黄金週間の最終日、仏大統領選・希国政選挙が実施され、それぞれ現職・与党が敗北した。ドイツ流の一貫かつ過激な財政緊縮路線に国民が悲鳴をあげたというわけである。
英首相は早速声明を出した。
David Cameron is to declare that there is “no going back” on harsh spending cuts after seeing the leaders of France and Greece swept from power by public anger at austerity.(Source: The Telegraph, Tuesday 08 May 2012 )多数が予想したように財政緊縮路線が否定された結末であると指摘し、またギリシアが1年以内にユーロ圏を離脱するだろうとも予測している。
The elections showed that large numbers of voters believed there was an alternative to the austerity measures imposed by governments and international funds since the global financial crisis.
The biggest protests came in Greece, where the electorate took revenge on the two parties that had been trying to push through unprecedented budget cuts in return for bail-out funds.
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Economists at Citigroup said the Greek election results significantly raised the risk of Greece leaving the euro within a year. Tristan Cooper, a sovereign debt analyst at Fidelity Worldwide Investment, added: “Although it should be no surprise that Greeks are spurning the Troika’s bitter medicine, the violence of the rejection is a shock. A Greek eurozone exit is now firmly on the cards.”
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欧州の債務危機を回避するという点では、メルケル首相とオランド新大統領は意見が一致しているようだが、経済政策路線はかなり隔たりがある点に着目しているのは当然だ。
Das von heute an gute Arbeitsverhältnis zwischen Frankreichs Präsident François Hollande und Bundeskanzlerin Angela Merkel ändert nichts an den gegensätzlichen Vorstellungen zum Umgang mit der Eurokrise. Beide wollen am Sparkurs festhalten und das Wachstum fördern - aber jeder meint etwas anderes.
Merkel nimmt die Schuldenbremse ernst, Hollande will sich keiner Regel zur Drosselung der Neuverschuldung unterwerfen. Wenn Merkel von Wachstum redet, meint sie Strukturreformen, um Fesseln auf den Arbeits- oder Produktmärkten zu lockern. Über die segensreichen Kräfte des Wettbewerbs (dessen Früchte die deutsche Wirtschaft gerade erntet) verliert Hollande kaum ein Wort. (Source: Frankfurter Allgemeine Zeitung, 07.05.2012)ドイツ現政権は財政緊縮というより自由主義・規制緩和路線という側である。それに対してフランス新政権が市場メカニズムのメリットを支持することはないものとみている。そのフランスが行きつく先をドイツはどう見ているか?不健全な経済運営を採用することを懸念しているようだ。不健全な経済政策は、たとえそれを評価する社会主義的傾向のある人物が大統領府に入っても、それが不健全であるという事実に変わりはない。まあ、正論である。
Mittels Krediten, Bürgschaften, Anleihekäufen, Krisenfonds und anderer Instrumente (Target, Dicke Bertha und mehr) wird der Zins künstlich gedrückt und erhält selbst der schlechteste Schuldner frisches Geld, mag die Rückzahlung auch noch so fragwürdig sein. Warum soll sich das ändern, nur weil ein Sozialist in den Elysee-Palast einzieht?人為的に金利を引き下げ、マネーの拡大を図ると本来は資金調達能力のないはずの企業なり個人が必要資金を調達できるので、景気は短期的に上向く。しかし過剰流動性供給はインフレにつながる、でなければバブルが崩壊して不良債権の山となる。どちらにしても「バブル願望症」というべき見方であると ― 相も変わらずと見るべきか、当然と見るべきかは意見が分かれようが ― 切り捨てている。
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ただ思うのだ。確かにドイツは健全財政+規制緩和政策で一人勝ちの状態である。しかし、それは欧州内の生産性格差解消に資金面で十分協力せず、ドイツ国民の観点からドイツ企業の利益を追求してきたためではないか。
もしも日本国内で中央政府を通じた地方交付金や国庫補助金制度がなければ、利益とカネは大都市圏に集中し、実際の生産活動を行っているはずの地方は慢性的な資金不足に悩むだろう。ヨーロッパもこれと同じことである。本来なら、南欧の生産性向上は低く、ドイツに対してギリシアやスペイン、イタリアの通貨は低落しているべきである。それを共通通貨EUROの枠で縛っているから為替低落の恩恵を受けることができない。そのため、競争優位性はドイツ側に一方的に偏ることになっている。もちろんドイツが頑張ったという点を無視してはならない。しかし現在の状況が持続可能でないのは確かだ。
多分、今後、政策路線の違いが際立ってくるだろうが、議論するべき事柄は<ばらまき政策復活 vs 健全財政維持>という不毛の対決ではない。生産性の向上と健全財政の実現を目指すことは経済の発展にとって必須不可欠である点に間違いはない。しかし同時に、ドイツと他地域の資金偏在を解消する仕組みを作ることが最も重要だ。
平たく言えば、ドイツの景気が好くて、ギリシアで失業者が溢れているのであれば、ギリシアからドイツにいくらでも働きに行けるようにすれば良いのである。ドイツの賃金は下がるだろう。しかしギリシアは楽になるのだ。ドイツが、それをどうしても堰き止めたいというなら、ドイツがギリシアの経済開発を支援するために、見返りを求める投資ではなく、社会資本充実、人材育成等々を目的に資金供与するべきなのである。そうすることがヨーロッパの利益につながり、ひいてはドイツの利益になるだろう。そもそも、そのためにこそEUとEUROを作ったのではないのか?
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