2023年9月24日日曜日

ホンノ一言: ウクライナ戦争とクリミア半島

ロシア=ウクライナ戦争は長期化するとの見通しが出てくる中、ロシアもウクライナも《戦争経済》をいかにして運営するかで頭を悩ましていると伝えられている。

黒海経由の小麦輸出を封じられたウクライナは陸路でヨーロッパに輸出をしているものの、ポーランド、ハンガリーなどは自国農家を守るためにウクライナ産小麦に禁輸措置を講じている。それをゼレンスキー大統領が国連総会で非難し、その発言にポーランドが反発している。ウクライナも経済運営で瀬戸際であるはずだ。

ロシアの戦争経済については、少し前に投稿した。軍需品生産に資源を集中しながら国民に耐乏生活を強要しないためには消費財輸入を拡大するしかないという理屈になり、中国がそれに応じているという現状がデータからは確認できるわけだ。


経済的苦境もあるためか、いま足元では、ウクライナによるクリミア半島攻撃が激しくなっている。ウクライナのクリミア半島へのこだわりは相当なものである。黒海ルートを開放するのが直接的目的ではあるのだろうが、もっと本質的なところではロシアにクリミア半島領有を諦めさせたいのかもしれない。そしてロシア海軍の代わりにウクライナ海軍を置きたいのかもしれない。そうすれば、ウクライナはトルコと協調して中東、東地中海全域に影響を与えうる地域大国になれるポテンシャルを持っている。


しかし、クリミア半島領有については前にも投稿したことがあるが、ロシアが諦める確率は低い。例えば、<クリミア半島>でブログ内検索をかけた結果を見よ。ロシアによるクリミア半島領有については、それなりの正統性"legitimacy"があると考えるのは、決して少数派ではないと思っている。

であるので、ウクライナによる攻撃がクリミア半島領有に執着しているからだとロシアに映れば、ロシアにはウクライナによる「侵略」と映るはずで、国防の意味からも「核兵器使用」を正当化する動機を形成させるだろう。仮にロシアがそう考えるとして、

それはおかしいでしょう。先に手を出したのはあなたですゼ、それは侵略じゃあないんですかい?

これが常識なのであるが、そもそも戦争当事国に常識を問うたところで通るものではございませぬ。 限定戦争から全面戦争に移行する契機は、どんな小さなことでもよいのである。


もしもロシアがクリミア半島攻撃を続けるウクライナに対して(ある種のシグナルが出された後にはなるだろうが)核兵器を(限定的にか警告的にか)使用する場合、ゼレンスキー・ウ大統領はロシアに対する核報復をアメリカ政府に要求する確率が高い。

アメリカ政府に要求することは西欧全体を含むNATOに要求することと同じであるから、その要求は拒否されるはずである。

しかし、既に多大な犠牲をウ国内で払った現状の下ではゼレンスキー大統領も妥協する余地が乏しい。故に、クリミア半島攻撃を続行する動機をもつ。NATOが核報復を拒否した状況の下で、ウクライナが「侵略行為」を続ければ、ロシアはウクライナに本格的な核攻撃を行う誘因が形成されるだろう。


戦争には戦争のロジックがある。

上のようになる前に停戦を促すべきだろう。

一般的な意味で侵略行為を抑止することは大事だ。しかし、何をもって「侵略」と判定するかに世界共通の定義は確立されてはいないし、文言上の定義があるとしても一方の側に「それは侵略だ」と解釈されれば、それは侵略として作用してしまうのだ。

大体、一口に侵略と言っても、「安全保障上の侵略」、「軍事侵略」、「経済的侵略」、「思想的侵略」、「文化的侵略」と、多くの次元がある。そして、全ての侵略は否定されるべきだという理念はない。つまり、ある種の侵略は容認されている。しかし、他国によるいかなる侵略も許さないと考える国家も多いであろう。何をもって「侵略」と解釈されるかは、ケース・バイ・ケースで不確定であるのが現実だ。

侵略抑止という高尚な目的には賛同するが、予測される"disaster"を回避する責任も政治家にはある。

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