2025年5月4日日曜日

覚え書き: 日本のコメ高値は意外に粘着的(Sticky)であるかもしれない

日本米の名品「コシヒカリ」にこだわる日本人は多いのだろうと思うが、世界の中でコシヒカリに執着する人がどれほどいるかと思うと、やはりそんな消費者は極めて少数だと思う。

寿司ネタはコシヒカリに限るという人は、日本人の中ですら、これまで小生お目にかかったことはないし、実際、寿司屋で使っているコメがコシヒカリかどうか、小生の味覚能力では感知できない。

食材にこだわるのは、その人の味覚の感度によるので、特定品種に執着するのは無意味である例は多い。

アメリカ・カリフォルニア州でもコシヒカリは生産されている。いま日本に輸入されて評判になっている「カルローズ」はコシヒカリではない。というか、日本人が好む短粒種でなく中粒種であることがWikipediaから分かる ― ちなみにWikipediaの信頼感はあらゆるメディアを上回っている(たとえばこれを参照)。

米国産中粒米の相場は前稿に書いた。

では日本人の好むコシヒカリの米国内価格はいくら位なのだろうか?

米国内の市場では米国産のコシヒカリと日本から輸入されたコシヒカリが混じって流通している。味は(一般消費者には)ほとんど同じであるそうだ。

米産コシヒカリとの競争圧力があるせいか、米国内でコシヒカリの販売価格は(いろいろとネットを調べて見ると)日本の3割安というところのようだ。

同じ日本のコシヒカリがアメリカでは安く、日本では高く売られているという指摘は、これを指すのだろう。この逆転現象(?)は、ひとえに市場競争がもたらしているわけだ。つまり、同じコシヒカリをアメリカは低コストで(=効率的に)生産できるということだ。だからコシヒカリ価格は安くなる。一方、日本国内の市場で高値がついているのは、ブランド価値、つまりは準レントであるし、これまで品種改良に投下してきた資本へのリターンであるとも言える ― 賃金コストがアメリカに比して高いからとは言えそうにないがどうだろう。

では、安いアメリカ産コシヒカリを日本に輸入すれば、日本でも安くコシヒカリを買えるようになるだろうか?コシヒカリ生産農家にとっては悪夢になるだろうか?

必ずしもそうはならない。

なぜなら日本のコシヒカリ価格はいま高いからであり、コシヒカリ輸入業者が寡占的であれば、輸入業者が自社利益を最大化するように供給をしぼるはずだからだ。つまり、輸入業者がコシヒカリ市場で安値攻勢をかけるとは考えられない。むしろ、日本の既存業者と競争はせずに融和的な戦略を選ぶはずである。

このロジックは短粒種だけではなく、日本人が受け入れやすい「カルローズ」など中粒米についても当てはまるに違いない。

米国内販売価格を上回る価格が、日本国内で形成されているならば、わざわざ安値攻勢をかけて米価を急落させるようなビジネスを輸入業者がするはずがない。

こう考えると、現在の米価が急落すると予測するのは難しい。

それでなくとも、自由に形成される商品価格は足元の価格に依存する自己回帰モデルが当てはまるものだ。

もしも投機的売買が相当割合あるのであれば、価格下落局面の方が上昇局面よりは急速に進むと言われるが、コメは株とは違う。企業は不況で倒産して株が紙くずになる可能性があるが、コメは保存可能な農産物である。暴落局面で売り急ぐ必要はあまりない。

こう考えると、日本の高い米価格は粘着的(=Sticky)であると見るべきかもしれない。


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