ドラマ『ミステリーというなかれ』が再放送されているので録画している ― 第1回と第2回を見逃していたので非常に有難いのだ。ところが今日(7日)の午後、第12回が放送される予定であったところが録画されていなかったので何か機械的な不具合が起こったのかと思った。理由は、ジャニーズ事務所の記者会見があったからで、テレ東を除く全民放がそれを中継した。
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記者会見を視る程の関心は持っていないが、今回の火付け役となったBBCの報道は読んだ。要所を引用しておこう:
The boss of Japan's biggest pop talent agency has resigned after finally admitting the sexual abuse committed by its late founder, Johnny Kitagawa.
... ...
Rumours and some media reports of his abuse had been known for years, but no concrete action was taken. For decades, most mainstream Japanese media also did not cover the allegations, prompting accusations of an industry cover-up.
Source: BBC
Date: 2023-09-07
Reporter: Shaimaa Khalil, Tokyo correspondent
URL: https://www.bbc.com/news/world-asia-66737052
上の文中の"most mainstream Japanese media also did not cover the allegations, prompting accusations of an industry cover-up."は、「業界ぐるみの隠蔽(an industry cover-up)」と断じているのだから、日本国内のメディア大手には耳の痛い指摘で、おそらく『またそれを言うのか!』といった心境かもしれない。
ただ、本文の"sexual abuse"は日本語で「性加害」というニュアンスに近いとは思うのだが、実は上の記事のヘッドラインはもっと強烈で"predator's abuse"と表現している。
昨晩のニュース解説では「性の捕食者」などと和訳していたが、これも生温い訳し方だと思う。マイケル・クライトンの小説『ジュラシック・パーク』を読んだ人ならば記憶していると思うが、終盤になって確かハモンド博士(だったと思う)が小型恐竜ラプトルに捕食されてしまう場面は衝撃的だ。あのラプトルは代表的な"Predator"である。今は恐竜は絶滅しているので、Predatorは「捕食者」よりは「獣(けもの)」とでも言う方がピンと来るはずだ。『弱い獲物を食らう』、英語ではそんなニュアンスだ。
だから今回のジャニーズで起きた長期間の不逞行為は、「獣(ケモノ)のような児童虐待」というか、マア、それほどの強烈なニュアンスでもって英語世界では報道されているわけで、海外のほとんどの人は英語による報道で情報を得ている点がキーポイントだと思う。
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記者会見は視なかったが、夜のニュース解説はみた。
「蛮行」という名詞があるが、これを「鬼畜の所業」と言えば更に暗い。これと同じ言葉を東山新社長だったか、記者会見で口にしていた。
それもあってか、
ジャニーズ事務所の創業者・ジャニー喜多川氏による性加害問題を受け、損害保険大手の「東京海上日動火災保険」はジャニーズ事務所との広告契約を更新しないことを決めました。また、現在の広告契約についても解除を検討しています。
Source:Youtube、9月7日
Original:TBS NEWS DIG Powered by JNN
早速、企業側がジャニーズ事案に素早く対応していることが分かる。
メガ企業は世界でビジネスを展開しているので、日本語空間ではなく、英語空間でビジネス判断の適否を判断する(ことを迫られる)。この後、日本航空も同様の判断をしたというニュースが流れたが、追随する大企業がまだ続く可能性が高い。
必要な最重要な感覚は《国際感覚》なのだろう。今後の進展も日本的感覚ではなく世界の(というより英米の?)感覚が主導する形で進むに違いない。そもそも今回の事案は、今年の春にBBCが報道したことから日本社会が公式に認知するに至ったものである。
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芸能界、TV業界は、スポンサーの支持なくしてビジネスを展開することは不可能だ。今後、日本武道館や東京ドームを貸し切りにする程の大規模な企画をするなどは、施設側の国際的イメージ戦略もあって、難しくなるかもしれない。スポンサーがつかない可能性もある。
一体何を収益源としてエンターテインメント・ビジネスを展開していくのだろう。
英国・BBCは今後将来ともフォローするに違いなく、国内メディアを「手なづければ」何とかなるとも思えない。前途は極めて厳しい。
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それより今回の事案で信頼が失墜したのは当事者のジャニーズ事務所もそうだが、むしろ日本の(週刊文春を除く?)大手メディアだろう。打撃の大きさは測り知れない。
既にBBCは日本語でもニュース配信を行っている。これを公共の電波に乗せて国内放送も行い売上収入を増やす動機は当然もっているだろう。CSやAmazon Primeなら既に日本で視聴できる。ここで更に、TPPに加入したイギリスがもしも日本国内でBBCによる地デジ放送を認可するよう求めてくるとすれば、日本政府はどんな反応をするのだろう?
もしそうなれば、多分、中央省庁の記者クラブにもBBCが入ってくる。BBCが入れば、ロイターやアメリカのCNNも入れろというだろう。ジャニーズ事案に対する国内メディアの永年の行動振りを見ると、メディアが実践するべきジャーナリズムとかけ離れているのは明白である。となれば、「メディア=ジャーナリズム」という前提の下で運営されてきた日本独特の<記者クラブ制>もそろそろ公益にはそわなくなったと言うべきなのだろう。日本国内の大手メディアは自らのミッションを達成できる力量をもっていない。これが証明されてしまったのは余りにも大きな打撃だ。
実際、最近目に余るのだが、「報道官」を配置していない各省庁の《報道官モドキ》の役回りを各メディアの報道記者が演じる風景を見ていると
公益 ≠ 政府の利益
この出発点を何度も強調したくなる。
いま日本社会を真っ当なあり方に戻すことが出来るモメンタムは、外国メディアが日本国内で活動することかもしれない。
BBCやロイターやCNNはどんな意味で報道機関なのか?
誰のための報道機関なのか?
ジャーナリズムがもたらす公益があるなら、それは何なのか?
ジャーナリズムを目指しながらイエロー・ジャーナリズムを実践していることはないか?
これらにどう回答するかは、アスリートに対する「フェアプレーとは何か」という問いかけにも似て、全ての報道機関に常に突き付けられている課題である。
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