2018年10月10日水曜日

内閣支持率を視聴率のように使うメディア企業の阿保らしさ

マスコミ、というか近年の体たらくをみていると、もはや「新聞業界」、「テレビ業界」という言葉を使いたくなるのだが、日常的に販売部数、視聴率の動向に気を使いながら経営しているせいか、報道対象(マスコミにとっては素材というべきか)のコアをなす内閣、この内閣支持率調査の結果を定期的に報道するのが、社員たちにとっては、一種のカタルシス(≒気晴らし)になっている、というのは小生も共感できる。

最近の世論調査によれば安倍改造内閣の支持率も不支持率も40パーセント程度で拮抗しているということだ。

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ただ、どうなのだろう?

回答者は電話番号からランダムに抽出する方式だが、つまりは普通の人たちである。

支持率というのは「総理大臣に対する支持率」ではなく「内閣に対する支持率」である。

普通の人は安倍内閣を構成する大臣のうち何人を知っているのだろう?麻生財務相、河野外相くらいは知っているだろうが、今度の防衛大臣は誰だったか、法務大臣は誰だったか。評価していいのか、悪いのか。個人的に知っているのだろうか?当然のこと、知らないはずである。

そもそも自分の勤務している会社の中ですら、〇〇専務や△△常務を冷静かつ客観的根拠を以て評価できる平社員など、どの程度いるのだろうか?現執行部を評価できる社員などいるのだろうか?噂話や社内世論の何となくの空気、たまに放映される動画などに基づいて、それぞれイメージを作っている人がほぼ全てであろう。大企業なら特にそうだ。官僚だって、総理の顔を近距離からみたことがない人は多い。

自分の勤める会社でもそんな事情ではないのだろうか?

小生、内閣支持率の数字などはまったく評価の基礎を欠いた、その意味では統計データではなく、情報産業の生産物であると受けとるようになった。

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社長はじめ現執行部が社員から支持されるかどうかは、ただただその企業の経営実績が左右する。要するに、給与、賞与、市場シェアが好調なら個人的人柄が分からないままに支持するのが当たり前である。まして株を買う株主にとって、ナニナニ銀行の頭取がどんな思想で、どんな人柄で、どんな経営戦略を持っている人かどうかなどは考えないし、まして支持するかどうか質問されればプッと吹き出すに違いない。『頭取で決まるわけじゃないですからネ』くらいは、素人投資家でもよくご存じだ。

放言をしようが、軽口を言おうが、部下の前でイライラと机をたたいたり、罵声を浴びせようが、会社を成長させれば、その限りにおいて社員は社長に変わってほしいとは思わないはずである。

社長は、平社員の友達ではない。嫌々、つき合う必要はない。普通の人は、自分たちに利益をもたらしてくれれば、反対する必要などはないのだ。

内閣支持率も事情は同じである。

支持率、不支持率が拮抗しているというのは、安倍政権下で利益が拡大している人たちと拡大してはいない人たちが、ほぼ同数程度いるという現実の反映だろう。即ち、「格差拡大」(単なる給与格差拡大ではなく、全年齢層を含めた経済状況格差の拡大という意味である)が、なお進行している。これからも同じ方向が期待される。それが、この結果をもたらしていると考えれば、仮説としては面白いだろう。

ただ、全体のパイの拡大を優先するか、分配平等化を優先するかの議論は、価値観の対立が最も先鋭化する点であり、学問的に解決のつく問題ではない。一つの立場にたった政治というのは、選挙の結果であるとも言えるのだ、な。

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その選挙の結果と情報産業のイメージ作り(=報道傾向)はパラレルではない。各社各社特有のバイアスが混じり、それゆえに内閣支持率は「支持率」というよりは、各社の「宣伝効果インデックス」と理解したほうが一層正しい。内閣支持率を上げたいと考えている新聞社も、反対に内閣支持率を下げたいと考えている新聞社も、実はどちらも新聞業界にはある(はずだ)。テレビ業界にも双方の側の会社がある(はずだ)。これが現実描写としてはより当てはまっていると思う。

言い換えると、内閣支持率調査とは「世論調査」では実はなく、新聞社を経営する執行部が展開するプロモーション戦略の影響力を測定するための自社調査である、と。小生はこう見るようになったのだ。

この認識から以下の段落が導かれる。

『内閣支持率をもっと上げなければいけませんヨネ』と言うのは、政治とドラマを同じようにとった言いぐさであり、考察力不足を伝える、というか(より以上に)不誠実な言葉である。

であるので、毎回毎回の「内閣支持率」の変動を視聴率よろしく伝えるテレビを観ていると、小生、はからずも失笑し、プロデューサーの指示通りに話しているキャスターに哀れを感じてしまうのだ、な。救いがたい阿保にどうしても見えてしまうのだ。自分自身もそう思っているわけではなく、ただ上司のプロデューサーに指示されて話しているだけであろうから、実に気の毒である。



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