東京五輪(TOKYO 2020)のマラソンが札幌で開催されるのは、東京の酷暑を避けるためのやむを得ぬ変則方式である。
今日が五輪最終日で男子マラソンが朝7時にスタートしたのでTV観戦した。沿道には相当の観衆が(朝早くにもかかわらず)<密>になりながら声援を送っているのだが、その心理は小生にも分かる。
事前には
この酷暑の中、マラソンを開催するなどは、まさにクレイジー。
そう思っていた。
事後になると
これこそ本来の「マラソン」というものではないだろうか。
そう思っているから不思議だ。
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マラソン発祥の起源となった《マラトンの戦い》は、紀元前490年9月12日に古代ギリシアとペルシア帝国との間で戦われたそうだから、季節的にはまだ残暑が厳しかったと推測される。
Wikipediaには以下のような解説がある:
早朝、ほぼ全軍を重装歩兵でかため、最右翼にカリマコス率いる主力部隊を、最左翼にプラタイアの主力部隊を配置したギリシア軍は、ペルシア軍に総攻撃を仕掛けた。アテナイ・プラタイア連合軍は敵陣と同じ長さの戦線を確保したため、中央部はわずか数列の厚みしかなく最大の弱点であった。しかし、ペルシア軍の戦法を知っていたミルティアデスは、ペルシア軍に駆け足で突撃するという奇襲戦法を用いた。これについては、
- 敵陣までの8スタディオン(約1,480メートル)を一気に駆け抜けた
- 弓の射程距離まで徒歩で接近し、突然駆けだした
- ペルシア軍が行軍してきたところに駆け足で突撃した
といった説が提唱されている。この行為をペルシア軍は自殺行為と侮ったが、白兵戦に持ち込んだギリシア軍は、重装歩兵密集陣を駆使して長時間にわたって戦い抜いた。
戦線を拡張したため、数列しか編成されなかった アリステイデス率いる中央軍はペルシア歩兵に押し込まれたが、両翼は十分な厚みを持っていたため逆にペルシア軍を敗走させた。両翼の軍は敗走する敵を追わず、そのまま中央部のペルシア軍を包囲して壊滅させ、撤退する敵軍を追撃した。この時、カリマコスを含むギリシア軍の死者192人に対して、ペルシア軍の死者は6,400人に達したとされる。
武具、武器を身に着けた長時間の白兵戦のあと、この「ギリシアの勝利」をアテネ市民に知らせるために、戦場からアテネ市までの42キロ余を一気に走り通し、勝利を報告するなり息絶えたフェイディピデスの心意気(この言葉もまた今の日本では死語となってしまったが)を偲んで生まれたのが、近代オリンピックの「マラソン」である。
まあ、TVで甘々の観戦をしたに過ぎないが、酷暑の中で体力の限界まで力を尽くす競技者の姿をみていると、タイムを競う最近のマラソンレースとはまた違った趣を感じたのであって、そもそもオリンピックでマラソンを復活させた元来の狙いと言うのは、こういうことではなかったのか。
五輪サイトで一寸調べると、106名の出場者中で棄権者が30人に達したというから棄権率が28パーセント。ドーハの酷暑と言われた世界陸上ドーハ大会に並ぶ、というより上回る(?)棄権率になったのではないだろうか。
第一印象としては、北海道の夏もやはり暑く、その意味ではマラソンの開催地を東京から札幌に変更した甲斐もなかったようにも思われるが、終わってみれば
マラソンというのは、そもそもこういう限界への挑戦なのだ
こんな風に達観してみると、本日のマラソンは実に見ごたえのある、感動的なドラマであり、ここ近年のスピードを競う単なるレースよりは、余程オリンピックらしく見えた。
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マラソン2連覇をしたケニアのキプチョゲ選手は、走り終わってから、BBCに以下のように答えたという。一部を抜粋して残しておきたい:
"Tokyo 2020 has happened, it means a lot. It means there is hope. It means we are on the right track to a normal life," he told BBC Sport. "We are on the track to our normal lives, that is the meaning of the Olympics.
"I am happy to defend my title and to show the next generation, if you respect the sport and be disciplined you can accomplish your assignment."
URL: https://www.bbc.com/sport/olympics/58132919
Source: BBC, Dates: 23 July-8 August Time in Tokyo: BST +8
《希望》ですか・・・そして《日常への復帰》、"On the right track"、《この方向でよい》と。《次の世代》を眺めれば、こんな魂になるのであろう・・・
五輪を開催することの意義が見いだせないと、日本国内では「五輪懐疑派」がずっと優勢であったが、ワクチン接種が進む中、コロナ感染防止のほかにも世界にとって意義のあることがある。そう伝わってくるのも事実だ。
それにしても、ゴタゴタが山ほどありましたな・・・
この段落、投降後に加筆。
以上、心覚えまでに記す。
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