2020年4月19日日曜日

手作りマスクの広がりと政府の怠慢ぶり

愛媛の松山に小生の「年下の義理の姉」が暮らしている。本ブログでも書いたことがある。先年、呼吸器内科医だった夫君を亡くしたのだが、まだそれほどの齢でもないので、介護施設でまた働き始めた。

他の地域もそうだが、施設内でマスクが全く足りていないそうだ。政府から給付はあったが文字通りの「焼け石に水」なので、裁縫の上手な姉にマスクを作ってくれないかと施設から頼まれたそうだ。

ところが十分な量のゴム紐がこれまたない。まったく「ないない尽くし」が現在の日本経済で政府の無能ぶりには腹が立つのだが、うちのカミさんに「ゴム、余ってない?」と携帯で聞いてきた。カミさんが押し入れの中をゴソゴソとひっくり返していたのはそのためらしく、「あった、あった」と言っているので近くに寄って見てみると、白のゴム紐が4メートル、黒が2メートル。これなら使えそうだネ、ということになった。『ねえ、うちにも二つ作ってくれるかなあ? 安倍さんのマスク、何だか小さすぎるようなのヨ』と携帯で話しているのが聞こえてきた。

政府上層部のダメダメ振りを現場の自助努力でカバーしていく。文字通り、日本的な風景だなあと思った次第。

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それにしても、医療で超過需要が発生すれば、マスクだけではなく、アルコールや防護服も不足することは予測できたはずだ。マスクの需要が予測されれば、今度はガーゼをどれほど生産しなければならないか、ゴム紐がどれだけ不足するか。ガーゼもなくなれば、白い布という布が足らなくなることも計算すれば出てくる。施設内では白い布が足らなくなればシーツを使うという。ミシンもなくなるし、ミシン糸もなくなるだろう。

まるで何もかもがない終戦直前の職場だネエ

そう思った。

内閣府や経済産業省では、需要構造の激変に対して多種多様な商品のどことどこで超過需要が波及的に進んでいくか、シミュレーション計算してみたのだろうか。

ツールは、80年以上も前からある「産業連関表」でも役に立つ。産業連関表を用いた波及効果分析など、エクセルでもできる。500×500レベルに分けても逆行列の計算などは一瞬で終わる。

ボトルネックはどこで発生し、どこに制約の影響が及びそうか。輸入制約はどこで発生して、どれを止めるか。単純な線形計算だが先ずはそこからでしょう。もしシミュレーションしたなら数値計算結果を見てみたいものだ。

それとも動学的確率的一般均衡(DSGE)型マクロ計量モデルなら動かせるが、産業連関表など動かしたことがないのだろうか。

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厚労省内のクラスター対策班にいるN北大教授が「無対策の場合の新コロナウイルス感染による死者数」が日本全国で40万人程度に見込まれるというシミュレーション結果を明らかにした。無対策の場合の死者数見通しは100年前のスペイン風邪による死者数38.9万人(参考資料)とも整合する数字だ。

ずいぶん世間を驚かせたが、計算は計算である。同じように、経済環境が激変した状況下で、商品ごとの需要見通しもシミュレーション計算できる。需要見通しがあれば生産要素の投入計画も作れるだろう ― まるで「物資動員計画」だが、現実はそんな情勢になってきた。

命に関するシミュレーションが公表されたのなら、政府自ら重要だと再三話している「経済」についても計算位はやったらいいのにと、改めて呆れる思いでそのスローモーぶりを見ているところだ。

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