2011年5月6日金曜日

被災地支援ボランティアの人は、消費者か、サービス従事者か?

被災地支援のため多くの人がボランティア活動を行っている。調べてみると、手弁当、つまりポケットマネーである。宿泊、食費など全て自分で用意しなければならないとのことだ。

ボランティアの人が、被災地で必要とする食事などの滞在費は、消費支出としてGDPに計上されるはずだ。しかし被災地支援活動は消費活動なのだと聞けば、誰でもが違和感を感じると思う。被災地支援は、自分の満足を追求するというよりも困っている人たちを助けてあげたいという意志に基づいているからだ。それは社会参加であり、本来ならば政府なり自治体と個々人が契約を結び、公的活動として展開してもよい仕事だからである。

利益を目的とはせずに非営利の活動を行う主体はNPOと呼ばれている。ボランティア活動がNPO事業の一環として行われているなら、従事者は<対家計民間非営利サービス>を生産しているものと解釈するのがGDP推計におけるルールだ。たとえば医療や福祉法人はそうだ。こうすると、NPO法人が購入する物品はサービス生産の経費として処理されるし、雇用される人たちが受け取る報酬も全てNPOの費用になる。その費用に見合ったサービスがGDPに含まれることになる。

ただボランティアの人が、民間サービスに従事しているのか、旅行先で消費しているのか、購入される物品はどちらにしても買われているので、どう取り扱うかによって日本のGDPが大きく変わるというわけではない。

しかし気になる点もある。ボランティアの人が従事する仕事に、たとえば瓦礫の撤去もあると聞く。この種の作業は個々の家計に提供する福祉などのサービスというよりも、国・自治体が行う<政府サービス>と同じである。これが有償の活動なら、国・自治体が(適当な報酬とともに)参加者と契約し、一定期間働いてもらうわけである。ボランティアの人が、その報酬を実際には受け取らず、国・自治体に返納すれば形の上では同じになる。これは所得税100%で租税納入が発生していると見ることもできるだろう。

もちろんボランティア活動は、個々人の自由意思で行うので、法律で強制する徴税と同一視するのはおかしいという反論があろう。しかし原理原則をいえば、納税も決して強制されて行うものではなく、政府サービスに対する対価として自発的に行うものだ。自発的になされているからと言って、ボランティア活動を行う人が報酬を受け取らないという事実を、納税とは違う、とは断言できないようにも感じる。

義捐金支出と租税減免措置の関係はよく議論される。しかし、ボランティア活動を行う人が被災地で過ごした時間、その時間に受け取れたであろう所得を租税との関係で議論することはあまりないように思う。実は両者は同種の問題なのである。

少なくとも、ボランティアであれ、公務であれ、そこで同じことをしているのであれば同じ評価をするべきである。小生も制度面のことを詳細に調べつくしたわけではないが、遠隔地から参加している民間ボランティアの人に対して、いわば「活動内容証明書」を発行し、その内容に応じて将来所得に課される税額の減免措置を講ずるくらいのことは実施できるのではないか?このような減免措置を行ったとしても「財政赤字の上に更に減免措置などはとんでもない」とは誰も言わないのではなかろうか?

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