2か月前だったか、アメリカの失業率が4.3%という3年ぶりの高さに達し、米経済の行方に暗雲が立ち込めてきたと報道されていた。ちょうどその頃、東京市場の株価もBlack Mondayを超える過去最大の暴落劇を演じて、世界経済、日本経済の先行きに不安感が増したものであった。記録しておくべきだと思い本ブログにも投稿した。
それから2カ月たって昨日になると、今度はアメリカの失業率が低下、雇用者数の増加も市場予想を上回ったというので、日経辺りは「粘り腰の米雇用」と報道している。
ヤレ、ヤレ……、これでは「本日の株価は前日比で2日連続の上昇となり市場は明るさを取り戻しています」といった風のノー天気な株価中継と同じではないかと感じた次第。
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トレンドをみてみよう。
まず雇用者数の増加だが、
URL: https://shigeru-nishiyama.shinyapps.io/us_main_economic_indicators/
確かに足元で上がってはいるが、この位の上振れは低下トレンドを続けてきたこれまでの期間中にあったことであり、一過性のノイズかもしれない。
次に、失業率だが、
これも最近の上昇トレンドから低下トレンドへと局面が転換したとは言えない程度のものだ。
そもそも「粘り腰の雇用市場」とは、ピークアウト間近しとみられる中で、高水準安定が続く状態を指して言う形容詞だ。今は、景気底割れが懸念される中で「何とか低位安定」を続けている状況だろう。これを「粘り腰」と言うか?いずれ景気後退あるべしと予見を抱きつつ書いていないか?景気悲観派なら「粘っている」が結局は土俵を割るだろうと考える。小生なら「底打ちの兆しか?」と書きたいところだ。
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それより日本経済との関係で言えば、最近の為替レートの動きの変化には注意を払うべきだ。
円ドルレートをグラフに描くと
最近になってから極めてボラティリティが拡大している。
一方、ドル対ユーロ相場は
このようにボラティリティの拡大はみられず、ドル・ユーロ市場は安定している。
日銀の金融政策は金利引き上げ局面にはあるが、急激な政策変更を志向しているわけではない。しかるに、ドル対ユーロに比べて、円対ドル相場が不安定化しているのは、日本経済の側で不確実性が増している、と。予測しがたい要素が増えている、と。少なくとも海外の経済専門家、投資家は日本をそう観ているからだと推測できる。
簡単に言えば、日本経済に対する信頼が以前よりは相当落ちてきている。1ドル150円を大きく超えて円安が進んだことが、どうやらレジーム・スイッチを引き起こした。そんな理解でイイのだろうと思っている。
日本はいまだに低金利国だ。その低金利国の通貨価値がボラタイルになってきているなら、日本はハイリスク・ローリターンということになる。このままでは対日・国内投資が増える理屈はないのではないか。
低金利を強制(?)している低生産性企業を清算して、限られた労働と資本を高成長分野へ再配分するべきだ、と。そのためには制度改革、産業政策変更、短期的な倒産増加をいとわず、と。いずれこんな政策フレームを主張する人の声が勢いを増すのではないか ― 誰が言うかは分かりませぬが。「周回遅れ」で、かつ日本社会では極めて困難であるものの、期待をこめて、そう予想しております。
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アメリカ経済については、何度も投稿しているように、景気底割れの懸念は少ないと思われる。
実際、景気先行性のある指標(の一つ)である長短金利スプレッドをみると、
スプレッドはこれまでの負値から正値をとり始めており、景気は既にボトムアウトしたのではないか、つまり
米経済はインフレ抑制を完了し、ソフト・ランディングに成功した
こう判断しても良いのではないかと観ているところだ。
日本のメディアが心配するならアメリカ経済ではなく日本経済の方だろう
こう思います。
【加筆修正:2024-10-06】
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