子育て支援の必要性は国民の大半が認めているが、その一方で負担の増加は嫌だというのが日本社会の最大公約数というところだろう。
その場合、「負担」というのは何を指しているのかというのが主たるポイントになるが、この辺を掘り下げて議論するには状況がまだ熟していないようだ。
ただ、保険料でまかなうという方向には多方面から反対が出てきている。
つい先日には
民間有識者による令和国民会議(令和臨調、きょうのことば)は25日、社会保障制度改革に関する提言を発表した。持続可能な少子化対策の財源について税を軸に安定的に確保するよう求めた。世代間や所得差による負担の不公平感の是正を進め、医療体制を強化するよう提案した。産業構造や働き方が大きく変わるなかで、抜本的な改革を政府に迫った。
Source:日本経済新聞、4月26日
更にその前には
経団連の十倉雅和会長は日本経済新聞とのインタビューで、政府が進める少子化対策の財源について「消費税も当然議論の対象になってくる」と述べた。政府・与党では社会保険料の活用案が浮かぶが、十倉氏は「賃上げ分を全て社会保障に回されると賃上げの実感を得られない」と幅広い層に負担を求めるのが望ましいとの見解を示した。
Source:日本経済新聞、4月25日
加えて勤労者サイドを代表する連合も
政府が掲げる「異次元の少子化対策」の財源の一部を、社会保険料に上乗せして徴収する案を検討していることについて、労働組合の中央組織・連合の芳野友子会長は13日の定例会見で「徴収しやすいところから取るという方法はどうなのか」と異論を唱えた。芳野氏は少子化対策を議論する政府の「こども未来戦略会議」のメンバーの一人。
Source:朝日新聞、4月13日
という風に保険料引き上げで子育て支援をまかなう方法には否定的だ。
岸田首相は「増税はしない」と既に発言しているが、状況は《四面楚歌》である。
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政治の常識から考えると、野党は労働組合の反対する政策には反対するし、与党は財界が反対する政策を強行することはない。
要するに、子育て支援のコストを社会保険料でまかなう方向は最後には潰れると予想される。
残るのは、使途の再編(=やりくり)か、国債増発(=将来世代からの借金)、もしくは増税のみである。が、やりくりで出来るなら、トックの昔に問題は解決されている。将来世代を育てるためのカネを将来世代につけ回すなんて『親の資格がない』と普通の人は言うだろう。故に、解は増税しかない。賃金引上げの追い風にもなる ― 直接的には。この点は、経済界、労働界だけではなく、経済学界も見解は既にまとまっている状況だ。
言い換えると、政治家(=国会議員)のみが問題解決を遅らせているわけである。
とはいえ、単なる《消費税率引き上げ》に追い込まれてしまっては、2014年4月の引き上げ後に消費減退を招いたのと同じことを再現するだけだ。たださえエンゲル係数上昇にみるように足元の家計状況は危機的である。「政治」にならないことを政治家に要求しても分かったというはずがない。
その無理を覚悟してもなお踏み切ることが必要である、というこの一点が最後に残った政治的ステップだ。この辺については少し前に投稿した。さもなくば、コロナ感染拡大後の給付金で所得制限を付けるか付けないかで迷走した時と同じ、岸田首相の決断力不足が(またも)視える化されるというものだろう。
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