自民党の女性議員たちが(男性議員も多数参加同伴していたようだが)フランスに「研修旅行」に行き、集合写真ばかりではなく、まるで遊んでいるようなノリで撮影した写真をSNSにアップしたという不行跡(?)が世間を騒がせている。
一部には「こんな些細な事でクレームをつけるのは嫉妬だ」と指摘するお方もいるかと思えば、リーダー格(?)の松川議員が「党費と各議員の自腹で渡航しているので公費による渡航ではない」と語ったのに対して、2チャンネルの創業者は「自民党には政党交付金として、税金が159億円投入されています。旅費が党費で支払われてる時点で自腹ではありません。フランス研修が自腹というのは明確にデマです」と反撃したよし。
まあ、ちょっとした騒動になっているわけだ。
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最近は《うらやまけしからん》という形容詞もある位だから、堀江氏のように贅沢な研修旅行を楽しんだ国会議員エリートが世間の凡百の大衆から妬みをかっているのだ、と。そう言われればそんな気もするが、しかし「普通に暮らしている人が研修旅行を楽しんだ(?)女性議員達にそれほど嫉妬しているかナア?」と、そんな疑問も感じる。
むしろ、問題の女性議員達がアップした写真に反映されている感性が、まあ「可愛い」とも言えるのだが、何だか所作動作とも非常に幼稚で、まるで大学のゼミ旅行ではないか。そんな感じに近いのではないか?嫉妬ではなく、国会議員達が余りに幼稚で、幼く、失望に値するような行動履歴を目にして、何だか自分の子供がテストで落第点をもらって帰った時にも似たような、「情けなさ」の余り、力も抜けるような落胆を覚えた。こう表現するほうが正確ではないのか。そう感じた次第。
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それより2ちゃんねる創業者の「ひろゆき」氏だが、言っている意見はちょっとおかしい。
例えば警察官は税金から給与をもらっている。その警察官家族が子供の夏休みに家族で旅行に出かけるとする。
公務員の給与は税金そのものだ。家族で旅行を楽しむとしても自腹で旅行に行ったというのはデマである。
こう言ってよいのか?同じ理屈ではないか?
警察官のお父さんは「今回の旅行は私の自腹です」と言うはずだが、この言い分は間違いなのか?
「税金が入っている以上、自腹ではないですね」という御仁は、かなり飛んでいる人で、真面目に話をきくのはバカバカしい。それどころか、何だか納税者の優越的地位の濫用にならないかと心配だ。相手を従属的地位に抑え込もうという意図が透けて見えて下品である。分厚い財布をとりだしながら『兄さんがいま使うたその金ナア、そもそも誰のカネやった思うとるネン?尊いカネなんやデエ』と強面でどやすような御仁は紛れもなく下品と思いませんか?なので、これは多勢の納税者集団による個々の公費利用者に対する数を頼んだパワハラではないかとすら感じる。
警察官(とは限らず公務員ならそうなるが)の家族旅行は、税金が入っている以上、自腹で払うプライベート旅行ではない、と。それほど言うなら、更にロジカルに考えて、家族旅行中に事故にあった場合も「公私の公」、つまり業務災害と認識するべきではないか?
公務員たるもの税で生計を立てている以上、行住坐臥、公のために尽くしているのである、いや尽くすべきなのだ、と。こうなる筋道ではないか?
まるで江戸・旧幕時代のサムライである。
別に松川議員の肩を持つわけではないが、松川議員が言いたかった主旨を小生なりに推測してみよう。
そもそも旅行目的は私費が入る「私用」であった。「公用」ではない。公用で出張するのに私費で一部を負担するはずがない ― パスポートが緑や茶の「公用旅券」ではなく、赤か紺の「一般旅券」であったかまでは分からないが。政党交付金の財源はなるほど「税」である。それは政党が果たす公共的役割を日本社会が認識しているから制度化されているのである。自民党だけが政党交付金を受け取っているのではない。一方、私たち(=議員団)が受け取ったカネは「政党交付金」ではない。自民党の「党費」から支給された。色々な産業補助金を受け取る民間企業は利益がその分だけ増える。補助金には税が入っている。それが企業利益になっている。政党交付金は政党活動への補助金なのである。自民党は自民党のために使う。自民党の党費から旅費を補助される以上、自民党という一つの政党の利益になるように活動するのは自民党議員としては当たり前である。誰と会い、どのような活動をするかも裁量に任されている。公のための旅行ではないのです。そんな行為を反自民党の立場にいる国民は歓迎しない可能性は大いにある。こういう理屈になるのではないですかネエ…
例えば、税金が投入されている科研費から半額を補助されながらフランスで開催される国際学会に出席する大学教授がいるとする。確かに財源は「税金」である。しかしこの大学教授は「税金」を受領したとは思わないだろう。そもそも税金を受け取る権限があるのは国税庁だ。一人の大学教授に国民の税金を受け取る権限があるはずがない。受け取るカネは文科省 ― 日本学術振興会が実施組織だが ― から支給される「科学研究費補助金」と認識しているはずだ。財源が税金であることは意識する義務はないし、意識せよというのであれば、上の警察官の家族旅行を云々する愚か者と同じレベルになる。学会に出席すれば、懇親会にも出席するし、ダンスもする。最終日には親睦のための旅行には参加するし、「お近づきの印」に何枚も写真をとり、SNSにアップする位の事は多くの人がするだろう。
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はしゃぐ様子に幼稚さを感じガッカリしたものの、大した問題ではないと思いますがネエ。誰かが仕組んだ言いがかりじゃないの?……こんなまとめになるのではないか。
(注)「公費」という場合、「私たちの税金です」という言い方は、近年の日本では間違いで、「税金も少なからず入っている」と言うべきだが、細かい点なので省略する。以前にも同じような話題で投稿したことがある。
【加筆 2023/08/03】
件の「研修旅行」に松川議員は娘を連れて行き現地の日本大使館職員が娘の世話をしたとの報道があるようだ。旅行が公私の私と言いたいなら、これはアウトだ。が、同議員は外務省OGであるので大使館に友人がいたのかもしれず、娘の世話は友情によるものであったかもしれず、友人が週末にお嬢さんに「パリ案内」をするというなら特に問題ではないと思う。とはいえ、尾を引く状況になってきたようで。何ごとも「油断」、「鈍感」というのは失敗のもと。怖い、怖い。世間の口が怖いというのは「源氏物語」の昔から同じである。「研修旅行」などは自民党の政党活動なのだから、政敵も見ているオープンなSNSには投稿せず、FBには多数設けられているクローズドなグループ内に限った内輪のやりとりにすれば良かったのだ。
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