2018年8月1日水曜日

真性「無神論者」と擬陽性「無神論者」の違いはどこにあるか

最近、宗教を起源とする事件が多い。イスラム国(IS)、シャルリー・エブド襲撃事件などなど特に海外はそうだが、日本でもオウム真理教幹部の刑が執行されるなどで、宗教話題が(一時的に?)増えている模様だ。

ところが、ネットやTV画面では『私自身は、まあ無神論者なんですけどネ…』という枕詞がまず初めに置かれることが非常に多く、これが時に聞き苦しく、時に嘘くさく、(個人的に)感じたことを書いておくかナと思った次第。

分野としては、今回もまたこのところ増加中の宗教関連テーマになった。世間の潮流を表しているかもしれない。

◇ ◇ ◇

小生は無神論者ではない。

具体的には、他力信仰が土台にあり、自力信仰には疑念を持っている。親は無宗教であった。戦争、空襲を体験した戦前世代は意外とそうだ(と感じている)。そんな風で、小生の立ち位置は戦国末期の一向宗門徒に近いが、実際にはもっと穏健な法然が開いた知恩院派(教義上は鎮西派と称されているらしい)浄土宗に属している。この秋に行われる授戒会の案内が月参りに来る住職からあったのだが、色々な事情があり、やはり前からの予定通り4年後の五重相伝に参加したいと伝えたところだ。どちらにしても、現世の縁である親子、夫婦の縁に一区切りをつけて、これからは仏縁を第一と観る気持ちが根底にある。「子供たちの心配もそろそろイイかな」、「あいつらはあいつらでやって行くべきだ」というのに近い。

多分、若いころから夫婦そろって結婚式よりは葬式のほうに慣れていたせいかもしれない。親不孝を親孝行で埋め合わせる時間がなかったためかもしれない。どちらにしても自力本願では小生にチャンスはない。カミさんもそれは同じだ。

なので「無神論」という言葉に小生は距離を感じる。

◇ ◇ ◇

理屈をいうと、無神論者は少なくとも三つに分類される。
  1. 真性無神論者(超越的な世界や存在をすべて否定する真の無神論者)
  2. 意図的無神論者(意識的に無神論者を演じる有神論者)
  3. 無自覚性有神論者(有神論者であることを自覚しない表面的無神論者)
2と3の違いはそれほど本質的ではない。いわば「擬陽性」無神論者である。どちらも実際には有神論者である。まあ、立場2の方が作為性・偽善性(?)が高いことは高いが。

思うにほとんどすべての日本人・無神論者は2か3に該当する。1の立場にいると判定される人に小生は出会ったことがない ― おそらく共産党員は立場1をとるのがロジックのはずだが。あるいは、神ではなく人間が命を決めるべきであると考える哲学者や医学者たちも無神論者としては真性であるかもしれない。余りに過酷で責任の重さに耐えられるとは、小生、思えないが。

言葉の定義から、1の真性無神論者の行動パターンは明確であって、識別は容易である。具体的には以下の特徴的行動が、複数、観察されるはずである。
  1. 初詣や参拝には決して行かない。お御籤や占いなどには無関心である。
  2. 結婚式はしない。神への誓い、三々九度などの儀式にカネは払わないはずだ。披露宴のみとする。入籍など社会制度、行政事務をより信頼する。
  3. 近親者の葬式も宗教色があるので(基本的には)しない。お布施、お花料などはカネの無駄だと意識されるはずであり、埋葬までの行政手続きを重んじる。
  4. 神事に無関心である。車に交通安全のお札をつけるなどはもちろん、学業成就、合格祈願のお守りなどは求めない。他から頂戴しても屑籠に廃棄するはずだ。
  5. 元旦のしめ飾りもしない。クリスマスツリーも飾らない。祭日は何らかの意味で宗教的祭事としての意味を持つ。なので盆踊り、祭りの神輿なども広い意味での神事であり、これらには(面白いから参加する可能性はあるが)基本は不参加を貫く。
  6. 運・不運を考えることはない。これらは幸運を祈る心理から発する言葉である。祈るという行為はしないはずだ。そもそも『人事をつくして天命をまつ』などというセリフとは無縁である。
  7. インシャラー(神の思し召しのままに)、オー・マイ・ゴッド、かみさま~等々、慣習的な表現には超越的存在を意識したものが多いが、これらはすべて口にしないはずだ。手を合わせて祈る動作とは無縁だ。人間世界の事は人間の知性で決定可能であるというのが真性無神論者の基本的立場である。
とまあ、以上のようにチェックポイントを整理してみると、小生の周りには(さすがに)真性無神論者はいないようである。

例えば「公務員は宗教からは独立でなければならない」という理由で日常は「無宗教」を看板にしている人。地鎮祭はしたりするがビジネスに宗教はマイナスである(と感じている)人。御利益があると評判の御守りを上げるとお礼を口にするが、普段は参拝などはせずズボラな人。大体はそんな人たちばかりである。

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