2023年8月5日土曜日

ホンノ一言: マイナ保険証紐づけによる混乱は「乗り越えるべき壁」。ガラパゴス化の彼方には貧困化があるだけ。

 表題の件に関して岸田首相が

マイナ保険証への統合による保険証廃止を延期するかどうかの最終決定は延期することにした。

実質的にはこんな意思決定を当面はしたということだ。

何だかどこかのCMと同じだ。

止めるのを止めるってことは止めたわ……

どっちなんだよ!?

まさか、このコマーシャルに習って、「延期するかどうかは延期したワ」ではなかったと思うが、そう信じたいものだ。

小生は、何事も《進歩による利益》は日本人なら誰もが享受する権利をもつべきだと考える立場にいるので、マイナ保険証への一本化には賛成だ。

これは「幸福追求の権利」に直結する話で、誰かがそれは嫌だと言って守旧的な行動をするのを許すとしても、利益へのアクセスは国として提供するべきだという意味である。マア、明治初めの文明開化のご時世にあっても旧幕以来のちょん髷をしている御仁はいたし、それは犯罪ではなかったのと同じ道理である。

ただ、訳が分からないのだが、数日前にも

どうしても医者に知られたくはない病歴だってあるわけですよね。マイナ保険証だと、医師がこれまでの保険診療歴をすべて閲覧できてしまうので、それは嫌だと。そんな人もいると思うんです。ですから拒否する権利も認めるべきではないでしょうか?

こんな風に語るコメンテーターが某ワイドショーに出演していた。どんな病歴なら知られたくないと感じるのか、マア、察しはつくが、こんな言い分を認めるなら、そもそも社会主義的な「公的年金」、「公的医療保険」も加入を義務化するべきではないだろう。拒否する権利を認めるべきだ。自動車保険も自賠責などは廃止して全て個人の選択に任せるべきだろう。選択の自由を与えるべきだ。そんな理屈になる。かなり以前にも投稿したように、小生は利回りの低い公的年金制度に加入するのは、もともと嫌であった。年金保険料などは支払わず、全て自分で資産運用したかったのだ。もしそれが可能であったなら、いま現在の経済状況は一層良いモノであったと確信している。

「国民皆年金」、「国民皆保険」は、一種の《社会契約》で、自分には選択の自由があるという次元を超えているのではないだろうか?マ、諦めの境地にも近いのだが……

よって、多数の日本人にとって利便性があり、国際的にも利便性の向上が確認されていることなら、国ごとの手法の違いはあるにせよ《行政のデジタル化》を鋭意進め、プラス効果がマイナスの副作用を上回るよう制度を進化させるべきだと。そんな立場にいる。

効率化の遅れは、生産力の停滞、日本経済の衰退と同じ意味であるので、海外の富裕化、日本社会の貧困化を招くだけである ― もちろん不平等化の高まりにも注意して顕在化した問題には対処しなければならない。

行政とは関係ないことだが、日本のデジタル化の遅れを感じることがあった。実は、カミさんは小生名義の楽天カードの家族カードを持っていたのだが、先日、カミさん名義の口座を決済口座とする本カードを申請したのである。

楽天e-Naviは家族カードに登録しているIDとパスワードでログインしていた。本カードが到着後、色々な設定をしようと楽天e-Naviに入っても、新たに届いた本カードが表示されないことに気がついた。新規カードを追加する機能もあるのだが、本カードが認識されないのである。

これには困惑して、結局、楽天カードに電話した。先ずは家族カードを持っていた女性と新たに本カードを申請した女性とが、同一同名の別人物ではないことを証明する作業からスタートしたのだが、まあ、これは会社と本人が直接1対1で電話で話しているので、幾つかの確認事項を確認すればクリアされる。

その後、先方でなぜ本カードが認識されないか、データ内容を精査してくれた。すると何事にも原因はあるものだ。どうやら小生名義の楽天カードで登録している<小生の住所表記>と、カミさんが本カードを申請する時に入力した<カミさんの住所表記>が違うので、既存のアカウントから新規到着した本カードが見えないのだ、と。小生の住所「**丁目**番**号」とカミさんの住所「**の**の**」では異なった住所、異なった人物と認識するわけだ。

要するに、実質的には同じ住所なのだが、機械の上では異なる住所だと認識されてしまうため、同一人物が持つ家族カードと本カードを紐づけできないのだというのだ。

そしてもう一点。もともと使っていた家族カード側では登録電話番号が「いえ電」であるが、カミさんの本カードではカミさんの携帯電話番号になっていた。これも二人の女性が別人物であると推測する根拠になると言われた。

正にいまマイナンバーカードと保険証との紐づけ作業が泥沼化している原因と同じ状況が楽天カード紐づけにもあったわけである。

原因が分かったので、楽天カード本社の担当者が、カミさん本人の直接了解をとったうえで、本カードの住所を小生保有の登録住所にそろえる、家族カードの電話番号をカミさんの携帯番号に上書き修正することで、問題は解決された ― 家族カードは小生の本カードに付属している情報であるので、家族カードの登録電話番号を修正するには小生の承諾が要るはずだがそこは割愛する。いずれにしても小生も傍らにいたので承諾は当然のことでもあった。

こうして本カードがe-Naviからも認識され無事にカードを追加できた。


今回のトラブルでは、楽天カード本社が関係するデータを一元管理できているので、紐づけ不良の原因となっている個所を特定の上、楽天カード本社の権限でデータ修正ができたわけだ。しかるに、これと同じ対応は、デジタル庁も、総務省も、厚生労働省も、どこの都道府県、市町村も可能ではない。データ書き換えの調整権限がないのだ。現場のITエンジニアなら『〇〇さえ可能なら問題は短期間に解決できる」』という突破口が分かっているはずだ。しかるに、発注元の政治家と役人(それと国民も?)が「それは出来ない。それ以外の方法でやってくれ」と。まあ、状況はこんな所だと憶測している。

他にも、漢字氏名の読み方が分からない下でカタカナ氏名とのマッチングをどう行えばよいかという悪名高い難問などなど、作業を困難にしている原因は複数ある。そして、困難を解決するために必要な調整権限を与えられている機関はない。

転居だって頻繁にあるし、転職して加入する保険組合が変わることもある。マイナンバーをキーにしてマージで紐づけすれば人手などかけず一発でしょうに…

と小生などはこう思うが、一方のデータにマイナンバーが含まれていなければマッチングは出来ないし、原理的に出来るとしてもマイナンバー使用が紐づけ作業では容認されていないのかもしれない ― 小生の不勉強もあって現場をとりまく作業環境はよく知らない。


予想だが、来秋までの1年どころか、このままでは3年経っても、いや5年経っても10年経っても、マイナンバーとの紐づけ作業には不具合が発生し続けるだろう ― 不具合率は例えば入試センター試験のリスニングに用いるICプレーヤーの不具合率と同水準程度には収束していくかもしれないが、いずれにしても非効率なIT作業を延々と続けるという情況に変わりはない。

そして日本国と日本社会は、意図せずして「ガラパゴス化」し、効率の悪い貧困国への道を歩む……、民主主義と個人情報は守り抜きましたと、善意でやったことですと、その時の高齢者世代は現役世代に語るのだろうが、感謝されるかどうかは定かではない。おそらく、未来は未来で「失われた30年」と言ったりするのであろう……

大体、たった一つか、二つ位の価値を大事に守っていけば、後はどうでもよいことにならないのは、猿でも分かる道理だ。学者はともかく、社会を相手に長く評価される結果を残した人は、多くの複雑な目的を同時に追求して、その不透明さが嫌がられるようなタイプの人物だ。要するに、小人物は浅く器の小さい意見しか出せない。ところが理念が純粋な人は意見までも善いとされるところが日本社会にはある。危なっかしい。この点で、日本社会の傾向は、非・功利主義というより、「反・功利主義社会」ではないかと思うことがある。

それはさておき、まとめはこうなるか。

実施体制が出来ていない。デジタル化はおろか、第一歩のマイナンバーカードと保険証データとの紐づけさえも苦労するのは、問題の概観と作業課題の整理、課題解決を行う組織戦略が確立されていないが故である。

要するに、準備不足。 

この一言ではないかと観ている ― 「戦争」などという国家プロジェクトに取り組める国ではないという事実が明らかでありんす、な。と同時に、

日本人には行政効率化への理解と覚悟がまだできていない。

そもそも理解などは期待しても難しいのである。だから、せめて覚悟が出来ていれば十分なのだが、信頼性に欠ける政府が進める新規政策に(突然?)<覚悟>を求められても、怪しすぎてとても覚悟など出来ない、というのが現状かもしれない。


幕末の時代、坂本龍馬は「日本を今一度せんたくいたし申候」と言ったそうだが、洗濯されるなど迷惑千万。そう感じる日本人が多数派を占めているなら、実行は無理である。幕末にそれが可能であったのは、少数の過激・討幕派が錦の御旗を手に入れたからであって、民主主義の勝利ではない。

とはいえ、現状をもって戦後日本の民主主義の失敗と言えるのかどうか、中々、難しい問題だと思う。そもそも「戦後日本」と一口に言っても、「昭和の民主主義」と「平成・令和の民主主義」は似て非なるものでござんすヨ。

【加筆】2023-08-06、08-07



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