2012年6月1日金曜日

世界経済 ― 3か月前の予想と全く違った展開なのか?

昨年末には、そろそろ中国が経済再加速にギアチェンジをして、アメリカは大統領選挙の年、欧州はドイツの好調とイタリアの引き締めの綱引きになるだろうが大崩れはしないだろう、日本は(いくら何でも)大震災からの復興需要が本格化するだろう・・・・と、まあ、方向としては上向きを予測していた。OECDの景気先行指標の動きもそんな形を示していた。

ところが・・・

5月のIFOビジネスサーベイの結果はドイツ経済の急減速である。
The Ifo Business Climate Index for industry and trade in Germany fell significantly in May. Assessments of the current business situation deteriorated clearly. The business situation nevertheless remains above the long-term average. Companies also expressed greater pessimism about their business outlook. The recent surge in uncertainty in the Eurozone is impacting the German economy. (Source: IFO NEWS, May 2012)

さすがのドイツも、ドイツ国内ではギリシア放棄の観測が高まっているし、問題は既にギリシア離脱ではなくユーロ圏存続の可能性をどう見るかという点に移りつつある。ドイツは通貨統合によって損をせず、得をしてきた側であることを考慮すると、ユーロ圏の将来不安がドイツ経済に暗雲を投げかけるとしても、それは当然の理屈である。

一方、5月公表のOECD景気先行指標をみると、こう書いてある。
Composite leading indicators (CLIs), designed to anticipate turning points in economic activity relative to trend, point to regained momentum in the OECD area but with divergence between economies
Compared to last month’s assessment, the CLIs for Japan and the United States show stronger signs of improvements in economic activity, pointing towards an expansion. In the Euro area, the CLIs for France and Italy continue to point to sluggish economic activity below long term trend. The CLIs for Germany and most other Euro area economies show slightly more positive signals. The CLI for the United Kingdom and major emerging economies, in particular China, where the assessment points to above trend growth, are showing stronger positive signals compared to last month’s assessment.
 近年の世界経済はシンクロナイズすることが多いが、足元ではディ・シンクロナイズしている。日本の経済財政白書用語を使うと<跛行性を強める世界経済>というところだ。

ただ中国経済についてはOECDは強気にみている。実際、先行指標は下の図のようになっている。


どうみても底打ちは昨年末に終えており、今後は長期的トレンドを超えていこうという形である。ところが本日の日本経済新聞には以下の報道がある。
【ムンバイ=黒沼勇史】インドや中国など新興国経済が予想を上回るペースで減速している。インドの1~3月期の実質成長率は5.3%と、7年ぶりの低い伸びとなった。中国でも輸出や消費が振るわない。物価高を抑えるための昨年までの金融引き締めや欧州危機が響いた。各国は利下げなどで景気テコ入れを急ぐ。(出所:日本経済新聞、2012年6月1日付け朝刊)
自然体で政策運営をしても中国経済はこれから上向くはずの状況ではあるまいか?ところが足もとのレベルはまだ低い。そこでアクセルを思いっきり踏む。そういうことか。中国政府も政権交代期にある。経済状況の明暗が及ぼす影響は、派閥ごとに一様ではあるまい。とはいえ、アクセルの踏み方によってはインフレが再び問題化するかもしれない。国際商品市況、中でも原油価格市場にとって想定外のランダムファクターになるかもしれない。

新興国経済が円滑な成長を持続していくかどうか、ギリシアの再選挙にもまして、注意が必要だ。幸い、このところ原油価格は騰勢一服しているが、予断は許さないと思う。

それとユーロ圏そのものの未来であります、な。大きな鍵は。ギリシアの国政選挙で財政緊縮が頓挫しそうであることはある程度分かっていた。フランスの大統領選挙で左翼政権が生まれそうだということも、サルコジ前大統領の評価を見る限り、ある程度わかっていた。メルケル首相が次第に孤立するだろうということも、ある程度、分かっていた。ドイツ流の財政緊縮一点張りの政策は次第に難しくなるだろう。これも分かっていた。それなら、<ユーロ圏崩壊>もまた未来予想図の中に入れるべき時が来たのか?

それは違う。何故ならドイツが欧州全体の経済発展にどのように向き合うのか?その覚悟のほどに依存するからであり、そのドイツの覚悟はこれから形成されるものであり、どの程度まで形成されるかが不確実だからである。そこが予測できないので、欧州が良い方向に再建される見込みになるのか、このまま崩壊していくのか、分からないのだ。故に、今後一年間の世界経済の予測も甚だ難しい。いわゆる確率法則とは別の<不確実性(Uncertainty)>が増大している。

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