2024年1月21日日曜日

断想: 昔の超長期予測を再び振り返ると

 「経済予測」という土俵で仕事をしてきたので、このブログでも短期、中期、長期のスパンで、その時々の気分次第、色々な予測を書いて来た。

ずっと前に「超長期予測」という標題で投稿したこともあるので、時々、それを振り返るという作業を勝手に面白がっている。前回に回顧したのは日付をみると2018年3月になっている。あれから6年が経とうとしている……実に、歳月怱々である。

今後5年間で大きなポイントになるはずのエネルギー関係項目に限定して、今日現在でその後の進展をフォローアップしておきたい。


  1. 大震災復興総合計画ができるのではないか: これは既に始まっている。復興庁なるものが出来るかどうかは(ほぼ実現するだろうが)不確定だが。 ⇒ 被災した県や市町村では「復興計画」が策定されたが、国レベルで「総合計画」があるとは聞いたことがない。検索しても出ては来ない ― こんな報告もある。再編成前の体制なら調整官庁である国土庁が復興総合計画をまとめていたに違いない。
  2. 日本のエネルギー計画は根本的な曲がり角を迎える: これも管首相が昨日サルコジ大統領を迎えて記者会見でも表明した。原発のゼロベース見直しは避けられない。 ⇒ 岸田首相は原発再稼働、最先端原発新設(検討?)に一歩踏み込んでいるが、社会の合意にはまだまだ。
  3. 国土利用計画も並行して根本的な曲がり角を迎える: まだ俎上には上がっていないが、エネルギー計画を見直す以上、首都圏、近畿圏など各地域のエネルギー需給バランスの前提が崩れる。見直し不可避。方向としては1980年代末のバブル景気以前まで主流だった考え方<定住圏構想>が復活すると予想している。 ⇒ 少子高齢化が加速し、足元では「過疎地切れ捨て論」に分類される意見も登場してきている。大震災以降のエネルギー制約が今後の日本経済の成長を抑えるのではないかとすら個人的には思っている。
  4. 経済産業省から原発管理行政を分離する: これも菅首相が既に表明している。銀行経営破綻で大蔵省から金融庁が分離したのと同じ論理だ。ただしエネルギー計画見直しをどこが主務官庁として取り組むことになるか、これはまだ分からない。復興庁ではない。 ⇒ 原子力規制委員会が環境省の外局として設置された。但し、エネルギー計画は経済産業省が所管しており省庁間調整が難しいに違いない。
  5. 東京電力国有化: 債務超過になると予想する。国有化という手段に限定はされず、先日のアドバルーン後に早くも迷走し始めている模様だが、どちらにしても現行の株式会社組織は資金的に滅亡したと判断するべきだ。近日うちに政府は基本方針を公表する状況に追い込まれると予想しておく。 ⇒ これは国有化で決着。但し、今後の経営見通しは五里霧中ではないだろうか。
  6. 原子力発電の全国統合化、(多分)公的企業とする: リスクに対応するために必要な保険料コストを計上すると(発電規模にもよるが)原発事業は民間企業になじまない可能性が高い。新エネルギー計画で検討されることは必至。まだ議論は表面化していない。 ⇒ 発想すらないのでは?言い出す人は相当のリスクを負うはず。
  7. 原発事業にともなう保証債務発生リスクと保険制度の見直し: これは国内に既にあるが拡充が不可避。ただ原発事業統合の行方とも関係する。 ⇒ 再稼働、事業継続の合理性、国内エネルギー供給における位置付けが曖昧なままである。
  8. 原発保険制度を金融パニックを回避する国際通貨基金制度と類似の制度としてセットアップ: 必要になる。その場合、原子力利用の知識集積状況からフランス、US、ロシア、保険ビジネス技術からUK、USの人材が集められ、日本はお呼びではないだろう。最多の原発新設候補国(ならびに最大リスク国?)として中国が入れば、現国連安全保障理事会常任理事国と同じ構成になる。 ⇒ 世界レベルで原発再稼働、新設増加の流れにあるのは確実。故に、原発リスク評価、リスクをカバーする保険を拡充するため国際的連携が不可欠のはずだが、この分野で進展はないのではないか。少なくとも報道を見たことはない。今は、ロシア=ウクライナ戦争、イスラエル=ハマス紛争、インフレ対応で各国とも余裕がないと思われる。


どうも最初に書いた「超長期予測」は個人的な希望、というか願望に近いものだった。地方分権と言えば「モノも言いよう」だが、中央官庁の弱体化を思わせるこの13年間である。

折しも、戦後日本の政党政治そのものの信頼が崩れつつある。昨年は、戦後日本の世論形成の基盤になって来た国内メディアが、いかに人権を軽視し、ビジネスの都合を優先する体質であったかが露見した一年であった。

メディアの無責任が露見し、次に政党の腐敗が露見した。能登半島大震災では泥だらけになりながら身体を張って救助を続けている自衛官の姿が放送されている。

色々な事実が視える化されている。
何らかの社会的リアクションがあるものと予想するべきだ。

戦前期・日本で最初の普通選挙が実施された昭和3年(1928年)から、政党出身の最後の首相になった犬養毅が陸海軍の青年将校に暗殺された5.15事件までの4年間。約100年前のその4年間と似た世相に段々となってきている。

アメリカでは共和党支持層と民主党支持層がそれぞれ概ね3割程度、無党派層は大体40%程度に分かれているそうだ。一方、時事通信の世論調査によれば「支持政党なし」と回答する人の割合が70%弱。無党派層は足元で3人に2人を占めている。何が起こっても日本社会に受け入れられる状況が生まれつつある。

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