2022年10月1日土曜日

メモ: 最近になって「核兵器使用」が懸念されている点について

「 ロシア=ウクライナ戦争」でプーチン政権が核兵器使用に踏み切るのではないかというので、結構、日本のメディアも懸念を煽り始めている。

ただ、この事柄は本ブログでも春先から書いている位だから、関係当局の中では「こうなれば、こうなる」という議論は当然ながらずっと前からやっているはずだ。

5月の最初にはこんな風に書いていた:

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本ブログで「核使用」をとりあげたのは3月10日だ。偶々だが、戦前期・日本であれば、この日は帝国陸軍がロシア陸軍を相手にして奉天会戦に勝利した故事を祝う陸軍記念日であった。そこでこんな風に書いている:

…核兵器を使うなら<戦時>に限定する方が自分の身のためではないかと思われる。

つまり

ウクライナとは<戦争>をしている

ロシアもそう認め、戦争を宣言する。ロシア国民にも告げるというステップが必要だと思うのだ、な。(常識的に、理屈としては)それが核使用の前提になるのではないだろうか。

この頃、ロシアはウクライナに対して「宣戦」をしていないにも拘わらず、核兵器使用がありうるとTVワイドショーで盛んに論じていたが、正直、「こりゃ余りに軽薄だネエ」と感じていたのを思い出す。

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先日、プ大統領が「部分動員開始」を表明した。それがどうも「部分動員」ではなく「実質総動員」ではないかとロシア国外では云々されたりしている。しかし「総動員」ではないと大統領が発言しているのだから、「総動員」ではないと解釈するのが理には適っている。

とすれば、どこか多分Youtubeで誰かがコメントしていたと記憶しているのだが、今回の動員は現地兵力の強化が目的で、戦争状態を宣言したという主旨ではない、そういう解釈になるのだろうと思われる。

ただ、ついこの夏の8月15日の投稿でも書いたが、

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ロシアは占領した東部と南部をロシア領土に編入し、同化政策を進め、更には国外に避難したウクライナ国民が一定の誓約をする場合にはロシア国籍を与えたうえで復帰を認めるという段階もそのうちにはやってくると想像している。

そうした上で、(一方的な)停戦宣言をした上で、

ロシア領土を攻撃する軍部隊に対しては侵略とみなして核による反撃もある。侵略を命令する中枢部への核攻撃も検討対象に含まれる。

そんな(一方的な)核使用宣言も大いにありうるように思う。

旧・西側諸国はどう対応するのだろう?

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案の定、いまそうなりつつあるわけだから、西側の対応は当然もう決まっているよネ、と考えておいてもいい。しかし、ロシアが「戦争状態」と認定してはいないにも関わらず、(戦術)核兵器を本当に使用した場合に、実際に西側は、というよりアメリカはというべきだが、どう対応するかというのは、まだ決定されてはいないのかもしれない。

ある地点に落とすのか、上空で使用して電磁パルスを発生させる手法をとるのか、その使用のあり方によって対処も違うのだろうと思われる。

実際、太平洋戦争末期に米軍が敵国・日本を降伏させるために2発の原爆を投下して以降、戦争において核兵器が使われた例はない。その当時、核保有国はアメリカだけであった。現在に至って、もし使われるとすれば、世界は国際戦略論において歴史的に新しいステージに入ることは確実だ。

ロジックとして断言できることは

決して使用しないのであれば、そもそも核兵器を保有するはずはない

つまり保有しているという事実は必要であれば使用するという可能性を含意する。だからこそ<脅威>なのである。ロジカルな命題としてこの点は誰もが認めるはずである。

つまり、もしロシアが本当に核兵器を使用するなら、核兵器が現実に兵器として使用されたという事実を戦訓として、新たに<核戦争時代>における新たな《フォーカル・ポイント》をどの線に、どのようにして見出し、関係国の利害を分配していくかという交渉理論上の問題を解くことが最重要になる。これはもう<プレ核戦争>の現時点から確定している予定経路だ。議論の筋道はこうなると考えているところだ。

ロシアによる「核兵器使用」が含意することは、4月の投稿にも書いたように

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プーチン大統領が示唆する「核兵器使用」に世界が不安を感じる理由と言うのは、シェリングも言及しているのであって、

技術の向上によって核兵器が多目的に使用される可能性が上昇しているが、このことは、核兵器を全く使用しないという特殊な限定性を除いては、核兵器の使用の限定をわかりやすく定義しようとすることをより困難にしている。

つまり、いったん核兵器を使用した後は、核兵器使用を分かりやすく限定するための境界線が見出しがたく、暗黙の交渉ができず、そのため戦争がエスカレートして、無際限に核戦争が拡大していってしまうのではないか。つまり

ある特定の制限を設けた核兵器の限定的使用を他の使用から「自然に」区別することは不可能に見える。

こういうロジックがあるからだ。つまり、この場合、もはや交渉解を見つけることができず、状況は発散するのではないか、と。これが現時点の懸念の核心だろう。

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核兵器が使用されうるという軍事的可能性を前提するときの《交渉の目安》、《譲歩の目安》をどこに線引きするかという合理的議論が今はない。正にこの点に不安の根源があるということだ。

誰が状況をマネージするのか、しうるのか。この問題に解がないようにみえる。小粒な政治家と失敗した政治家しか世界には見当たらない。いまの不安の核心にはこの問題があると思っている。


いずれにしても、ロシアのプ大統領は、月並みに言えば

ルビコンを渡ってしまった。

ウ軍が侵入して、ロ軍が後退すれば「ロシア領土」が侵略されたという判断を自らに強制する立場に身を置いた。

これをゲーム論では《コミットメント》と言う。つまり「背水の陣」だ。

ここでウクライナが止まれば、この状態が停戦ラインになる。なおウ軍が進撃してロ軍が何もせず後退し続ければ、コミットメントは《空の脅し》であったことになる。そうなれば、東部4州は全てウ軍の手に落ちる可能性がある。しかし、(そもそもウクライナ領土ではあるが)親ロシア領域からロ軍が全て撃退されてしまう前に、どこかの段階でロシアは実際に核兵器を(どう使うかは色々な可能性があるが)使用するのではないかという可能性は確かにある。例え、「戦争」と認めてはいないにしても、「核実験」と称して、何かの行動を示す。それは十分ありうる、と ― 曖昧な「示威行動」は意図が伝わらず、相手の意思決定を左右するという効果が期待できないのみならず、逆に足元を見られてしまう負の可能性もあるので、ロシア側は行動プランを十分練りこむ必要があるが。

マア、ここから先は、政治家たる者、一流の軍略家にして歴史家、高尚な理想主義者にして老獪な政治屋、こんな矛盾した面を併せもつ複雑な人物でなければロクなケリなどつけられないに違いない。いま、そんな人物、いるのかナア・・・




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