2012年5月19日土曜日

創造的破壊はできないが破壊のあとの創造ならできる国

日本国の電力体制は、3.11の大地震という<想定外>のショックによって瞬時にして破壊されたようである。

週刊エコノミスト(毎日新聞社)の5月22日号の特集テーマは、「電力競争時代」である。

また本日の日本経済新聞には以下の記事が掲載されている。
経済産業省の電力システム改革専門委員会(委員長・伊藤元重東大教授)は18日の会合で、電力の小売りを家庭まで含めて全面的に自由化する方針で一致した。家庭向け料金の規制もなくす方向で大筋合意した。

政府は早ければ電気事業法の改正案を来年の通常国会に提出する見通し。ただ、移行期間を設けるべきだとの声もあり、実施は2014年度以降になりそうだ。

電力小売りの自由化は2000年以降、段階的に拡大。契約電力50キロワット以上の工場やオフィスビルでは、新電力(特定規模電気事業者、PPS)の参入を認めているが、一般家庭には地元の電力会社しか供給できない。

委員会では「絶対に自由化すべき。いまのままで良いと言う人はいない」(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の辰巳菊子理事)などと、家庭向けの参入規制を撤廃する方針で一致自由化が実現すれば、再生可能エネルギーの電気だけ売る会社などが登場する可能性があり、家庭の選択肢が広がる。

家庭向けの料金は燃料費や人件費などの原価に利潤を上乗せした「総括原価方式」で決める規制が残る。料金規制を撤廃するかどうかが焦点となるが、委員の間では「(料金規制もなくさなければ)自由化とは呼べない」(中央大の安念潤司教授)との意見が目立った

電力会社に契約を断られた家庭に誰が電気を供給するかも焦点となった。現在、電力会社は家庭への供給を拒めないが、自由化で義務が外れる。委員会では安全網としていずれかの事業者に最終保障サービスを提供させる方向でほぼ合意した。

松村敏弘東大教授は「競争が働くかどうか心配。自由化した企業向けも十分に競争が働いていない」と指摘した。(出所: 日本経済新聞、2012年5月19日朝刊)
 アメリカや欧州で進められていた電力市場効率化の試みに断固として抵抗していたのが大手電力会社である。「抵抗」と言うより、体制内効率化の路線に固執していたと言うべきだろう。それが一撃にして、全原発を停止させられ、しかも高コスト体質に抜本的方策を講じることなく、「利益を出すには高い料金が必要です」と言わんばかりの愚策に出た。

どうも日本の大手企業は、<和の精神>が社内に横溢しているせいか、たゆむことのない<創造的破壊>ができなくなってしまうのだ、な。創造を進めるには、誰の目にも見える形でまず破壊しなければならないとは、何と非効率なことか!その背景に、自己犠牲を貧乏クジと形容して、全体の利益より自分達の利益を優先させる<ムラの掟>がある点、まず間違いはない。主君への忠義と臣下への恩賞というモラルの方がまだマシというものだ。危機管理ができない所以である。

いずれにしても大手電力企業は、「奢れるものは久しからず」の典型的事例となってしまった。いまガス会社など隣接ライバル企業が浮き立っているようだ。この波は広く、深く企業家精神を刺激していくだろう。つまりビジネスチャンスが来たということ。

× × ×

電力市場のあとは放送市場というか、電波市場なのかもしれない。しかし、<破壊>という点から考えれば、今の日本国にとって最も重要なのは、教育サービス市場と医療・福祉・介護サービス市場の破壊であろう。これは、文部科学省、厚生労働省による支配体制を破壊して、焼け跡を国内外に開放することに他ならない。それから金融資本市場の破壊である。これは、財務省・金融庁の支配体制を破壊して、生け贄を内外に供することを意味する。犠牲を供することで、日本のカネと顧客に魅き寄せられる国内外のファイター達による<新規開業>、<M&A>という食うか食われるかの闘いが、戦国時代さながら激しく目の前で繰り広げられよう。その中で、日本人の意識は覚醒し、社会は生命を取り戻し、日本国には再び<栄光>が訪れることであろう・・・。これが望ましいというか、もし「軍師」がいれば上策として薦める方向ではないかと思うのだ、な。更に、高度専門的職業の市場組織を同時並行的に破壊し、国内外に場を開放する作業がある。多くの「異民族」が外から流入するだろうが、新しい血が入るおかげで、日本人の活力は刺激され、再び興隆に向かうだろう。しかし、多くの官庁の所管ごとにその行政ネットワークの網の目は寸断されてしまうだろう。ま、燃やし尽くすことで再生を目指す・・・まさに<火の鳥>戦略というか、<破壊と創造>戦略であります。もちろん、悪くすると<暗黒の△十年>をくぐることになるかもしれない。しかし、破壊の後には、今の電力市場再編にも似た再生の機運が醸し出されることは、絶対に間違いのないところだ。

しかし、大手電力企業が退却したあと、経済産業省が次の戦略をリードしている。そんな風に進むのなら、新たに生まれる体制が中央官僚集団にとって都合の悪いものになるはずはない。この辺りをどこまでマスメディアがチェックできるかである、な。それができないようなら、マスメディア市場もまずは<破壊>するしか、しょうがないでしょうかなあ・・・

それとも、いまの日本の国民がホンネとして願望しているのは、大手民間企業の支配を破壊して、新興の企業が雨後の竹の子のように生れ出るような社会ではなくて、清廉潔白な官僚がコントロールするような国家なんだろうか?だとすれば、国民が願望するような人間が、官庁に採用され、仕事ができるように、公務員の任用・昇進制度を先に変えるべきであろう。これもまた日本人の苦手としている<創造的破壊>である。ここでもやはり創造的破壊が苦手であるというなら、まずは破壊しちゃいますか?だとすれば、<革命>という形をとるしか道はござらぬ。

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