いまアメリカのFBIとアップルが対立している。捜査の必要からiPhoneが保護している個人情報(通話履歴とかメールとかメモとか、その他諸々のデータだろう)のロックを解除するソフトを提供してほしいと捜査当局が要請したというのだな。で、アップルは拒否した。メディアでも盛んにとりあげられている。
確かに、パスワードを知らないまま5回だったか、いや今では10回になったのか、ログインに失敗すれば全データが消去されるように設定されていることもある – 現に小生はそうしていた。
+++
小生はアップルの姿勢に共感を感じる。
しかし、(よく考えてみると)小生の本音、というかずっと持ち続けてきた自分自身の意見とは違うことに気がついた。
★ ★ ★
それは後で述べるとして・・・
日本でも10年ほど前に導入された個人情報保護法。あの時、日本のメディア業界、及びいわゆる「有識者・知識人」はおしなべて法制化には反対だった。理由は報道の自由を侵害する可能性があるというものだった(と記憶している)。
上のロジックに立てば、その時「個人情報保護法案」に反対した日本のメディア業界は、今回のFBI対アップルの対立ではFBIの立場を支援しなければならない。
特に今回は犯罪捜査という公共の利益に基づいている。
しかし、個人情報保護は絶対に必要であるという立場もある。その立場にたてば別の意見になる。
公共の利益が先だって?そんな理由は口先だけで意味がない。もし今回のケースで可とされれば、捜査当局は、犯人でなくとも、捜査当局が必要と考える個人なら誰であっても、個人情報を侵害しても良いと考えるに違いない。それは明白だからだ。
クレディットカードの使用履歴はすべて当局の手元にある・・・嫌だという人はやっぱり多いだろう。
+++
小生もまた個人情報保護法案には実は反対なのであった。というより、厳密に言えば、無関心であったと言うべきだろう。
というのは、小生のことを(どんな理由でか)調べられても、確かに気色は悪いが、何も困ることはないからだ。
知りたいなら、どうぞお調べになっておくんなせええ。困ることはなんもござんせん。そんな感じだ、な。
男子たるもの、一歩敷居を跨げば七人の敵あり。幾つも別荘をもっている富豪なら、自分の現在位置、保有資産、事業内容などは、いわば私的な軍事機密のようなものだから、隠しておきたいはずである。
持っていないっていうのは、弱みもないということなのだ。
+++
とはいうものの、金銭取引など勝手にハッキングすればそれは犯罪であると。この位の認識は制度化してくれないと困る。
それでもなお、知りたいなら勝手にどうぞ、と。しかし、もしも不正に情報を利用して私に損害を与えたなら、それは10倍返しだよ、と。当局に告発するからね。それで、当局は取引経路を何の手続きもなしに、いくらでも調べられるのだからね。しっかり賠償してもらうよ。
こんな風に、知りたいならどうぞ、しかし損害はしっかり10倍返し(ひょっとすると、100倍返し?)ですよ。このほうが世の中、ずっと活性化されて、面白いと思うのだ。大体、秘匿しておきたい個人情報、他人に知られると本当の意味で困る個人情報、そんな情報の多くは何らかの意味で当人の弱みにつながる情報ではないだろうか。この情報は漏えいの恐れがあると思えば、それでも隠す方法を考える人もいるだろうが、多くの人は「止めておくか」と思うだろう。これは他人の目が社会的規律として作用するという意味でもある。
事後的な損賠賠償を厳格化する。その反面、情報はそれ自体としては緩くする。このほうが小生の感覚にはマッチするのである。
故に、感覚的には「守るものは守る」と言っているアップルの姿勢に共感するのだが、昔から個人情報の保護なんて必要ないって言ってたよねと言われれば、確かにそうです、と。ということは、FBIに教えてもいいんじゃないの。そんな結論に個人的にはなってしまうのである。
珍しくも、メディアが多分とるだろう立場と小生の個人的意見が合致する見込みが出てくるわけだ。
★ ★ ★
それにしてもアップルという企業は度胸がある。ここに最も感心した。
仮に東京地検特捜部から協力依頼があったとして、その依頼を蹴っ飛ばせる日本企業があるか。犯罪捜査であっても守るものは守ると、NTTDoCoMoは言ってくれるか、AUやSoftbankは言ってくれるか・・・、個人情報保護法があるとしても実に心もとない。
大体、いまでも「必要性があれば」匿名のスパムメールが誰から送信されたものか、そのくらいなら警察に相談すれば、警察がプロバイダーから情報をとってくれるそうだ。
そんなお国柄だからねえ・・・。
0 件のコメント:
コメントを投稿