アメリカの物価上昇が中々緩やかにならず、FRBの今後の金利引き上げ政策は困難な選択に直面していると、このところよく聞くようになった。
「困難な選択」というのは、もちろん、急速な金利引き上げは債券価格の暴落を招き、金融機関の経営を不安定にするからだ。そして、この問題は、近い将来、日本銀行や日本国内の銀行を脅かすかもしれず、日本のマスコミも視聴者を怖がらせる材料になると踏んでいるのだろう。
さすがに金融政策はワイドショーでは扱いかねるのか話題になる事も少ないが、夜のニュース番組では頻繁にとりあげられている。
そこで、よく聞くのは
アメリカの物価が中々下がりません……
という説明で、これを聞くたびに、
上がった物価は、いずれ下がるとでも思っているンですか?
と、発言の真意を確かめたくなるのだ。
上がった物価は、下がりませんヨ!下がればデフレじゃないですか。
スタジオの現場にいれば、こんな突っ込みを入れたくなるのは間違いない。
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アメリカのインフレが中々止まらないというとき、見ているデータは(月々の変動が激しい)食料、エネルギーを除く消費者物価指数の前年比上昇率(コア・インフレ率)であることが多い。食料、エネルギーに加えて家賃まで除いて見ることもある。
ただ、小生の習慣では
対前年比は高さをみる。動きを見たいなら直近の対前月比をみる。対前月比をみる時は、季節変動が混じるので、物価統計であっても季節調整済みを使う。
一貫してこうしてきた。
ところが、高さをみる時に参照する前年比上昇率がまだ6%程度の値を示しているのをみて、
物価が中々下がりません
と経済ニュースのアナウンサーは嘆いているのだ。
FRBが目指しているインフレ・ターゲットは2パーセントである。故に、政策目標を達成した後であっても、物価が(緩やかではあるが)上昇を続けるのは、小学生でも分かる理屈だろう。
つまり、FRBも急上昇した物価を下げるつもりはない。上がったまま。もっと上がってもよい。こう考えている。本当に、日本のマスメディアはこの点を分かっているのだろうかと思うことがある。
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それともう一つ。
FRBが目標とする年率2パーセントというインフレ率。足元の対前年比では判断できない理屈だ。足元でたとえ下がっていても、対前年でなお10%高ければ、前年比は10%と出る。前年比10%だからインフレを抑えるのが最優先だと考えて、既に下がり始めている物価をもっと下げれば、力でデフレに持っていく政策と変わるまい。これではまるで1990年代の日本政府と同じである。
だから、直近のインフレ動向を見るには、季節調整済みの前月比を見るのが理屈には適うのである。しかし、何故か実質GDPは前期比を見るが、物価は前年比をみて動向を判断している。実に、バランスせず、一貫していない。
よく使うコアインフレ率は、その元になる指数値がセントルイス連銀のFREDから採れないので、CPI総合で見よう。
まず前年比上昇率は下図のようになる。
インフレが中々おさまりません
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