とことん突っ張って「行けるところまで行く」。北朝鮮の強硬姿勢もそうであるし、最近では尖閣諸島近海での中国漁船船長逮捕とその後に見せた中国政府の強硬姿勢も該当するかもしれない。古くは戦前期日本の軍国主義政府もそうだろう。すべて<瀬戸際戦術>である。よく言えば<背水の陣>ともいえ、その背水の陣は漢の名将韓信がとった天才的作戦であったから、リスクをかえりみない瀬戸際戦術が常にダメダメであるわけではない。とはいえ、賭博にも似た攻撃が大成功するには、相手が弱体であるという洞察、及び天才的な即断即決、そして部下からの絶対的信頼と指導力が必要である。
凡人が瀬戸際戦術をとると、まず自滅への道をたどるであろう。
小生は、英紙Daily TelegraphのWEB版"The Telegraph"に寄稿しているAmbrose Evans-Pritchard氏のコラム記事をGoogle Readerの登録フィードに入れてある。その最新記事はヨーロッパがギリシアと展開している危険な政治ゲームについてである。
Europe's nuclear brinkmanship with Greece is a lethal game
ズバリ、核の脅しは生命がかかった危ない政治ゲームであるという指摘というか、たとえである。まあ、大陸欧州、ギリシア国民等々、いまやっていることは危ないということを意識していない、正にその点が、一番危ない。ダイジョブ、ダイジョブってやつです、な。小生も、100%、Pritchard氏に同感である。
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ギリシアの現状は悲惨である。
Youth unemployment up to the age of 24 reached a fresh record of 53.8pc in February.
The rate for those aged 25-34 rose to 29.1pc.
The total rate hit 21.7pc but will soon be much higher as 150,000 public sector workers are chopped – with pro-cyclical effects, in the middle of a depression – to comply with the EU-IMF Memorandum.
Polls show that 70pc or even 80pc of Greeks still wish to stay in the euro, while at the same voting in large numbers for hard-Left and hard-Right parties committed to tearing up the Memorandum – a course of action that will take them straight out of the euro.
I do not wish to reproach the Greeks for cognitive dissonance.
(Source: The Telegraph, May 10th, 2012)24歳以下の若年層失業率は50%を超えているのだから、日本などは御の字である。それは欧州・IMFとの合意を守るためであり、そのための財政緊縮を進めているからで、ギリシア国民の現状は経済支援の代償であるという理屈だ。
Greeks have yet to conclude that the euro itself is the cause of their catastrophe – though they are getting there. By the euro, I mean the whole structure of monetary union, made worse under current policy settings (incompetence). There can be no possible escape from this lamentable state of affairs at this late stage until they return to the drachma.ユーロ圏から離脱して通貨ドラクマに復帰するまでこの惨状は続くだろうと指摘しているが、国民経済が健全化されるまでギリシアという国は存続可能なのか?金銭的収支はつくにしても、理屈は通るかもしれないが、国が滅んでしまっては元も子もないではないか。よく英国人は、この種の指摘をしては欧州大陸諸国から顰蹙をかっている。
Actual devaluations have the opposite effect. They prevent unemployment from rocketing, instead forcing down demand for imported goods. Iceland’s jobless rate is 7.5pc, nota bene, and its economy grew 2.9pc last year (OECD data). Remember all those dire predictions about Iceland, all those tut-tuts that it was paying a terrible price for clinging to the illusion of a sovereign currency? Even the great Prof Barry Eichengreen fell for that one. His other work redeems him.
Like many journalists, I am bombarded with reports asserting that Greece would suffer near total collapse if forced out of EMU, with some claiming that GDP would fall by 50pc with inflation spiralling into the hyper-sphere.
These numbers are plucked out of thin air. None of the analysts know what they are talking about, and Europe’s political elites – the elites that created this impasse – know even less.
We were told almost religiously that Britain could not safely leave the Gold Standard in 1931 or the ERM in 1992, or that such moves would set off dangerous inflation, and were told much else besides by the shroud-waving hysterics and defenders of the status quo.
We know what actually happened. The UK had its best decade ever relative to other major powers in the 1930s, at least in modern times. Its democracy remained rock solid through the late Depression as others crumbled one by one, or ended in paralysis as in France.ユーロからギリシアが離脱する時の混乱が心配されているようだが、過去の経験によれば心配には値しないと、いくつもの実例を紹介しているのが、今回のコラム記事の論旨である。
約束を守り忍耐を続ければ論理と信義は通るが、国が滅ぶかもしれない。ユーロから離脱すると、混乱は避けられないが、かえって良かったという実例もある。つまりチャンスがある。
瀬戸際戦術という不毛の突っ張り合いは中止して、実質本位の選択をするべきであるというのが、Pritchard氏の議論である。おそらくイギリスの平均的見方であるような気がする。ギリシアの選挙結果、フランス、オランダの政治バランス変化をみても、メルケル独首相は一歩後退を余儀なくされるかもしれない。とすれば、ドイツから他の欧州世界に移転される資金のパイプは、太くなる方向で予測しておくべきだろう。そんな方向転換をドイツが理解し、ドイツ国民、ドイツ企業が受け入れるかであるな。次の鍵は。そう見ているところだ。
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瀬戸際戦術を選択する背後には「ダイジョブ、ダイジョブ」という根拠なき楽観と無責任がある。この基本的ロジックは、今の日本にも該当するのではなかろうか?
原発の危険?ダイジョブ、ダイジョブ。
原発全面停止!経済?ダイジョブ、ダイジョブ。
そういえば今の日本の中堅世代は、かつて若いころ<三無主義>、<五無主義>と形容されていなかったかな?無気力、無感動、無責任で三無主義。それにプラスして無関心と無作法が加わって五無主義・・・。最近の世情は「三つ子の魂、百まで」を地でいくものか・・・。いやいや、これでは世代間戦争になってしまう。やめておこう。桑原、桑原。
この<ダイジョブ、ダイジョブ精神>。その精神を発揮するのなら、せめて積極的投資戦略で発揮してほしいものだ。そうすれば日本国の役に立つ。自社の経営では<ダイジョブか?>と臆病風に吹かれつつ、自社に関係しないところでは<ダイジョブ、ダイジョブ>と我田引水をはかる。もしそうなら、トータルでは結局自分は何もしないということであり、マクロ的にこういう行動をとると日本のGDPは、早晩、韓国はもちろん、タイやベトナムにも抜かれてしまうであろう。というか、Maddisonの"Contours of the World Economy"によれば、韓国には一人当たりGDPで2030年には抜かれるであろうと予測されている。
その意味では、日中韓FTA?米が入ってくるじゃないか、やらずともダイジョブ、ダイジョブ。TPP?あれはアメリカの戦略だよ、参加しなくともダイジョブ、ダイジョブ。選択しうる政略としては、日本も北朝鮮と同じく、<瀬戸際戦術>しかないわけであります。日本と北朝鮮、イメージはずいぶん異なるが、似てないはずの二国は意外と共通している面がある。最近、小生はそう思っているのだ。
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