2024年7月8日月曜日

ホンノ一言: 都知事選に関して、「コンプライアンス」の善い意味と悪い意味

米紙・The New York Timesの報道が流石だと思ったのは次の記事。

結論部分を抜粋すると:

As the incumbent, Ms. Koike maintains a large advantage: No previous occupant of the office has lost an election. She has also benefited from a largely compliant news media. Though it has dug into rumors that she misrepresented her graduation from Cairo University, it has not investigated allegations that she has favored Mitsui Fudosan, the developer, in construction contracts.

One possible reason: Two of the country’s largest newspapers, the Yomiuri Shimbun and Asahi Shimbun, are investing in one of those building projects.

Source: NYT
Date: Published July 6, 2024, Updated July 7, 2024, 7:23 a.m. ET
URL: https://www.nytimes.com/2024/07/06/world/asia/tokyo-governors-election.html

紙面に載ったのは7月6日で小生の目に入ったのは投票が終わる前である。


小池百合子・都知事が引きずっている問題(の一つ)に、カイロ大学・学歴詐称問題がある。今回もそれが週刊誌でとりあげられて、一時は知事も苦境に陥っているという噂もあったが、それとは違って上のNYTは、メディアが学歴詐称問題にかかずらうあまり、(数か所の)都内再開発プロジェクトをめぐる疑惑に切り込まなかった点が小池知事に幸いした、と。そんな風に観ている。
確かに小池知事、都庁、三井不動産。この面々、きな臭いからネエ。
と、そんな話もあるわけで、例えば<三井不動産 都知事 癒着>でGoogle検索すれば、マア出てくる、出てくる。これが本当なら、学歴詐称問題を遥かに超える大炎上になったはずだ。

しかし、日本国内の大手メディアは、選挙を控えて全くこれを問題視しようとはしなかった。その姿勢をNYTは
She has also benefited from a largely compliant news media. 

日本のニュースメディアは"compliant"だからネ、と揶揄している。日本語で言えば、日本のマスコミは「コンプライアンス」を守ったのだ、という指摘だ。 


英語の形容詞"compliant"の名詞形が"compliance"、つまり近年流行の価値尺度である「コンプライアンス」である。

オフィシャルには

コンプライアンス = 法令順守、遵法精神

と意味づけされている。

しかし、上のNYT記事ではコンプライアンスが悪い意味に使われている。ここで使われている形容詞"compliant"は

素直である、いい子である、言いなりになる

という意味で使われている。故に、名詞形"compliance"になると

コンプライアンス = いい子にしている事、言いなりになる事

要するに、こういう意味もある、ということだ。

ちなみに手元のOxford Pocket Dictionaryで形容詞"compliant"の項を引くと

compliant: obedient, yielding

であり、名詞形の"compliance"は

compliance: 1. obedience to a request, command, etc. 2.capacity to yield

となっていて、「コンプライアンス」の主たる意味は「服従的であること」だと確かめられる。

となると、何だか「コンプライアンス」を守るべき倫理的価値として求められるのも、何だかナアと嫌になるのは、小生だけではないであろう。


小池都知事にとって既存の大手マスコミはどこも《いい子》であったに違いない。アメリカの新聞であるThe New York Timesだけは、外国に拠点があるので、『私の言うことを聞きなさい』と、言いきかせることが出来ない。だから、投票日直前というタイミングで上のような記事が載った。小池百合子・都知事から見れば、たいそう行儀の悪いメディアであったでありましょう。

しかし、英文で報道されたからといって、東京の都知事選に与える影響は概ねゼロであったでありましょう。


それにしても、アメリカ紙が外国である日本の、それも東京ローカルな首長選挙で、こんな記事を載せますかネエ・・・裏話を知っている記者がよほど「書いておかねば」と思ったンでござんしょう……。

書かないという事は、問題視しない、認めると同じこと

メディアの鉄則はこれでございましょうからネエ。

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