いつの頃からかメールマガジンの<まぐまぐ>が届くようになっているのだが、今日案内が届いた記事の中に
ここにも竹中平蔵の悪影響。京大教授が懸念する「テロ多発国家」に成り下がった日本の現状
こんなタイトルが含まれていたので、ビックリ仰天。
大体、一人の人物が日本国の現状を変えることが可能なら、竹中氏を上回る権力を把握する総理大臣ならとっくの昔に日本を成長軌道に戻せているはずであろう。竹中氏にはそれほど多くの部下は与えられていなかった。岸田首相には60万人の国家公務員が部下として従っている。一人の竹中氏が日本社会を変えられたのなら、岸田首相なら社会を正しい状態にたやすく戻せる理屈だ。だから何も心配することはないという結論になる。
まったくネエ…言論テロですぜ、これは。名誉棄損ものだと思いました。 こうした御仁が自由に発言している世相と、不満のはけ口に殺傷器具を自作して勝手に行動する青年が現れる世相と、根は一つであると思う。
「自由」というのは、こんなところで発露されては困るわけだ。困った日本社会がますます
原則規制。例外自由。
そうして、限られた分野のみ自由、あとはお上の許可を要する。こんな社会にますます向かっていくのじゃあないかと憂慮に堪えない。建て前のイデオロギーは異なれど、実質は中国社会と似て来るに違いない。
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今朝も朝食をとりながらカミさんとこんな話をした。
小生: 普通にまっとうに仕事をしていれば、普通の人生を送れて、好きな人と結婚して、子供が生まれて、普通の幸せを感じて生きて行けるならサ、何も特殊詐欺に協力するとか、まして自らテロ行為をして社会に抗議するとか、そんな願望は抱かないと思うんだよネ。危ない行為に打って出るのは、「やむにやまれず」そうするしかない世相があるからだろ。だとすると、時代が悪いというより、そんな時代をもたらして来た政治が悪いってことなんだろうネエ……
カミさん: うちの息子だって普通にやってるヨ、不満があるからって世間のせいにしちゃいけないでしょ?
小生: 結婚してないだろ。まあ、あれが結婚して一家の責任を持つっていうと、かえって大丈夫かと不安だけどね。だけど、まっとうに生きてもらえるのは、カツカツの給料、サッパリ上がらない手取りじゃ、希望も何もないだろうサ。
カミさん: そうねえ…
小生: 小泉内閣の頃にね、タクシー開業をほぼ完全に自由化したことがあるんだよ。自由にタクシー営業を始めても可とね、自由化の一環だったんだ。だけどね、全国のタクシー会社が猛反対を繰り広げてね、『我々の生活を奪うのか!』ってね、それで民主党政権、というより安倍政権になってから「タクシー減車法」が成立してね、元の木阿弥になったんだ。もしそんな愚かなことをしなければ、供給過剰になったタクシー会社からドライバーが減って、人出不足の傾向が高まった運送業界に移って、クロネコや佐川さんが直面している人出不足は違った状況になっていただろうね。タクシー代は自由化で低下、ドライバーは輸送業界に移動。スムーズに解決できていたと思うよ。今はその正反対。タクシー代は高止まり、運送業界には人が流れず、人出不足で雪隠詰め。社会は変われなかっただろ?
カミさん: 子供達にも「自由にやれっ!」て言ってきたからね(笑)
小生: 僕たちが暮らしているこの町にも、子育てが終わった奥さんたち、一杯いるだろ?君のママ友たちもそうだよね。まだまだ元気なお婆ちゃんも冬は雪かきに汗を流しているしね。こんな「ママ友シニア」が10人位集まってサ、「子育て支援サークル」を結成して市役所に届けるんだヨ。原則自由に承認してあげて、あとはメンバーの名前や写真、それにサークルへの連絡先を市のホームぺージで公開してサ、で後は子供を預かってほしい若いママたちはそのページをみてオンラインで予約する。こんな具合に、普通の人の善意を役に立つビジネスにできれば、みんなウィンウィンで助かる人は多いんだよね。だけど、いまこういう事はできない。何故かというと保育所が困るからだよ。で、その保育所に預けようとすると、数が足りない。数が足りないから料金が上がって、保育士の給料も上がるかと思いきや、国がそれを抑えている。上がると国民が困るっていう訳さ。だけど、国民が困る規制を守っているのは当の国なんだよね。
カミさん: ママ友シニアのサークル活動はいいかもね。
小生: いまEUの委員長をしているフォン・デア・ライエンって人がいるんだけどネ。彼女が忙しい仕事をこなしながら、7人の子供を育てたのは、何人かの若いママたちと協力し合ったからなんだよね。あのドイツにあっても《独立独歩》、《独立自尊》。ドイツには保育所が十分な数だけ整備されていたからこそ出来たのでしょうと、そんな因循かつ消極的な思考パターンとは無縁さ。これって、ママ友シニアの子育て支援サークルとは違うけどさ、発想が似ていると思わない?
カミさん: ヤル気のある人は自由にやるってこと?
小生: 前からずっと言っている事さ。若い人が「これで稼ごう」と思うことがあれば、何でも認めてあげればいいと思うよ。それじゃ、今の事業者が困るでしょ、なんて国が口を出すのが一番悪い事なのさ。もちろん「犯罪行為」はあらかじめ法律で決めておかないといけないけど、原則は自由にしなきゃ、普通の人が生きて行けないヨ。《原則自由、例外規制》サ。いまはその反対に向かいつつあるネ。
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こんな話をしたが、文字通り「今日も又」、であって、この20年近く同じ話をずっとしてきたような気がする。
今回の和歌山市雑賀崎で起きた爆弾テロの犯人が主張しているような『衆議院の被選挙権25歳以上、参議院の被選挙権30歳以上」という制限は、それ自体が違憲であるとは思わないが、日本国内に多数ある職業資格、開業規制は、職業選択の自由を実質的に侵していると思っている。《所得機会》を自由に追求する権利は《幸福追求の権利》にもつながる基本的人権の一つである。
自由を制限することが日本社会の幸福につながると思考するようなら、そもそも理念自体が現行憲法 ― アメリカの理念に沿って草案が書かれたものだが ― それに基本的に違反していると思われるのだ、な。
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マア、日本は集団的自衛権容認と(戦争を想定し?)敵基地攻撃を明記した安保関連三文書の閣議決定で、既に現行憲法を骨抜きにしていく選択をしている。いまさら「〇〇は憲法の理念に反している」と指摘するとしても、法学上の議論ならともかく、実質的な意味合いはほとんどない。
後世代が前世代の意識や意図、目的をリスペクトする気持ちを失った時点で、初めの憲法は時の流れの中で影を薄くし、次第にフェイドアウトし始める。本当は憲法の規定に沿って改正し、公正な形で継承していくのが、国としては誠実な行動だが、それとは反対に外観は同じままで中身を換骨奪胎して実質をアップデートするという日本的政治スタイルは、古くは律令体制の下で進んだ平安時代の「摂関政治」、後にそれを覆した「院政」、近くは戦前期の「大政翼賛会」からも窺うことができる。
【加筆】2023-04-20