2023年3月11日土曜日

ホンノ一言: とうとう銀行破綻が出てしまったインフレ抑制策

アメリカ西海岸に本拠をもつ大規模金融機関"Silicon Valley Bank (SVB)"がFRBの攻撃的金利引き上げ政策の中で、突然、経営破綻した。

SVB catered mainly to the insular ecosystem of startups and the investors that fund them. Its deposits boomed alongside the tech industry, rising 86% in 2021 to $\$$189 billion and peaking at $\$$198 billion a quarter later. The bank poured large amounts of the deposits into U.S. Treasurys and other government-sponsored debt securities.

Tech tumbled after the Federal Reserve began raising rates last year to curb inflation. Startups, as a result, drained their deposits with SVB faster than the bank expected. And new investment stalled, meaning fresh money wasn’t coming into the bank. 

Rising interest rates, meanwhile, dented the value of SVB’s massive bond portfolio. The bank needed fresh capital.

Source:Wall Street Journal,  March 10, 2023 6:33 pm ET

Author: Rachel Louise, Corrie Driebusch and Meghan Bobrowsky

URL: https://www.wsj.com/articles/svb-financial-pulls-capital-raise-explores-alternatives-including-possible-sale-sources-say-11de7522

同銀行はシリコンバレーのスタートアップ企業に金融サービスを提供していた。スタートアップ企業は、ベンチャー資本だけではなく負債で多くの資金を得ているので、金利引き上げは経営の足を引っ張る。そこでSVBから多額の資金を引き出した。他方、SVBは財務省が発行する国債で多額の運用を行っていた。その国債の市場価格が急速な金利引き上げによって暴落した。流動性危機に陥った同銀行は資本市場からマネーを調達しようとしたが不安に駆られた顧客が取り付けに殺到したので間に合わなかった。大略、そんな顛末であるようだ。


大規模な金融機関の経営破綻でニューヨーク株式市場には激震が走り銀行株は暴落した。金融不安が全米に拡大すると極めて危険な状況になる。まさか、こんな風になるとはネエ・・・とは言えない。予測できたことである。


インフレ抑え込みに金利を引き上げるのは確かに効果があるが、賃金上昇が伴っているホームメイド・インフレが進行中であれば、マクロ経済に与える犠牲も大きい。

今回のインフレは労働市場の引き締まりからもたらされる賃金上昇が主因の一つだというがその雇用状況引き締まりの原因は、労働需要の過大というより、労働供給がコロナ禍の後、減少している点にあることを無視できない。

つまりサプライサイドに原因がある以上、金利引き上げによる総需要抑制は政策選択としては賢明ではない。スティグリッツが主張するように、財政支出の削減を検討するべきだろう。財政支出削減と同規模の減税を行えば痛みの少ない総需要抑制策になる。かつてニクソン政権が断行した(そして必ずしも成功しなかった)賃金引上げガイドラインなど所得政策も選択肢の中には入るだろう。

今回の銀行破綻は、(巨額のウクライナ軍事支援という事情もあるが)財政拡大下で強行しようとしているインフレ抑制がひき起こした荒っぽい《クラウディング・アウト》であると考えられる。


それにしても金利引き上げに伴う国債価格暴落による銀行破綻。今後の日本にとっても他人事ではない。十分、起こりうる事態である。恐ろしい話である。

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