2023年7月5日水曜日

ホンノ一言: 「今のネット ≒ 昔のスポーツ紙」の証拠?

今となっては昔、というとまるで『今昔物語』であるが、中国との交流が目立った奈良時代に比べると、その後の平安時代は唐王朝の衰退、滅亡、朝鮮半島の新羅滅亡という国際環境の激変もあって、それまでの開放体制への反動が進んだ。政体としては天皇絶対から臣下・藤原氏が実権を握る摂関政治へと変容したのが平安時代であり、そこで花を開いたのが所謂「国風文化」である。

外国に対して開放的で良いモノをとり入れようとする時代と、国内事情を優先して閉鎖的になる時代と、交互に激しく振れ動くというのが日本という島国のお国柄である。

だから「今は昔」という枕詞が時代の移り変りと世相の変化を伝えるのに非常に効果的なのである。

今は昔、電車で通勤している車中では、あの人もこの人も新聞を広げて読んでいたものだ。立っている人も、紙面を4分の1にたたんで頑張って読んでいた。勉強というより、暇つぶしであったのだ、な。今は、新聞の代わりにスマホを視ている人がほとんどだ。

ところが、昔の電車の中で読まれていた新聞はというと、確かに朝・毎・読の大手、日経、産経もあったが、多くの人はスポーツ紙を読んでいたものだ。「スポニチ」、「報知」、「日刊スポーツ」といった辺りで、これらの新聞は今もなお続いているが、記事を掲載する媒体は紙からネットへと経営の軸足を移しつつあるようだ。

ネットをみていて「オッ!」と目を引くヘッドラインがあると、それは上のどれかのスポーツ紙の記事であったりする。

最近も投稿したが、昔のスポーツ紙が果たしていた役割と、いまネット記事が果たしつつある役割は、ほとんど同じではないか。そう感じているのだ。

そして、いま民放テレビ局の稼ぎ頭(?)になったワイドショーもどこか昔のスポーツ紙を思わせるような編集スタイルになりつつある。

いや、ワイドショーの話しは本題ではない。

実はこんな記事があった。

政府が来年度予算を編成する前に決定する《骨太の方針》という文書についてである。このネーミングが「古い」というのが主旨で、ま、それだけの事でもある。

ちょっと長くなるが引用してみよう。まず質問がある:

・・・そもそもこの「骨太の方針」とはいったい、どういうものなのでしょうか?(20代・男性・会社員)

これに対して

 そもそも今から22年前に始まったものですから、若い人にはピンと来ないネーミングですよね。その通称を惰性で使い続けているから、こういう質問が出るのです。

 正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」といいます。小泉純一郎内閣時代の2001年度に始まりました。それまでの政府の方針は、霞が関の各官庁がバラバラに立案しているという批判があったことから、小泉内閣の前の森喜朗内閣時代に「官邸主導」を示すために首相が議長を務める「経済財政諮問会議」を設立し、翌年度の予算編成の方向性を示すことになりました。

 毎年6月に方針を作り、各省庁は、この方針にもとづいて夏頃に予算案を策定することになっています。

 この会議ができた当初、かつて総理大臣まで務めた宮澤喜一氏が異例の財務大臣に就任していて、この方針のことを「骨太」と自画自賛したことから「骨太の方針」という通称が誕生しました。

 政府の自画自賛の通称を漫然と使い続けていていいのか、という批判も出そうですね。

URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/3324e470db35a79b22c3b7e03f20186a8ece5323 

今日のYahoo!ニュースである。

これを読んで小生は思わず「ンっ!」と声が出てしまいました。「違和感がある」というヤツです。 何だか森内閣が勝手に「経済財政諮問会議」なる会議を設け、自分が議長になった、と(森さんならやりそうだ?)。そして時の宮沢財務相が「経済財政運営と改革の基本方針」のことを「骨太の方針」と呼んだことから今に至る、と(宮沢さんなら言いそうだ?)。

何だか森首相と宮沢財務相が勝手にやったことだ、と。そんな風にも読めてしまう。が、上の回答の仕方は完全な(ほぼ完全なという方がフェアかもしれませんが)間違いであるのだ、な。

疑問があれば、本式に調べる前に先ずはWikipediaで検索するとよい。Wikipediaは必ずしも公式にオーソライズされてはいないが、信頼度については

先月のIPO以来、新ビリオネアとしてアメリカで話題になっているルミナー社(自律走行車のセンサー開発)の25歳CEO、オースティン・ラッセル氏も「自分の知識はウィキペディアとユーチューブから」と発言するなど、デジタルネイティブのZ世代には、情報を獲得するにあたり、ひじょうに大きな存在となっている。

ウィキペディアも「信頼できる情報源」を目指し、開始以来さまざまな改良を重ねてきた。その結果、誕生から20年にして「オンライン上で最も安全な場所として認められつつある」とワシントンポスト紙が報じた。

 URL:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/01/20-83.php

2021年1月21日時点のNewsweek記事である。こんな総括があるわけで、どう評価するかは人それぞれではあるが、総じていうと営利企業である「マスメディア」よりは信頼されているのではないかという感触を小生はもっている。

そのWikipediaで<経済財政諮問会議>を検索すると、

経済財政諮問会議(けいざいざいせいしもんかいぎ、英語: Council on Economic and Fiscal Policy)は、日本の内閣府に設置されている「重要政策に関する会議」の一つである。設置根拠は内閣府設置法第18条。内閣総理大臣の諮問を受けて、経済財政政策に関する重要事項について調査審議する。橋本行革による2001年1月の中央省庁再編によって設置された。モデルは米国の経済諮問委員会。

橋本龍太郎内閣による《橋本行革》の一環として設けられたとチャンと説明されている。ちなみに、この経済財政諮問会議の事務局になったのが、『経済白書』、『月例経済報告』などを通して景気判断、経済分析を公表してきた「経済企画庁」という官庁で、橋本行革を機に組織としては閉鎖された ― 機能は一部分、たとえば「白書」、「経済報告」、「GDP統計」、「景気動向指数」などは新組織の中に継承されているが。

森内閣の時に出来たという説明は、偶々そんなめぐり合わせになったということでしょう、と。偶然ですヨ、偶然。そんな突っ込みがあって可笑しくはない。

それで、「骨太の方針」と言ったのは宮澤喜一財務相だというのは、正直、よく調べましたネエ。私は知りませんでしたヨという印象なのだが、その名称をまだ使っているのは、これぞ正に官僚の前例墨守主義でありんしょう。そう感じる次第。枝葉末節です。


『どのスポーツ紙だ、こんな説明を書くのは?」と思ったら、「文春」であった。

吃驚したが、「やっぱりネエ」という感覚もある。今は文春が昔のスポーツ紙の役割を担いつつあるのか……、となると

どうやら『文春』が出す記事も

ホント半分、ウソ半分

そんな気構えで読む方が安全なようである。


今日は別の話題、森鴎外の『奈良五十首』についてメモを書こうと思っていたが、たまたま上の記事が目に入ったので、予定変更、今日の標題にした次第。

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