2023年6月25日日曜日

断想: 日本人の国防意識は昔と今とであまり変わらない?

これも話題になった記憶があるのだが 

もう二度と戦争はあってほしくないというのがわれわれすべての願いですが、もし仮にそういう事態になったら、あなたは進んでわが国のために戦いますか

という質問に対する回答を国際比較した記事がある。今は閲覧できるのだが、雑誌記事(?)なのでそのうち削除されるかもしれない。一部を抜粋して引用させて頂こう。

要点は次の図に尽きている。



本文の解説はこんな視点から述べられている。

「はい」の比率が日本の場合、13.2%と、世界79カ国中、最低である。「いいえ」の比率は48.6%と6位である(「いいえ」の1位はマカオの59.0%)。

とりようによっては、<非常に情けない結果>が示されているが、引用元の評者は

 日本の場合は、敗戦国だという事情に加えて、日本国憲法が他国の憲法にない戦争放棄条項を有しており、憲法に対する遵法精神の上からは、この問は答えにくい内容をもっているといえる。日本は、「はい」が一番少ないだけでなく、「わからない」が38.1%と世界で最も大きい値を示していることからもそれがうかがわれよう。

第2次世界大戦の敗戦国、および戦争放棄条項をもつ憲法を有する国ということから、こうした回答結果となっているのであって、日本の若者が軟弱になっているからといった素朴な見方はあてはまらないことが、こうした国際比較から分かる。日本だけの調査結果であったら、「はい」と答えた者の少なさの理由として、日教組の影響、若者の軟弱さ、愛国心の欠如などが挙げられた場合、そうかもしれないと誰もが思ったであろう。

こうも記しており、良い点を突いていると思う。

これを見て思い出したのは、明治以前の武家社会・日本における武士人口の割合である。非常に便利なデータサイト『社会実情データ図録』には明治初年に士族他が占めていた人口割合が紹介されていて、それによると士族が3.64%、卒族2.76%となっている。合計では6.4%である。「卒族」とは士分格から外れる軽輩武士のことでいわゆる「足軽」、「同心」が含まれる。当時の日本には徳川幕府成立を機に武士身分から外れた郷士、農民も多くいたことを考慮すれば、全人口の1割程度が広義の武士、即ち「戦闘員集団」であったと記憶してきた。

明治維新に至るまでに日本全土で燃え盛ったのは尊皇攘夷であったが、「攘夷」というのは武力による外国人排除である。多分、1割程度の日本人は過激尊攘派として、武闘派活動に参加する意志を持っていたという粗々の憶測が成り立つかもしれず、この数値は現時点で「国が危機に陥れば戦う」という明確な意思を示している日本人の割合に近いものがある。この二つの割合が近いのは、偶然ではないかもしれず、日本が歴史的に継承してきた社会がそうなっているのだと受け取ったほうが良いような気もするのだ、な。

現時点で「分からない」と回答する日本人は海外と比較して多いが、言い換えると「その時にならないと分からない」という意味だろう。

極めて大雑把にまとめてしまうと、大体3分の1程度の日本人は、国が危機に陥れば戦うという意志を曲がりなりにも持っている、そう思ってよいのではないだろうか?そして、それで十分な割合ではないかと思う。

現代の戦争技術を考えると、「徴兵」が再開されるなどは極めて可能性が低いと思っているが、万が一再開されるにしても動員率はせいぜいが数パーセント程度で、10%に達する事態は考えられない ― 実際、日清戦争の動員率は6%で、日中戦争が始まる前の1935年まで2割を超えることはなかった。総力戦を展開した第一次大戦時のドイツ、フランスでさえ動員率は6割程度で、世間はこれを「根こそぎ動員」と呼んでいた。

2018年時点の日本には20代から30代の成人男性が概ね1300万人程度いる。1300万人程度を動員対象として動員率を5%とすれば陸海空併せて大体65万人の兵力になる。大陸を侵略できる兵数ではないが、島国日本を守るなら十分な規模ではないだろうか?<動員率5%>であれば、危機が到来した時にも志願制で対応可能であることを上のデータは示している。ちなみに現在の自衛隊の兵数は定員ベースで24.5万人位だが欠員が1割程度だからこの9掛けという規模だ。

つまり、平和時の現在時点において、既に戦う意志を示している階層が10%もあるなら十分ではないか、と。小生にはそう感じられるのだ、な。そして、自らの意志で戦う人間集団が全日本人の1割程度存在するという情況は、「武士の時代」が終わった頃と現代とで、実はあまり変わっていない……そんな気にもなってしまうのだ、な。

日本はもはや武士の国ではない。武断主義を採っているわけでもなく、憲法では戦争を放棄している。しかし、数字を見る限りは<平和ボケ>しているとは思えない数字である、と。安心方々、そう思いますがネエ……

あとは、「いざ」という緊急時において積極的に行動しようとする意志をもつ人々に対して、平常時にどの程度のトレーニング機会を提供するか?この一点だと思われる。それから、「戦う」として戦うカネがあるのか?増税ですか?またまた国債増発ですか?日露戦争のときのように外国からカネを借りて戦うと後が大変ですゼ。結局、戦うために必要な資源は、現代日本においても、ヒトよりはカネである。そう思われてなりませぬ。


逆に、日本で「戦う意志はない」と回答しているのは49%と概ね半数である。これは多すぎるのだろうか?半分程度は「戦いたくない」と応える雰囲気、これは小生が職場や友人たちと過ごしてきた現代日本の世相と大体一致している感じがするのだが、思い返すに決して軽佻浮薄で軟弱な人たちではなかった。ドイツでは「戦わない」と回答したのが41%と日本よりは少ないが、案外多いナアと感じる人もいるだろう。アメリカでも39%の人が「戦わない」と回答しているが、予想よりは多いと感じる人もいるかもしれない。

【加筆】2023-06-25


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