2011年5月21日土曜日

おすすめリンク集(5/21)

今週は重要な経済データが公表されたし、昨日は東電の経営陣刷新などもあった。政府は相変わらずの迷走ぶりで経済音痴ぶり(それとも分かっていてやっている高等戦術か?)。ともかくも整理するべき情報には困らない。

何もない平和な日は戻ってこないのか。
まずは記事というよりデータを挙げておきたい。データと言えば次です。

まず日本経済のバイタルサイン
今年1~3月のGDP速報結果
は要確認。財布に入ったお金を表す名目の数字も大事だが、売れた数量を表す実質がもっと大事なデータだ。雇用、仕事の数、国民の平均的生活水準は(とりあえずは)実質GDPの高さで把握できるからだ。それが1~3月は前の10~12月に比べてマイナス0.9%の減少。マイナス自体は<想定内>です。自粛で心配された消費支出だが、1~3月は前の期と大体同じマイナス0.6%。むしろ4~6月に消費の落ち込みは現れるだろう。

消費データとしては直接的な調査結果である総務省の「家計調査」(3月)をみておきたい。
大震災後に、みんな何をどのくらい買いだめしたのか、一目でわかる。カネを使ったトップ3は、「寄付金」、「カセット式のガスボンベ」、「電池」である。寄付金は前年比で857%増、つまり9.5倍!ガスボンベは同じく3.5倍。電池は2.8倍。そりゃあ、これだけ一度に買えば店からなくなるわな、そう実感する。更には、ミネラルウォーター(前年の2.6倍)、カセット式ガスコンロ本体(資料では炊事用ガス器具に該当)。大地震直後の右往左往ぶりが伝わってくるではないか。

反対に「飲酒代」とか「宿泊料」、「ゲーム代」は減っている。というか、そういう気にならなかったわけ。それから鉄道運賃。これは計画停電の影響、それと旅行でしょ。

店から消えたと耳にした納豆。これは減っている。意外だ。それとヨーグルト。これらは買いだめしたというより製造できなかったのであろう。

数字は全回答者の平均である。人によって違いはあるが、みんな一斉に数字通りの行動をとったと考えてもよい。うちも(恥ずかしながら)ミネラルウォーターを買いだめしたのだが、普段1本買うところを、2本買っただけである。生産は、この程度の一斉行動にも耐えられない、ということだ。隣国と地続きのヨーロッパならこんなことはないだろう。ちなみに欧州では電気だって国境をこえて輸出入されている。

次は、復興需要と復興財源について。一昨日の投稿では、メリルリンチの吉川氏のレポートをとりあげた。そこでは、日本の経常収支黒字を考えると、財政赤字の拡大が金利急騰につながる可能性は小さい。たとえばギリシアと同列には論じられない。そんな見方を紹介した。

しかし
では反対の見方が示されている。阪神大震災とは違って、今回の東日本大震災では、まず確実にクラウディングアウトを招く。つまり、財政赤字拡大が金利の上昇を誘発して、民間企業の設備投資をおさえてしまう効果がある。そう判断している。

民間設備投資の動きは、本ブログの上記投稿でも指摘しているのだが、正直、現在時点では小生にもどうなっていくか分からない。企業がどれだけ日本国内でビジネスをやるのか。その覚悟いかんですからね。これからの民間設備投資、ここが一番のポイントであることは皆さんも目を向けておいてください。

国債発行残高を懸念する同じ視点から以下の二つ。
これは報道されてもいないし、話題にもなっていないが、内閣府が毎年公表している「国民経済計算(確報)」という数字がある。そこには、中央・地方の政府部門を併せて集計した連結バランスシートがある。これをみると日本の政府は2009年度末で初めて<債務超過>に陥った。つまり、いざとなれば土地、建物の処分などで資金を作って、国債という借金を返済することは可能だったのだが、それでは足らなくなった。資産の裏付けのない債券を発行するようになっている。ま、それでも国債が売れるのは、「俺たちがみんなで返すんだから、カネを持っている奴はいま出してくれよ」そんな空気が支配しているからだ。お互いを信用しているのですね。

こんな風に、大震災と復興事業、その財源など、論点はあまりに多く、ともすると話は一面的になり、井戸端会議と化す。全体を眺めておくのも非常に大事だ。そんな必要性には

大震災後の日本経済の成り行きには、アメリカの経済学者も固唾をのんで、見守っている。
さて東京電力関係だが、事故収束にはなお時間がかかりそうなものの、賠償スキームが一応決まり、経営陣が一応刷新されて、何とか一段階、事態が進んだか。

まずは東電の経営が世界でどの程度不安視されているか?これはBloombergから引用しておこう。

 5月20日(ブルームバーグ):クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場で、福島第一原子力発電所で事故を起こした東京電力の社債保証コストが過去最大となった。市場参加者の関心は、債務が履行できない状態に当たるとみなされるような金利減免や債権放棄の有無に加え、政府の賠償支援に対する明確な姿勢に集まっている。

  CMAによると、東電の5年物のCDSはニューヨーク時間の19日の気配値中値で、前日比221ベーシスポイント(1bp=0.01%)拡大し、これまでで最大の726bpに達した。メキシコ湾原油流出事故で2010年6月29日に577.5bpを付けた英石油化学会社、BPの保証コストを初めて超えた。

  政府が13日に東日本大震災を受けた東電賠償スキームを発表した際、枝野幸男官房長官は銀行の債権放棄が前提になるとの見解を表明。これを機に東電のCDSは12日の212.5bpから約1週間で3倍以上に急拡大。BNPパリバ証券の中空麻奈氏は「政府の不用意な発言でデフォルトリスクがちらついた」と拡大の理由を指摘した。

・・・以下、略

(備考)取材協力:中山理夫 --Editor:Kazu HiranoTetsuzo Ushiroyama
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 占部 絵美 EmiUrabeeurabe@bloomberg.net
記事に関するエディターへの問い合わせ先:
東京 大久保義人 
Yoshito Okuboyokubo1@bloomberg.net
東京 Teo Chian Weicwteo@bloomberg.net
更新日時: 2011/05/20 18:14 JST

CDSと言えばリーマン危機を思い起こすが、対企業債権のリスクを担保しておこうとする需要がなくなるはずもない。その東電債権に関する保険料がメキシコ湾岸原油流出事故でフラフラになった英国British Petroleum社のそれを超えた。簡単に言えば、あの時より不安だ、ということ。もうこうなれば、東京電力という会社が民間からカネを借りれるはずもなく、必要な資金は政府が保証をつける社債(つまり政府保証債)で調達させる。そう腹をくくったということでもありましょう。ということは、東電の賠償支払いは限りなく国債で調達するという意思表示でもあるわけ。

小生が菅政権に憤りを感じているのは、言っていることと、実際にやっていることが、これほど違う政権もないということだ。言葉のもたらす効果、企んでいることを読まないと、国民には意図が分からない。腹黒い政府だなあと思う所以です。なんでこの点を日本の大手マスコミは一切非難しないのか?不思議でたまらぬ。

いつも歯切れのよい切り込み隊長氏に登場してもらいましょう。

東電というより日本の電力市場の行く末は岸博幸氏の次の寄稿がいい筋をついています。

発送電分離については、電事連も「時間をかけて議論をする必要がある」と正面から受けて立つ構えを見せていて、政府が何の責任もとらないまま、ただで泣き寝入りをするつもりは全くないらしい。

経済学者は電力市場の一層の規制緩和、地域独占体制の変革を求める方向で走り始めている。小生も、東電の賠償負担のために東電という企業組織を温存するのではなく、電力市場開放の中で資産評価、債務評価を切り分けながら、形としてはM&Aを通して市場が解決するのが一番よいと思っている。これは予想だが、送電は電力会社が出資して統合するガリバー型企業を一つ作ったうえで市場開放し、また原発事業は公社化されるのではないかと思っている。いまの電力会社は発電事業をやりながら競争市場で生き残っていくのではないか。もちろん会社名も変わる。東電の賠償負担は、日本原子力公社(仮名)と送電事業を行う日本エネルギー株式会社(仮名)が折半して支払い債務を継承するのじゃないか。ひょっとすると原発公社が全部もつかもしれない。公社にしておけば、郵貯からいくらでも低利で調達できますからね(財投です)。

ま、銀行の不良債権だって、住専問題で表面化してから、りそな銀行処理で目鼻がつくまで7年かかっている。今年、来年の話しにはならないのは確実だ。

0 件のコメント: