2019年8月9日金曜日

国と企業を混同するトンチンカンな意見

今年10月に消費税率が8%から10%に引き上げられ、税込み価格の計算がずいぶんしやすくなる。700円の書籍なら税込み756円になるところが、10月からは1割増しの770円となる。簡単に暗算ができる。

「増税する中で公務員給与を引き上げる怪」という話題を記事にしている新聞社があったりする。すると平和な日本ではこんな意見に「その通りだ」という反応が案の定あったりする。

もし赤字企業があるときにどんな経営再建が必要だろうか?従業員の給与を引き下げる事だろうか?

赤字なら従業員の給与を下げることから始めなければならんだろうという人がいれば、経営再建を引き受けてやってみればよい。会社を倒産させてしまうだろう。

給与を下げれば出ていくカネを節約出来ると考えるのだろうがそれは浅知恵だ。人が会社からいなくなるだけだ。出来る人材が去ればその会社は左前だ。再建のチャンスを失うだけである。

それでも「現に多くの会社は給与を下げるか、引き上げ凍結をしていますよ」とこだわる人がいる。「だから失われた20年を招いてしまったんですよ」と小生は言いたいところだ。まったくの下策であった。給与が下がっても会社を愛する人がいるのは会社には有難いことだ。再建できた暁には高額の報奨が得られると思って苦境をともにしてくれるのは有難いことである。見込みがなければ誰もついてこないだろう。人はトップの出来不出来をみる。武士も御恩奉公で頑張れた。奉公だけでは誰も頑張らないのが世の鉄則である。

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赤字企業の再建に必要なのは、給与引き下げではなく、赤字事業のリストラである。赤字であるということはその会社の強みが失われていることを意味する。スリム化し得意分野に経営資源を集中させて再建するのが王道であることはもう誰もが知識としては知っているはずだ。

日本政府の各種サービス分野で赤字事業の核となっているのは社会保障である。もしも「財政再建」が日本の国家目標であるなら社会保障事業をリストラすればよいという理屈になる。特に将来支出の嵩む年金事業からは撤退し、事業譲渡を進めるのが緊急の課題ということになる。そして、期待収益率の高い最先端研究支援、高等教育や老朽インフラ補修にカネを回すべきであるという提案になる。

思わず「そうだよね」と言いたくなる人は多いだろう。

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しかし、赤字事業の社会保障を引き受ける会社はあるだろうか?国が断念するような赤字事業を引き受ける企業が民間にあるはずはない。あるとすれば外国流のコストカットをむねとする引き受け手しかいない。要するに、富裕層中心の年金保険事業のみに特化し、文字通りの社会保障は止めるという結末になる。日本社会には阿鼻叫喚が巻き起こるだろう。相当の確率で共産党が政権を握るだろう。

それでもよいなら話はここで終わる。

今になって止めるなら、そもそも年金保険などをなぜ国は始めたのだろうか。明治から大正、戦争直前にかけて戦前期日本ではロクな社会保障はなかったが、それでも日本人は快活に暮らしていたのである。大家族制の伝統と核家族化を融合させながら上手に生きていたのである。

国家直営の社会保障を始めるという選択は不可逆、もう後戻りはできないと思うしかない。とすれば、持続可能な財政システムを考えて実行するしか選択肢はないわけだ。

年金については何度も投稿してきた。つい最近も投稿した。会社では普通こんな風にしていますよなどと考えても、あまり役に立つ方策は出ては来ないのである。

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