上がり、緩やかなデフレ基調を続けながらも物価全体としては高止まりを続けた。金融緩和にもかかわらず企業経営は脆弱で不況を解決できなかった。そこでついに「これではイカン」と日本経済再生を目指す金解禁が「ライオン宰相」浜口雄幸内閣によって断行された。明治以来の金本位制で定められた旧平価の物価水準に戻すために強烈な金融引き締めが行われた。ハードランディング政策である。案の上、金利は急上昇し、物価は急落、延命措置されていた中小企業はバタバタと倒産し、「昭和恐慌」という未曽有の苦難がもたらされた。昭和経済史・戦前期のメイン・イベントである。

確かにこれは荒療治で、政策は失敗だと非難する人が多い。時の浜口首相は狙撃され、井上蔵相は後で暗殺されたが、しかしこれによってゾンビ企業が淘汰され、産業全体が効率化し、1930年代の高成長につながっていったと観れば、失敗とも断言できない。

つくづく、歴史に学ぶことはあるのにネエと思う今日この頃でございます・・・

ただ、いくら金利を上げていくとは言え、アメリカFRBのアグレッシブな姿勢は、いかにもやり方が荒っぽい。そう感じるのは小生だけだろうか。まるで副反応が激しく出るモデルナ製コロナワクチンの1st versionである。

ここに来て、エコノミストの半数はどうやら景気後退を予測し始めているという。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が実施した最新のエコノミスト調査によると、今後12カ月以内に米国が景気後退入りする確率は平均63%と、7月調査の49%から上昇した。50%を上回るのは、短期ながらも大幅な景気後退に陥った後の2020年7月以来となった。 

 エコノミストらは、米連邦準備制度理事会(FRB)が持続的なインフレを抑えようとする中、景気が縮小し、企業の人員削減が進むとの見方を示した。 

 米国内総生産(GDP)については、2023年上半期に縮小すると予想。前回調査では小幅な成長を見込んでいたが、今回は1-3月期に年率0.2%、4-6月期に同0.1%のマイナス成長を記録するとみている。 

URL: https://jp.wsj.com/articles/economists-now-expect-a-recession-job-losses-by-next-year-11665958105

Source: Wall Street Journal, 2022 年 10 月 17 日 07:09 JST

景気の先行きをみる先行指標としては長期金利から短期金利を引いた<長短金利スプレッド>が有用だが、これをみると、既にアメリカ経済の現況は景気後退の入り口にある。


Source: FRED, St. Louis Fed

最近、仮に昨年2021年末時点に立っていた時に、年明け後の8カ月をどのように予測していただろうかについて、予測計算をしてみた。

年明け後は波乱に満ちた展開になり、一気に景気後退色を強めてきたわけだが、それらはコロナ・パンデミック後の一次産品価格の急騰、ロシアによるウクライナ侵攻、予想を超えた労働市場の引き締まりなどの要因が重なったもので、確かにこれらは想定外の要因ではあった。

しかし・・・

日本国内の景気全体を観る指標としては、今は実質GDPより景気動向指数の方が有益である。そもそも実質GDPは推計方法上の理由から四半期系列が不自然な動きを示しがちで、そのため季節調整がうまくかからず、加えて低成長期のいま、四半期別の実質GDP前期比は生の値で0.3とか0.4パーセント、年率で1パーセントか2パーセント。要するにゼロ近辺の僅かな動きを続けているだけである。この程度の動きは統計の誤差の範囲であるとすら言えるようになっている。そう考えているので、最近はGDP速報を見ることはほとんどなくなったのだ、な。

その景気動向指数の中の先行系列を昨年末の時点からARIMAモデルで8か月間予測してみたのが下のグラフだ。


赤い線が1月から8月までの事後的な実績である。上の図を見ると、昨年末の時点で予想されていたラインを大きく下回っていることが一目で分かるが、それでも濃い青で示されている80パーセント予測区間の中には(辛うじて)収まっている。

この程度の下振れは考慮の中に入れておくべきだった

とも言える。その位、現実の変動は不規則で予測不能なファクターで動いている。過去の動きに学ぶ限りは慎重に将来予測をしておくべきだ、と。こんな結論になるか。

浮足立ってヒステリーになるのは、外国の目もあることだから、恥ずかしい。




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