2019年9月19日木曜日

来そうで来ない「景気後退」

18日のFOMC(米・連邦公開市場委員会)でまた利下げが決定した。0.25パーセントの政策金利引き下げである。

前回7月末の同幅利下げの際はパウエルFRB議長が『これで利下げサイクルに入ったわけではない』と付言していた。しかし、今回また利下げに踏み切った。やはり景気の先行き不安があるからだろうと誰にでも分かる。

とはいえ、今日の日経報道だが
パウエル議長は「景気が減速すれば追加利下げが適切だ」と主張したが、年末までに追加緩和を見込む会合参加者は現時点で過半数に達していない。
こんな感じであるから、経済専門家に共有された景気先行き感はない、と言ってもよい状況だ。このこと自体が緊張感がまったくなく、むしろ不安をあおるというものだ。

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実は、こんなコラム記事もFinancial Timesにはあった。これも日経経由の日本語訳なのだが、投稿者のほうで適宜抜粋しながら引用すると:

世界が景気後退と戦う武器をこれほど持たなかった時代は、過去にあまり例がない。だが、戦うべき景気後退がこれほど少ない時代もかつてなかった。

ゆえに、次の世界的不況がどんなものになるか想像するのは難しい。ただ、思わぬ悲惨な状況になる可能性は高く、いつ起きるかもわからない。毎年流行するインフルエンザというより、新種の感染症が突然まん延する事態に近いだろう。 
この夏、米国の債券市場では長期金利が短期金利を下回る「逆イールド」が発生したため、景気後退を警戒する声が高まった。同時に、米国の景気拡大が過去最長となる一方で、製造業の景況感は世界的に悪化した。

(しかしながら)景気後退を予測する人たちの見通しは過去、まず評価されることはなかった。予測が正しかったと証明するのに2~3年かかっていたからだ。だが、最近は予測を証明するにはもっと年数がかかる。米景気は8月に拡大が122カ月目を迎え、1991~2001年の過去最長記録を更新した。

(近年の特徴として目立つのは)各国の中央銀行がインフレ率を安定させることで、経済の過熱とそれに伴うバブルの発生とその崩壊の回避に成功していることだ。戦後の米国の景気後退の多くは経済の過熱とともに始まった。インフレが進むとFRBが金利を引き上げ需要を抑えた。そうした景気後退が最後に起きて既に数十年。最近の各中央銀行は、インフレの行き過ぎよりむしろ、インフレ目標を達成できずに苦慮している。
(出所)日経2019年9月5日「FT:次の不況は予測不能」

上の引用の中で『…既に数十年』というのは「十数年」の間違いではないかと最初は思った。アメリカと日本の違いかとも思った。が、日米経済はそれほど独立して変動してきたわけではない。「新聞で書き間違いか??」とも疑った。しかし、そういえばインフレ抑制を目的に金利引き上げを実施して景気後退を招いたのはいつのことだったかを思い出してみると、もう遠く1979年の第二次石油危機発生時にまで遡ってしまう事に気がついた。それから、日本(及び世界)では資産価格バブルが発生したが、財貨サービス価格にインフレ問題は発生していない。う~ん、「あれから40年」ですか……昭和は遠くなりにけり、である。

いま、鉄鋼、非金属、原油など国際商品市況は歴史的高値にさしかかっているどころか、むしろ弱含んでいる。とてもじゃないが景気が下方転換するという物価状況ではない。心配なのはアメリカの株価くらいのものだ。

これには世界経済のサービス化で製造業の在庫調整サイクルが経済全体の中に埋没してきたことも大きいだろう。

そもそも総需要の半分を占める家計最終消費は時間軸に沿って一定レベルの消費を続けたいという動機が動学的最適化を行う(代表的個人である)消費者の側にはある。少なくともシステマティックな変動要因は消費者側には内蔵されていない。景気がモデレートされることは決して不思議ではないのである。

それでも不安なのは世界的な債務残高累増と金融機関の健全性が気になるからだ。本当に大丈夫なのだろうか?突発的な世界経済崩壊はやはり国際金融面から来襲するのではないか?2016年初を底にする低迷は石油、鉄鉱石など国際商品市場の動きだった。アメリカ、中国経済が主たるプレイヤーだった。実物経済からゆっくりと進行し回復も緩やかなものだった。次に来るのは金融現象なのだろうか?主導するのはやはり中国なのだろうか?中国経済をよく伝えるマクロ経済データはあまりない。よく分からない。中国以外のどこかの国がデフォールトを出すのかもしれない。

FTではないが、来そうで来ない景気後退。それでも不安な景気崩壊の予兆、というところだ。

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