2023年11月19日日曜日

ホンノ一言: 7~9月期の実質GDP前期比をどう見る?

 2,3日前に7~9月期の実質GDP前期比がマイナスになったというので、年初以来の回復基調が終わったとか、一時的な落ち込みであるとか、(例によって)色々な人が色々なことを言っている。要するに、専門家も一致した見通しは持ち合わせていないということで、この点だけは日本もアメリカも事情は同じである。

実際、日経に掲載されていた図をみると


Source:日本経済新聞
Date:2023年11月15日 
URL:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA140PT0U3A111C2000000/



マイナス2.1パーセントいう成長率は「年率」であるから、この3か月間の増減率のまま1年が経過すると年間成長率は▲2.1%に達するという意味である。

それにしても、この図はあまり良い作図ではない。開始時点において成長率年率が20%を超えているのは、コロナ禍期の大幅落ち込みの直後の反動である。その前の期とならせば、概ねゼロ近辺の成長率趨勢を続けている、というのが実質GDP前期比の姿だ。


このグラフから景気循環の見通しに役立つ情報を取り出すのは、よほどの経済専門家にとっても至難の業だろう。

ということは、今回の実質GDP前期比についてマクロ的観点から解説を加えている多くのエコノミストは他の情報と総合させて語っているわけである。その「参照している他の情報」を全面的に明らかにしないのは、個々のエコノミストの「商売上の秘密」というものだと思われ、この辺の行動パターンは以前の「官庁エコノミスト」のほうが良心的であったような印象をもっている。

予想するに、口には出さないが、内閣府の景気動向指数はフォローしているに違いないのである。最近、エコノミストによる経済解説の場でこの経済データが言及されることがほとんどなくなっているのは、不思議に感じられる程で、多分、数多の民間エコノミストは「早わかりアンチョコ指標」を見ているような印象を持たれるのが嫌なのかナア、と邪推しているところだ。



URL:https://shigeru-nishiyama.shinyapps.io/getdrawci/

上の図は景気動向指数の先行指数と一致指数を描いている。直近月は9月である。

すぐ分かるように、先行指数は2022年初から急低下したが最近になって下げ止まっている。一方、生産・販売の現状を示す一致指数は7~9月期にかけてなお上昇トレンドを続けている(ように見える)。

もちろん景気動向指数の算定の基礎になる統計データは全て季調済である。7~9月期にかけて一致指数がなお上昇トレンドを保っているという点が実質GDPと違っているが、前にも書いたように、小生は実質GDPの季調済前期比は動きがおかしいと(以前から)感じている。「7~9月期のマイナス成長」は眉唾とまでは言わないが、数字のマジックではないかと受け止めている。

とはいうものの、楽観するべきではない。1985年以降の40年弱にわたる景気変動を通して、先行指数が上昇基調から低下基調へとレジーム転換してから何か月かの遅れの後、一致指数は必ず低下に転じていることを図は示している ― そのラグ月数は景気循環サイクルごとにマチマチではあるが。

なので、先行指数が低下してきた以上、いずれ日本経済は多少の景気後退に陥る可能性が高いと思っている。ただ、先行指数の低下に足止めがかかっていることから、景気後退に陥るとしても、その度合いは軽微である。そう予測しているところだ。


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