大学の理系学部の女子比率が中々上がらないようでネットにも《このバイアス》を何とか改善しなければならないと述べられていたりする。
この種の話題は本ブログでも多数回投稿していて、実際、<男女 性差>でブログ内検索をかけると多くの既投稿文がかかってくる。
小生の立場は昔から一貫していて、個々人が完全に自由に選択したマクロ的結果が、仮に男女不均一、つまり職種間で非一様分布があるなら、その結果には合理性があるものと解釈して、うまく説明すればイイ。こんなところであります。
要するに、《社会的要請》か何かしらないが、外圧をかけるのは全て反対である。
そういえば、何日か前に見かけたかどうだったか忘れたが、
ロールモデルって、何だか押しつけられている感じがして、イヤだなあ・・・
こんな台詞だったかが、妙に耳に残っている。
賛成したい思いもするし、ちょっと待ってと一言コメントをしたいという気持ちもある。
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高名な数学者にして「仏理学者」(物理学の打ち間違いではない)であった人に末綱恕一がいる。「あの」高木貞治に師事した整数論の大家であったからもう昔の人である。
その末綱氏の著書に『華厳経の世界』というのがある。
日本は(密教を無視すれば)法華経を基礎とする天台教学が支配的であったが、中国・韓国は華厳経学と天台教学が二大潮流であったという違いがある。
日本では天台宗の総本山・延暦寺が総合大学の役割を果たして、そこから浄土系仏教、日蓮宗、禅宗までが派生した一方で、華厳宗は奈良・東大寺を総本山として今では微々たる広がりしか持っていない。
末綱氏の『華厳経の世界』は、華厳経の要点を概観するのと併せて、華厳思想の特徴をまとめている。
第2篇『華厳思想』の第3章「西洋思想の客観性」の中でこんなことが書かれてある:
紀元前5世紀になると、多くの存在物中、人間存在が特別の関心をひくようになった。ギリシアでは真と善と共に美が尊重されたが、その美が特に人間において看取されるようになり、優れた悲劇や造形美術ができることになった。
丁度、この時期に、ソフィストというものが現われ、しばしば詭弁をろうして、主観的独断主義に陥った。自分自身を主として、認識する個々の主観が直ちに「万物の尺度」であると主張した。
ギリシア人の真の認識、即ちエピステーメー(=真の知識)に欠くことのできない客観性が否定されることになったわけである。
そこで周知のとおり、ソクラテスが出て、正義・勇気・節制等(=智慧)の徳の概念を明らかにし、このような徳は万人に共通な客観的なものであることを主張して、詭弁や俗論と闘ったのである。
「ロールモデルは押し付けだから嫌」という言い分が、抑圧的な慣行への反発であればその主張は絶対に正しいが、単に
自分は、これが正しいと思っているから、とやかく言わないで!
という単なる主観の主張に堕しているのなら、相手からみれば「押し付け」にすぎず
間違いは間違いであるという事実にかわりはない
こう結論付けるしか、結論のつけようがない。
人類社会は、真理を発見しながら進歩してきたのであって、個々人の単なる思い込みは社会には何の貢献もしてこなかった。これからも事情は同じだろう。
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モデルや規範を《唯一の真理》として尊重する文化はいわゆる《古典主義》である。他方、個々人の自由な発想を求める文化は《ロマン主義》と呼ばれる。
日本社会は、江戸から明治にかけて、その時の民意を無視して、政府主導の西洋化を強引に推進して形成されたハイブリッドな社会である所が、同じ「先進国」でもヨーロッパ、アメリカとは、本質的に違っている。
その明治以来の社会的価値の上に構築された価値観や規範、ロールモデルが理不尽にまだ支配的であるなら、今度は《ロマン主義》の花を咲かせて行くほうが、バランスはとれるのじゃあないか、と。
そして、明治以来の価値観の根本は
個々の日本人よりも先に日本社会がある
誰もが意識しているはずのこの観念ではないかと、小生は認識している。
(日本)社会の役にたてる人間になりたい、なるべきだ
広く共有されているこの強迫観念も上の明治以来の古い(虚構の)価値観から派生していると思っている。
大体、日本文化だが、日本という「国」なり「社会」がつくったと思ってルンでしょうか?その時どき、その場所で生きていた一人ひとりの寿命ある「日本人」がこの世にいる間に造ったものではないとでも、思ってルンでしょうか?もしそうなら、おどろき、桃のき、さんしょの木ってモンです。
国とか社会は自然の中に「実在」するものジャアありません・・・こう考える立場に小生はいる。「ある」から「ある」と思っているだけです。
なので、理系女子が少ないのは社会的なバイアスだから、これを社会問題として社会として解決しなければならないという論調は、というよりそんな思想には、ヤッパリ反対だと言わざるを得ないのだ、な。
【加筆修正:2025-05-11】
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