2021年8月21日土曜日

覚え書き: こんな「報道」はまずいヨ、の一例

コロナワクチン先進国であったイスラエルからこんな報道があったようである:

重症化している人の半数はワクチン2回接種済みである

これをみて

ワクチンなんて役に立たない

そう思ってしまう人が多いのではないだろうか?

が、これは数字のマジック、(フェイクではないが)不適切な報道がもたらすマジックの一例である。

数字例で主旨をメモにしておく。

総人口を5千万人とする。未接種者が(ある一定期間内に)コロナ感染する確率を5%とする。感染した場合に(中等ないし)重症化する確率を20%とする。一方、ワクチン2回接種者がコロナ感染する確率を1%、感染時に(中等ないし)重症化する確率を2%とする。この数字例は非現実的だが、計算のロジックには影響しない。

(1)全ての人がワクチン未接種であるケース

中等・重症患者数の期待値=5千万×0.05×0.20=50万人

(2)全ての人がワクチン2回接種したケース

中等・重症患者数の期待値=5千万×0.01×0.02=1万人

従って、全国民がワクチン2回接種を終えれば、中等・重症患者数は50分の1に減る。

(3)98%の人がワクチン2回接種したケース

ワクチン未接種者で重症化する患者=0.02×5千万×0.05×0.2=1万人

ワクチン2回接種者で重症化する患者=0.98×5千万×0.01×0.02=9800人

(中等ないし)重症患者数=19800人(うち、ワクチン2回接種済者の割合=49%)

上の3ケースの中の、最後のケースだけを数字として報道するだけでは誤解を与えることになり、報道としては不適切であると思う。

仮に、全国民がワクチン未接種であったとすれば、状況はどうなっていたか、それを《標準ケース》とすれば、現在はどの程度のワクチン効果があったと評価できるか。《標準ケース》と《現状》の2ケースを2本の折れ線グラフで表示して、2本の折れ線に挟まれた部分が《ワクチン効果》である、と。接種率を複数仮定して標準ケースと比較シミュレーションしてもよい。

ともかく、こうした伝え方をしなければ、ダメである。

現在、重症化している患者の半数はワクチン2回接種者であるという報道は、それ自体として「フェイクではない」とは言えるが、ほとんど「フェイク」と言ってよいほどの不適切なデータ利用と言える。こうしたデータの使い方は《データ・クッキング》のラベルを付与してもよいだろう。

「報道」と自称する情報については、情報の質を伝えるスコアを横に表示してほしいのだが、いまの「コロナ野戦病院?」と同じで、あれば良いのは勿論だが、それを担当する人がいない。これが問題だ。

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