2023年8月8日火曜日

一言メモ: 景気は濃い霧に包まれていたが、晴れつつある、ということなのか?

 昨年春以降、アメリカ・FRBは、それまでの見守り姿勢をかなぐり捨てたように「攻撃的金利引き上げ」を繰り返し、強引にインフレを抑え込む姿勢を堅持してきた。

ところが、ここに来てインフレは明らかに落ち着きの気配。労働市場も、失業率がそれほど上がらない一方で、雇用者数増加はペースが鈍化するなど、懸念された景気後退も避けられそうだ、と。

そんな楽観論がにわかに浮上して、「それ見ろ、見事にやり遂げたじゃないか!」といった風の高揚感が何となく伝わって来ているようで……と思ったら、米国債の格付けが(突然?)引き下げられ、今度は長期金利の先高観が出てきた。民主党好みの財政拡大路線は変わらず、エコノミストなら「この一連の出来事は、典型的なクラウディングアウトの症状です」と語るところのはずだ……、が、バイデン財政政策を正面から批判する専門家がほとんどいないのは(なんと言うべきか)実に不可思議なことである ― ニューヨーク・タイムズが基本的にバイデノミクス賛同の立場にいるのは予想できることだが。

こんな風に「インフレ抑制、うまくやったネ」という見方をよくみるが、他方、景気見通しはやっぱり心配だ、と。そんな見方も増えてきた。

米国で企業倒産が増えている。2023年1〜7月の倒産件数は402件となり、前年同期の2倍になった。過去10年で最多の水準で推移する。7日には、物流分野の有力企業イエロー・コーポレーションの経営破綻が明らかになった。インフレをうけた需要減と金利高による借り入れ負担の増大が、業績が低迷する企業に追い打ちをかける事例が目立つ。

これは本日の日本経済新聞だ。

URL:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2203W0S3A720C2000000/

 …PMIは購買担当者景気指数のことで、企業の購買担当者に新規受注や生産、雇用の状況などを聞き取り、景況感を指数化した景気指標。製造業と非製造業に分けて発表される。特に製造業PMIは鉱工業生産や雇用統計などと比べて、景気動向の変化をいち早く示す指標として市場関係者から注目される。

…PMIは50を上回ると好況、下回ると不況とされる。国・地域別の指標に加え、主要国をまとめたグローバルの指標もある。米国や世界景気を左右する中国などの注目度が高い。S&Pグローバルが算出した7月のグローバル製造業PMIは48.7と、11カ月連続で50を下回った。50割れの期間は、2008年のリーマン・ショック直後の景気後退期に次ぐ長さだ。

これも本日の日経朝刊。

URL:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73434060X00C23A8EA2000/

決して景気の現状は楽観できない。

ただ、OCEDから米、英、仏、独をとって景気先行指数を確かめると、下図のようになる。


Source: https://shigeru-nishiyama.shinyapps.io/get_draw_oecd_lei/

先行指数だから景気の実態に対して先行性がある。半年かもう少し長い期間のリードタイムをみておくとよい。ということは、景気後退が心配されていたのは、今よりは少し以前のことであって、その心配が企業倒産増加や経営者マインドの悪化にいま現れている。こういう見方も可能だ。とすれば、先行指数はいま景気後退懸念が弱まりつつあることの根拠として使える。

日本の景気動向指数もほぼ同じ形をしている。
 

Source: https://shigeru-nishiyama.shinyapps.io/getdrawci/

先行指数が低下していたのは、(やはり)少し以前のことであり、ごく足元では底打ち気味である。今後半年間ないし1年程度の景気にそれほどの不安はないということだ。


足元の景気の実態は確かに弱いものがある。何となくネガティブにもなる。PMIもリーマン危機以来の長きにわたって50を下回っているという。

とはいえ、元の記事をみると、50を下回っていると言っても、ごく僅か下回っているに過ぎない。

濃い霧で何も見えなかったが次第に晴れてきた。が、薄い霧の向こうに何があるかまだシカと見えない。そんな心理に似ているのか?


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