2022年11月1日火曜日

ホンノ一言: 主要国のビジネス心理と消費者心理について

 《国民心理》というのは、政治家やエコノミストにとっては切実だが、非常にとらえどころのないモノである。

メディア、例えば新聞報道やTVのワイドショーの話しぶりに国民心理は表れるものだと言う向きもあるが、だからと言って真面目に聞いていると、細かい話をしている割にはデータの裏付けもなく、的外れでバカバカしい説明があったりする。

この数日間めっきり目立つ「国民心理」に

とにかく物価を下げてほしい。インフレを何とかしてほしい。

というのがある。気持ちはとてもよく分かる。が、ここで

やっぱりデフレの方が価格が下がるからイイでしょう?

と聞くと、多分、

デフレだと賃金が上がりませんよね。それは困るって言ってるでしょ!

と、逆に叱られたりするンだろうなあ、と。そう思ったりするわけだ。

まったく理屈の通らない不満、というかフラストレーションを抱えているのが現状だと思う。一口にいえば

どうすればいいんダヨ。泣きたい毎日だよ。

と、ある意味、足元の国民心理を表現すると、こんなところではないだろうか。

しかし、経済の現実から言えば、二桁インフレ率が進行中のイギリスなどの方が、よほど厳しい生活を余儀なくされているし、今冬は何とか過ごせそうだが次の冬を予想すると、これまでの経済モデルが完全に破綻したドイツは文字通り<お先真っ暗>である。何しろBBCの報道にあるとおり

イギリスのエネルギー規制当局は26日、家庭の電気・ガス料金の上限について、80%の引き上げを発表した。国内の専門家や慈善団体は、人命が危険にさらされる恐れもあると警告している。

Source:  BBC、 2022年8月29日

これは8月末時点だが

  イギリスでも値上がりが続き、10月から電気・ガス料金が80%値上げされた。在住日本人女性は「すべての物が高騰したので節約のしようがない」と話す。1カ月の電気料金は192ポンド(3万1000円ほど)で、東電のモデル価格の3倍という。セントラルヒーティングを切り、家の中でコートを着て、1階にあった仕事場を日当たりのよい2階にうつした。

URL: https://www.j-cast.com/tv/2022/10/13447937.html?p=all

Source:  JCASTテレビウォッチ、 2022年10月13日11時54分

これは10月13日時点。 

ヨーロッパでは人命の危険すら云々されている経済危機が進行中なのである。それに比べると・・・という目線は絶対に必要な意識だと思う。

確かに円安で日本国丸ごとのバーゲンセール状態になっているのは苛立たしい。インフレの原因の一つでもある。円安を放置している日銀には怒りを感じるだろう。

とはいえ、国内の生産活動を拡大し、海外に安売りすれば利益は出る。日本人には馴染みの深い《輸出立国》である。競合品は入って来づらくなるので、安い輸入品による値下げ圧力は弱まる。長い目で見れば決して悪い話ではない

 ― マア、昭和の昔に逆戻りするようで「日本人のプライド」は傷つくだろうが、翻って考えると、いわゆる「経済大国日本」を造り上げたのは、終戦後に大学を卒業した「戦後第1世代」、今では80台後半から90代の年齢層に差し掛かっている人たちで、彼らこそ真の意味での「経済戦士」、「往年の勇者」、「敬うべき老兵たち」なのである。

その後に続いた世代は、(小生も含めて)何の発展も成し遂げられなかった「不肖の世代」である。結局、今になってみると「外国の後追い」から脱することが出来ず、かつ革新を起せず、新しいモノを産み出せず、(要するに)遅れてしまった。いま、世界第一の公的債務を積み上げ、ロクな政治をしていないにも関わらず、日本に余裕が残っているのは昔のツワモノ達が形成した莫大な資産が残っているからだ。小生が属する世代は、親が建てた旧くて雨漏りがし始めた屋敷に住み、親が築いた会社で名ばかりの取締役をしながら、会社の将来には何の貢献もできないまま、それでも不平を呟きながら、苛々と毎日を過ごしている馬鹿な子供達のようなものである。だから、そもそもプライドなどは持てる資格がない、というのが小生の感覚である。

プライドを持てる根拠は実績のみ。先祖の実績ではない。自分自身の実績である。

これは時代を問わず、国を問わず、当てはまる鉄則ではないだろうか。

OECDはBusiness Confidence Index(BCI:日本語でいえば「企業マインド指数」に語感が近いだろうか)とConsumer Confidence Index(CCI≒消費者マインド指数)を毎月公表している。

そこで主要国の最近の両者の動きをみると、BCIの方は



このように特にイギリスの急激な悪化が目立っている。が、全体として観ると、主要国のビジネス心理は概ねシンクロしながら変化してきていることが分かる。レベル差をみた場合、日本企業よりは苦難に陥っているドイツ企業のほうが寧ろ高めに出ている点は大いに疑問なのではあるが、これも日本企業の《慢性悲観症》の表れだと解釈すれば、情けないながらも『そうかもしれないネエ』ということかもしれない・・・。

上図は企業マインドである。下図は消費者マインドの動きだ。


これまた英国民の極端な悪化が目立っている ― マ、当たり前だと言える。足元の消費者心理は、極端に悪い英国民とその他の国民、という風に二極化しているのが現状だ。ただ、全体としてみると、マクロ経済の動きに従って主要国の間で概ねシンクロしながら変化している企業マインドに比較すると、消費者マインドの方は各国マチマチの変動パターンを示している。この事実は、国民心理なるものは客観的な経済指標に沿って変動しているというよりは、国ごとの国情や政治的安定性など数字以外の国ごとの違いが国民心理に強く影響している。そう考えることができそうだ。

面白いのは、日本の消費者マインドが足元で悪化しているのは各国と共通だが、悪化の度合いが小さくて済んでいる。もともと日本の消費者心理は外国に比べると「低調」だったのだが、更に大きく悪化しているわけではない。これは、今のところ「ウクライナ戦争」や「世界的インフレ」の影響から日本は相当程度免れて海外よりは平穏な毎日を送れているという事の表れだろう。テレビなどではイギリスが大変だと叫んでいるが、逆に日本社会の「相対的安定性」を確認して一先ず安心している、そんな国民像が浮かんでくる・・・。


それでも日本人はフラストレーションを抱えている(ように見える)。それはもう足元の経済動向を超える根底的な背景があるからだ。たとえば<日本病>でブログ内検索をかければ幾つもかかってくるように、日本の経済、社会が「日本病」に罹っているという意識も持たされず、率直にその事実を(日本語で)指摘してくれる経済専門家にも恵まれず、ただ何とか頑張ってほしいとのみ言われ続け、先行き望みがないという不安をのみ感じさせられている。こんな日本人の不幸はどこか前にもあったようで、デジャブ感を催させるものではないか。





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