ロシアによるウクライナ侵攻が発生して以降、欧州内のドイツの立場は「針の筵」というか、先日にはとうとうドイツ大統領シュタインマイヤーのウクライナ訪問をウクライナが断るという出来事まで起きてしまった。政治家シュタインマイヤーが一貫して保持してきた親ロシア思想にそれほどウクライナ側は怒りを持っている、ということでもあるのだが、ドイツ国内ではやはり反発の感情が広がっているようである。が、他の欧州諸国内でドイツに同情する向きは(今のところ)ない。
やはり2,3日前に投稿したように「ドイツ・バッシング」に日本からは見えてしまう。
先日はThe New York Timesに掲載されたKrugmanの寄稿から上のような標題の投稿をしたのだが、同じ主旨の記事は(当然ながら)イギリスにも既にあるわけだ。
例えばThe TelegraphにAmbrose Evans-Pritchardは次のように寄稿している:
It is perhaps unfair to pick on Germany because other EU states hide behind its skirts, all too willing to let the status quo continue. Yet nobody doubts that all Europe would fall into line if Berlin lifted its veto on an embargo.
Nor can one quickly forget that the German finance ministry, though its iron-control of the EU's economic machinery, inflicted an economic depression on southern Europe and Ireland during the eurozone banking crisis from 2008 to 2012, an episode that it framed falsely as a debt crisis and a morality tale of fiscal profligacy.
Source:The Telegraph, 15 April 2022 6:00am
URL:https://www.telegraph.co.uk/business/2022/04/15/olaf-scholz-must-choose-energy-embargo-russia-moral-embargo/
ドイツをイジメルのはフェアではない。というのは、現状を変えたくないと願うのは他国も同じで、それらの国はいま(息をひそめて)ドイツのスカートの陰に隠れているのだ。そのドイツが(覚悟を決めて)禁輸に踏みければ、ヨーロッパは一斉行動をとるだろう。
確かにドイツが悪者になって逆風を一身に受けている。それは英米(それからフランス)の利益に沿っているから、そうなっている。日本は・・・「アメリカの犬」と時々揶揄されるが、ドイツ批判が日本で見られないのは、一つの救いだ。
プリッチャードも上の引用記事で述べているように、かつてギリシア、南欧諸国、アイルランドが経済的苦境、金融的苦境にあるとき、ドイツが示した非常に冷淡な態度が、やはり尾を引いてしまっているわけだ。この目線はクルーグマンとまったく同じ。しかも、そのときギリシアやイタリアが放漫財政を続けていた事実はなく、金融危機の引き金を引いたのは、むしろベンダー・ファイナンス(≒売掛金による信用供与)を突然引き上げたドイツ企業の方であったというのでは、その当時、小賢しくモラルを説教していたドイツに他国が内心の怒りを感じていたとしても、そしてその怒りが今回のドイツの苦境で噴出しているとしても、無理はないだろうというわけだ。
う~む、まさに先日の投稿に書いたが、
情けは人の為ならず
情けは味方、仇は敵なり
は、世界共通に当てはまる鉄則であるようだ。
In any case, the political dam is bursting in Germany. Die Welt captured the exasperated mood of the media, calling Germany’s love affair with Putin’s Russia the “greatest and most dangerous miscalculation in the history of the Federal Republic”.
メルケル外交の破綻というより、20世紀の社民党政権による"Ostpolitik"そのものに戦略的失敗の可能性が含まれていた、そんな評価にまでなるかもしれない瀬戸際ではないだろうか ― 小生はそうは考えていないが。
“We must finally give Ukraine what it needs, and that includes heavy weapons. A complete energy embargo is doable,” said Anton Hofreiter, the Green chairman on Europe. “We are losing the respect of our neighbours on a massive scale. The problem is in the Chancellor’s office.”
もうショルツ独首相の決断のみである。
ドイツ経済界はエネルギー禁輸を非常に懸念している。その懸念にショルツ首相は応じているのである。これに対して、経済専門家は仮にロシア産天然ガスを完全に禁輸しても、今年、来年とドイツ経済は概ね5パーセント程度のマイナス成長に陥るという程度で済むはずだと試算している。ギリシアの金融危機に比べれば「損害軽微」だ、と。
どうやらドイツの最終的決断は間近いようだ。
しかし、エコノミストの経済分析は、様々、多くの前提を置いたうえでのシミュレーションである。それだけではない。シミュレーション計算に使用した統計的な関係式は、これまでのデータから推計されたものである。これまでに採ったことがない政策が実行されたときにどうなるかを予測するためのデータは実はないのだ。人々の行動がどう変容し、企業はどう対応し、敵対国がどんな政策で報復するかというデータは何もない。経済専門家の《予測》とは、大体これまでどおりで反応してくれるならこうなる、という「計算」である。かつて、計量経済学にロバート・ルーカスが加えた批判は、この種のシミュレーションに対してである。つまり、実際に一度も採ったことがない過激な政策を実行した時に、関係国がどのように応じ、その経済的な波及効果がどのように及んでくるかを予測できている経済専門家は一人もいないはずだと、小生は観ている。
ま、『それしかもう手がない』と本当にそう思うのであれば、やってみるしかないだろう、と言うしかない。かつて日本もそう考えて、シンガポール攻略、真珠湾奇襲を計画決定したわけだ。
手がない以上、するならするで仕方がないのだろうが、この間の進展はいかにも《3流政治家》ならやりそうな事だと、未来の歴史家なら語りそうだ 🤷♂
0 件のコメント:
コメントを投稿