2023年11月3日金曜日

ホンノ一言: 「反ユダヤ思想」という力にも作用・反作用の関係が当てはまるのではないか

 「イスラエル=ハマス戦争」という呼称は、国家対国家の戦闘行為を指す「戦争」とは(どこかが)違っているようで、どこか違和感を感じるが、ともかく現実に戦争的現象、というか戦時特有の残虐行為が進められていることは確かだ。

「ハマス」は殺人者集団、というかテロリズムを信奉するガザ市内の政治結社である。その政治結社が自国民に対して大規模な武装攻撃をした。となると、イスラエル国内の「内乱」にも見えてしまうが、しかし、ガザ市はパレスチナ人が暮らす「自治区」だ。つまりはイ政府にとっては「外国」に近い存在だ。それでイ政府は今回の軍事行動を「戦争」であると宣言した。

しかし、戦争なら敵軍を支援する第三国があってもイスラエルの内政に干渉しているとは言えまい。中国も新疆ウイグル自治区を抱えているが、そこで「暴動」と「殺人」が発生すれば、中国軍はウズベク人を敵として戦争を宣言し、戦時にのみ許される行動がとれるのか?いや、いや、北京政府は『これは戦争ではない。中国の内政である』と主張するはずだ。マ、細かな理屈は専門外のことでよく分からない。

いずれにせよ、戦争には戦争目的がある。イスラエル政府の戦争目的とは何か?敵の降伏か?領土(=ガザ市?)の併合か?敵の軍事力の消滅か?イ政府の戦争目的がいま一つ明らかでない印象がある。究極的目的は「戦闘行為の終了」、つまり「平和」であるのに決まっているはずだが……


それはともかく、


この「戦争」が始まって以来、世界中で《反ユダヤ主義的事件》が激増しているそうだ。例えばWall Street Journalでも

 欧州連合(EU)の専門機関、欧州基本権機関(FRA)の2019年の報告書によると、欧州在住ユダヤ人の89%が、過去5年間に自国で反ユダヤの傾向が強まったと回答している。それが原因で欧州を離れることを考えているとの回答は40%近くに達した。

 ユダヤ系市民権団体の名誉毀損防止連盟(ADL)によると、米国でも反ユダヤ事件は徐々に増えている。2013年は751件だったが、2022年には3697件に達したという。

Source: Wall Street Journal

Date: 2023 年 11 月 3 日 06:03 JST

Author: Bojan Pancevski, Matthew Dalton, David Luhnow and Karolina Jeznach

URL:  https://jp.wsj.com/articles/wave-of-antisemitism-has-european-jews-wondering-if-they-will-ever-be-safe-fe5a4463


小生は歴史が専門でもないし、仮に歴史専攻であっても欧州の反ユダヤ思想を軽々に議論できないこと位は知っている。

ただ、どんな自然現象も社会現象も力学的解釈ができるものだし、社会現象については心理学的見方も可能だと思うことが多い。自然についても、社会についても、ある力が作用する時は、反作用という力を考えなければ均衡というノーマルな状態を考えることができない。

思うのだが、「反ユダヤ思想」という思想が社会的な力なり、エネルギーとして根強くあり続けたのであれば、「汎ユダヤ思想」という反対の思想も逆向きの力として存在し、欧州社会で作用してきたのではないか。

これは古典力学の単なる類推だが、反ユダヤ思想と汎ユダヤ思想は同じ社会的現実の表と裏の関係にある。そう思うのだが、違うのか?

少なくとも「反ユダヤ思想」という一方向の思想が、それのみで独立した思想として非常に永い期間に渡って継承され続けるという情況は、理解しづらい。理屈として奇妙ではないか。マア、『分かってないんだよネエ』と言われれば、それまでだが……


いい例えではないが、高気圧があるから低気圧もありうる。台風という低気圧があるから暴風雨が発生するのは事実だが、低気圧をなくしたいなら高気圧をなくさなければならない。低気圧と高気圧は、共に存在するか、両者ともに消えるかのどちらかである。一方だけが存在することはない。

両方とも消失させるには、相互混入と均質化のほかにとり得る道はない。


人間の言葉では「▲▲思想」とか「〇〇主義」とか色々な表現に分かれるが、実態として存在する「戦闘状態」という現実は一つであって、二つあるわけではない。なので、現実を説明する言葉は一つに収束するのが自然だ。それがそうならないのは、現実を超越した《独善》に当事者の精神が支配されているからだという理屈になり、その意味で関係者は《盲目》になっている。

18世紀の《啓蒙主義》は英語でいえば"enlightenment"で目を開くという意味だ。この思想が近代世界の発展をもたらしたのは明らかである。

あらゆる独断と独善を排するという姿勢を当事国以外の世界が保つことがいま最も重要なのだろう。

【加筆】2023-11-04

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