2019年3月7日木曜日

一言メモ: 官庁統計業務は『何らかの対応が必要だ』の好例

厚労省の毎月勤労統計は現在もなお炎上中であるが、統計業務の総括を任じる総務省でも類焼が起こりつつあるようだ。

「家計調査」である。少し長いが引用しておこう:
その一方で、総務省の「家計調査」が、昨年は個人消費がやや持ち直した形になっていました。これをとらえて、政府もそれに近いエコノミストも、個人消費が回復を見せ始めたと、前向きに評価しています。
しかし、その家計調査も、途中で調査用の「家計簿」を変えてしまい、データの不連続や分かりにくさが強まったほか、「2人以上世帯」の改善に対して単身世帯を含む「総世帯」の不振が際立ちました。
そして、さらに不自然なデータが出てきました。 
(中略) 
ところが、2018年の世帯構成が突然若返りました。世帯主が60歳以上の世帯割合が52.3%と、前年の53.4%から1%以上も減りました。
また年々増加している「無職世帯」の割合も18年は33.8%と、前年の34.6%から減少。代わって「勤労者世帯」が52.9%と前年の49.6%から大きく増加しています。
無職世帯の消費額は勤労者世帯に比べて2割程度少ないため、消費額の大きい勤労者世帯の比率が高まると、それだけ平均消費水準が高まります。
定年延長で無職世帯に移らず、勤労者世帯に留まる世帯が増えることはある程度理解できますが、この動きはこれまでも徐々に進んでいたわけで、2018年に突然勤労者世帯が大きく増加したのはあまりに不自然です。
まして60歳以上の世帯が減るというのは、さらに不自然です。片方が亡くなって単身世帯が増えているなら、それらを含めた「総世帯」の結果を毎月公表すべきです。
このサンプルの変化が消費水準を高めるために、意図的に行われたとすれば、まさにデータ偽装になります。
URL:https://www.mag2.com/p/money/647458

「家計調査」はGDP統計の基礎統計(というより四半期計数の基礎統計)の一つにもなっているが、水準の推計に使うにはともかく、前年比などの「変化」をみるには余りにもサンプル入れ替えに伴うノイズが大きく、特にリアルタイムの景気判断に重用するには極めて不適切であると小生は考えてきた。かつ、水準推計に使う場合でも費目間でアンバランスな「過小性」が否定できず、大いに問題を含んでいるというのは、小生がずっと昔に学会や専門誌で公表した結果にも現れていることで、これまた「家計調査」を常用している人なら感覚的に分かっているはずである。

それを今さら「信用できない」と批判してみても、同じ畑で仕事をしている人なら「分かっとるワ!」と言うところなのだが、問題は本当に総務省の統計作成業務が問題視されてきたときに、それを行政評価したり監察するための行政組織が同じ総務省内にしかないことだ。

いまでも厚労省内の身内の監察委員会報告は「甘すぎて信用できない」と批判されているくらいだ。

先が思いやられるとはこの事だ。

前にも投稿したが、行政機構の再配置を内々にでも検討し始めたほうがよいのではあるまいか ― もうしているかもしれないが。後手に回ると、もたないのではないかと予想する。司法統計の不正で法務省、ひいては検察庁全体が動揺するようなものだ。犬の尻尾が胴体を振り回すようなものだが、まったくブラックユーモアにもならないだろう。

厚労省の「不正統計」は、それ単体を(伝えられているままに)みると、プログラムコード管理者と推計担当者レベルの不注意と怠慢が原因であると(専門家の間では)おおよそ見当がついている状況だ。要は、再発防止策を技術的観点から立案すればよい。ただ、経緯を踏まえた事後的監察が満足に機能していない点は否定できない。ここでキチンと方をつけなければ、官僚は「不祥事を起こしても、責任を問われるのは総理と大臣と幹部だけで、やりすごしていれば自分には何も起こらない」ということになり、悪い意味での事なかれ主義が今後横行するのは確実だ。

分かっとんのかいな…という点こそ問題の核心になりつつある。単純な話なのだがナア……。これも与党絶対多数がもたらした「国内だけは平和ボケ」なのか?それとも次の選挙までの時間を超えるような問題は、結果がすぐに出ないので、そもそも取り組まないということなのだろうか。

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