- 社会の基盤である生産活動は(基本的に)再開されるはずである。発症し感染が疑われる場合は検査を行い陽性の場合は自宅待機とするのはインフルエンザと同様に対応する。こんな方式になると予想する。
- 但し、クラスター形成の確率が非常に高くなる活動、つまり下図の3条件を満たす活動は時限的に、例えば1年間程度は禁止もしくは自粛要請されたり、あるいは入場時の体温チェックが義務付けられるのではないか ― 具体的にどの分野、施設で何が求められるかは、ちょうど「軽減税率」対象品目を指定するのと似ていて、恣意性が混じるのは仕方がないが。もしその間に喪失所得が発生するなら、幾ばくかの所得補償が失業保険と併用しながら別に立案されるだろう。
- 感染者が自宅で発生した時の「自宅待機」のあり方が最も重要になる。例えば『新型コロナウイルス感染者の自宅待機に関する行動指針』が感染者本人、家族への「お願い」として国内全世帯に郵送配布されるのではないか。日本人は公的な方針に従うことが好きである。全世帯配布は『年金お知らせ便』と同じである。
生産活動は(基本的に)再開されるはずである・・・という予測は見事に外れた。とうとう日本全国を対象に「非常事態」が宣言されてしまった。接客業、サービス業を中心に全面的に生産が停まりかけている。予想よりはるかに事態は深刻化してしまった。「検査を行い」と書いているが、その検査能力が資材、人材ともに不十分で乏しく、日本の決定的弱点であったことも知らなかった。まさか検査試薬はともかく、検査技師で実際に検査ができる人が有資格者の1割にも満たないとは、1月から2月にかけて誰が言っていただろうか。幕末の「旗本八万騎」じゃあるまいし、開けて吃驚とはこの事だ。襲来する敵勢の把握と手元に保有する自国戦力の把握とは戦略策定の核心である。
検温チェックの義務付けは「義務」というより自発的に不可欠のチェック項目になったようだ。というより、念頭に置いていたハイリスク区域(ライブハウス、カラオケボックス等々)だけではなく、遊興施設や飲食店など広く投網をかけるようにして、ほぼ全面的に営業自粛が要請されている。行政命令がないだけで実質的にはヨーロッパ並みの都市封鎖を目指し始めたようでもある ― とはいえ、ニューヨークの感染拡大に最も寄与率が高かったと見られ始めている地下鉄などの通勤電車。こちらはまだテレワークを要請しているだけであり、朝の品川駅の混雑ぶりなど、変わっていない印象だ。政府は「できる限りの手を尽くしている」という情況では決してない。なので、全体的には一月前の予測の範囲内かもしれない。所得補償の予想は、まあ当たったというところか。
大きく外れたのは「自宅療養」が基本になると考えた点。小生はストレプトマイシン登場前の戦前期に「結核」感染者が過ごした環境を念頭においていた。インフルエンザは簡単検査キットも特効薬もあるので怖くない。戦前期の「結核」は伝染性が強く、特効薬もなく、死亡率も非常に高い感染症だった。しかしながら、カミさんの叔母は若いころに結核を患い、若くして身罷ったそうなのだが、自宅でずっと療養を続けていたという。国立療養所は一杯で受け入れてもらえなかったのかもしれない。その頃の日本人の家は、通気性の良い日本家屋がほとんどで、その叔母が療養していたのは離れ座敷であったそうだ。現在、そんな環境を確保できる日本人は大都市圏にはほとんどいないだろう。マンションでは無理というものだ。加えて、結核は長年月にわたってユックリと進行する病気だったと聞いている。新型コロナウイルスによる肺炎のように数日のうちに容態が急変して死に至るという病気ではなかったのだろう。コロナを「自宅療養」するのは危険である。
・・・これが約一月前の小生の予想だった。
いま読み返してみると、つくづく新型コロナウイルスをなめていたナア、と。
役所で働いていれば、とんでもない判断ミスをしていたに違いない。恐ろしいことだ。いまは巡り合わせで呑気な毎日を送っている。その幸運を神様に感謝する。現役の人たちは、文字通り「戦争」を戦っている心境であるだろう。とすると、われわれ多くの国民は丸腰で敵襲に立ち向かっている「銃後の民」ということか。
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