2018年10月28日日曜日

難問: 現時点の景気予測

本年初めの期待は株式市場の格言『戌わらう』だった。実際、年初には株価も急騰し、大いに笑ったものだった。ところが、現時点から来年にかけて、経済動向は不透明。文字通り五里霧中だと言っても言い過ぎではない。

小生が関心あるのは株価動向である。株価は先行指標の代表だ。故に、経済実態に概ね半年から1年程度は先行して変動する。つまり、現時点において予想される将来景気の予想に基づいて、株価はいま変動しているといえる。

その株価は、中期的に近々ピークアウトするだろうという判断が形成されつつある。NYダウ平均は三尊型ピークを形成しつつあるように見える。


2000年初頭のITバブル崩壊時にはピーク比で35%程度の下落、2008年のリーマン危機では同じく50%程度の下落を示している。NY株価はどうみても下落局面直前だと思われるが、石油価格や国際商品市況の水準をみると、リーマン危機後に匹敵するほどの暴落にはならないと予想するが、こればかりは分からない。

FRED(St. Louis FED)が提供しているLeading Indexはもっと明瞭に先行き下降の兆候を示している。


先行指数の水準は既にピーク比で1ポイント下方にスライドしており、拡大局面の持続期間を考慮しても、間もなく急低下の局面に入る可能性が暗示されている。

ただ金利の長短スプレッドはまだ下がりきってはおらず、予想が難しい。


これをみると、実態経済の下方転換点は2019年の秋口辺りか、あるいはもっと遅いか、という風にも思われる。とすれば、先行性のある指標には来年前半からその兆しが現れてくるだろう。いずれにしても、来年10月に「予定」されている、消費税率引き上げには暗雲が立ち込め始めていると観ている(この点は、ずっと前から分かっていることで投稿もしているが)。

★ ★ ★

専門家の意見もそろそろネガティブな指摘が増えてきているようだ。米企業の利益も頭打ちになりつつある。たとえば最近の報道では:
米株市場のファンダメンタルズは概ね堅調を維持している。昨年の法人税減税に後押しされた利益の増加には割高な株価収益率(PER)を正当化する効果があった。売上高の伸びも年初に記録した急激なペースから比べると減速しているが、前年比プラスは堅持している。

 アナリストの多くが焦点を当てているのは、来年の数字がどうなるかだ。売上高成長の減速が数四半期続けば利益成長の維持が難しくなり、市場を支えている重要な柱が弱まるとアナリストはみている。
 (出所)WSJ、2018-10-28

日銀の早川元理事も次のように述べている:
早川氏は16日のインタビューで、来年10月の消費増税や2020年夏の東京オリンピック終了に伴い、「来年か再来年のどこかが景気転換期と考えるのが自然だ」と語った。設備投資計画は「近年まれに見る強さ」だが、景気後退期直前の強い設備投資は、過剰設備となるため失敗することはほぼ間違いないと説明した。
(出所)Bloomberg、2018-10-17

実体経済の景気転換点が、もしも来年から再来年にかけて訪れるとすれば、これは小生の予測なのだが、仮に株価が11月から歳末にかけてもう一度上昇を試みることがあるにせよ、その場合は年明け後の大発会で急落を演じるという可能性もあるのではないか、と。そう思ったりして、今は対応を急ぎつつある。

かつてリーマン危機の到来を予測したNOURIEL ROUBINIとBRUNELLO ROSAは、本年9月の時点で2020年景気後退説をProject Syndicateに投稿している。
As we mark the decennial of the collapse of Lehman Brothers, there are still ongoing debates about the causes and consequences of the financial crisis, and whether the lessons needed to prepare for the next one have been absorbed. But looking ahead, the more relevant question is what actually will trigger the next global recession and crisis, and when. 
The current global expansion will likely continue into next year, given that the US is running large fiscal deficits, China is pursuing loose fiscal and credit policies, and Europe remains on a recovery path. But by 2020, the conditions will be ripe for a financial crisis, followed by a global recession.
Source:
Roubini, N., Rosa, B. "The Makings of a 2020 Recession and Financial Crisis"

ただFRBのパウエル議長は少し違った見方をとっているのかもしれない。
 米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は2日、マサチューセッツ州ボストンで講演し、米景気の見通しについて「非常に良い」と述べ、先行きに改めて自信を示した。
 米議会予算局(CBO)は2020年末まで失業率が4%を下回り、個人消費支出(PCE)物価指数の上昇率もFRBが目標とする2%近辺で推移すると予測。パウエル氏はこの予測に触れ「多くの予想によると、好ましい状態が続くようだ」と語った。(中略)
 またパウエル氏は、米景気のリスク要因として、米国外の景気動向や中国などとの貿易紛争を挙げ、注視していく考えを示した。
(出所)The Sankei News, 2018-10-03

進行中の米中貿易戦争による世界貿易減少を考慮に入れれば、景気転換点の予測時点はずっと前の方に修正されるかもしれない。ただ、今回の拡大局面が終了するとすれば、資源制約やインフレ率上昇ではなく、労働市場逼迫による成長率低下、利益率低下、過剰設備の顕在化が招くストック調整というクラシックな類型の景気後退であるとみてきた。とすれば、現在の貿易戦争がマクロ経済に対してどのような効果をもつのか?2019年に入って以降の金利上昇テンポを加速させるのか、減速させるのか?そこがどうもハッキリと見えない。なので、本日の表題となった。

***

日本の株価については、国内景気には独自の底堅さがあるとか、日本の強みがあるとか、これから1980年代末バブル高値にチャレンジするなどと、色々な修飾が語られているが、無責任でありまったく信頼はできない。東京市場はニューヨーク市場のミラー相場であり、かつ東京のほうがずっとボラタイル(Volatile)である。

日本国内の景気、株価を予測するには、アメリカと中国の経済動向をフォローしておけば、本筋を外すことはない。日本経済はもう独立変数ではなく、従属変数である。なので、本日は主に米株式市場に関する見通しについてまとめておいた。 

0 件のコメント: