2023年8月20日日曜日

一言メモ: 金利先高観と中国リスク。景気リスクというより当事者リスクと言えるようで。

先月のFOMC議事録が公開されたところ、インフレ警戒、金利追加引き上げ論が相変わらず根強いことが分かって、金利先高観がまた再びアメリカ国内で高まって来たようだ。

NHKではこう伝えている:

FRBは先月、金融政策を決める会合を開き、0.25%の利上げを決定しました。

6月の会合では利上げを見送りましたが、再開に踏み切り、政策金利は2001年以来、およそ22年ぶりの高い水準となりました。

16日に公表された会合の議事録によりますと、インフレはFRBの目標を依然として大きく上回り、労働市場も堅調な状況が続いていることから、大半の参加者がインフレの上昇リスクが大きいとして、追加の金融引き締めが必要になる可能性があるという見方を示していたことが明らかになりました。

また、FRBのスタッフは、銀行の破綻が相次いだことし3月以降も個人消費などのデータが予想を上回っており、「もはや景気後退を予測していない」と報告していました。

アメリカではインフレが落ち着く傾向が続く一方、堅調な経済指標が相次いで発表されていて、今回の議事録からは、会合の参加者がインフレが再び加速するリスクを警戒していることがうかがえます。

Date: 2023年8月17日 9時25分

URL:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230817/k10014165031000.html

一方で景気後退リスクはずいぶん以前から指摘されており、ニューヨーク連銀によれば今年6月時点で

今後1年以内に景気後退が起きる確率は71パーセントである

Source:Wall Street Journal、2023 年 6 月 9 日 07:12 JST

Author:Justin Lahart

URL:https://jp.wsj.com/articles/is-this-recession-in-the-room-with-us-now-2548206

長短金利スプレッドがマイナスになっている状態から算出された確率だが、かなりの景気後退リスクがあるという評価が報道されていた。

この報道から1カ月しか経っていない時点で、

FRBのスタッフは、銀行の破綻が相次いだことし3月以降も個人消費などのデータが予想を上回っており、「もはや景気後退を予測していない」と報告していました。

というのは文字通り『これいかに?』という感想だ。

データを見ながら真面目に審議しているの? 

最新データが入るたびに姿勢がブレてませんか?

当局の揺れる判断に思わず不安になってくる人もいるかもしれない。 

上のWSJ記事も結論としては

何だかよく分からん

というものだ。分からないから不安になるのだ。分からなくさせているのは、FRB当局ではないかという印象を小生はもっている。

不安要素は、金融当局であるFRBの分析能力、当事者能力(?)もそうだが、ここにきて中国リスクが世界を騒がせている。

バイデン大統領が中国経済を「時限爆弾」と表現するなど、ロシア=ウクライナ戦争の戦況がいまひとつピリッとしないのに苛立って、中国に目を向けさせる「目くらまし戦術」か。そんな推測もしたりしているのであるが

48兆円の負債を抱えた「恒大集団」がアメリカで破綻申請をした

こんな風に、中国の「不動産バブル崩壊」が満ち潮のようにメディアを賑わせている。

これでは不安も高まりましょう……。

金利先高感と中国不安が高まれば、当然、ニューヨーク市場の株価も下落へと向かわざるを得ない。東京市場もニューヨークの後を追う。

何だかハッキリしない。故に、「ハッキリしない」ことによる経済不安が高まっている。

極めて拙劣な経済運営だと思う。

それはともかく……

中でも感心したのは、次のグラフだ。



Source:econbrowser、August 11, 2023

Author:Menzie Chinn

URL:https://econbrowser.com/archives/2023/08/uncertainty-in-china

本文には

If you were wondering why FDI inflows had sharply decreased, why consumers were wary of spending, part of the reason might be elevated economic and economic policy uncertainty.

こんな見解が述べられているが、最近見た中では中国経済を概観するのに、最も的をついているデータだと思った。

不確実性の高まりは、その地域、その分野における資本コストを高め、投資対象からは外れるというのがロジックだ。中国経済は、これまで個人消費ではなく、企業投資が成長をけん引してきた。その投資需要を阻害するファクターが働いている。これでは安定成長できるはずがない。

以前にも投稿したが、近年の中国は"China's Self-Disbranding Policy"を展開してきた(かのように見える)。それにはそれなりの言い分、理屈、ロジックが中国政府にはあるのだろうとは考えられるが、やはり自滅しつつあるのが今の状況かもしれない。

とはいうものの、「不確実」であるのは、アメリカもヨーロッパもご同様であると小生はみる。そして日本だって、韓国だって、今後将来どうするのかについては極めて不確実な国である ― 日本は変化を求める外圧に対して「何もしないかもしれない」というリスクがあるという意味になるが。


0 件のコメント: