2021年9月29日水曜日

ホンノ一言: 宏池会出身首相が久しぶりに登場する見込みになって

「ファン」というべき対象ではないが、小生は政界の中では《宏池会》のファンである。

それは、そもそも幼少時に最初に名前と顔をハッキリと記憶した総理大臣が池田首相であったからでもあるし、何より宏池会に所属する議員達から醸し出されてくる「軍事より外交」、「安保より経済」という基本的な思考が、小生には合理的に感じられ、大変好もしく映っているからだ。その経済志向が、政府の役割を重視するケインジアン(Keynesian)ではなく、民間のイノヴェーションを重視するシュンペータリアン(Schumpeterian)に近ければ、「ファン」を超えて、今もなお熱心に支持しているに違いない。

もし自民党幹事長が二階氏ではなく宏池会の流れをくむ谷垣氏であり続けたなら、安倍政権の5年目以降に生じた数多くの不祥事は避けられたかもしれず、もし谷垣氏の兄貴分である加藤紘一氏が一度でも内閣を組織していれば、日韓関係、日中関係も現在のようではなかったろうと思う。

本日の自民党総裁選挙で宏池会(=岸田派)の岸田氏が当選した。

これは、昔からのファンである小生にとっても嬉しいエピソードになりそうだ。

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ところが、宏池会から首相が輩出されるというのは、あまり縁起のよいことでもないのだ、な。

初代の池田首相時代の《国民所得倍増計画》、《寛容と忍耐》は見事に成功したが、その弟分・大平正芳氏は福田赳夫氏との激烈な権力闘争《四十日抗争》の泥沼を闘うことになった。からくも勝利を得て首相を続投したものの、党内に残った深い遺恨は癒えず、翌年に野党が提出した内閣不信任案をきっかけに「ハプニング解散」となり、その後の選挙戦真っ最中に、当の大平首相は急逝するという悲劇的な結末を迎えた。この間、自民党は戦後最大の分裂の危機にあったのだ。

あとを継承した同じ宏池会の鈴木善幸首相は地道に職務を全うしたが、ずっと後年、バブル景気も崩壊した後、宏池会の宮沢喜一氏が内閣を率いることになった。経済に精通した宮沢首相であったが、時に利あらず、巡り合わせと言うべきか、長きにわたった自民党政権の幕引きをする役回りを演じてしまった。そして細川連立政権が成立した。小選挙区を基礎とする現行の公職選挙法が導入されたのは、宮沢内閣崩壊後のことである。

大平首相時代は激しい派閥抗争と現職総理大臣の死去。宮沢首相時代は自民党政権の崩壊。宏池会出身首相は決して縁起がよいわけではない。波乱含みである。

輿望があったにもかかわらず、総理になることなく自民党総裁から降りたのは、河野洋平氏、谷垣禎一氏だが、二人とも宏池会の系譜に連なる議員である。

なお、元首相・麻生太郎氏を宏池会の流れに加えてもよいが、それはそれで自民党政権崩壊を演じた内閣にもなり決して縁起のよい話ではない。

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宏池会は伝統的に中道左派、自民党内リベラルであって、安倍前首相が基盤とする右派とは思想を異にしている。

にも拘わらず、今回、岸田氏が自民党総裁に当選する流れが形成された背景として、安倍前首相の活動が大きく寄与してきたことは間違いないと思われる。

宏池会の核心的な思想には大いに共感するが、右派との板挟みになる可能性は大いにある。

大丈夫か?

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迷走を繰り返すと、今秋の衆議院総選挙で苦戦の末、敗北し、来夏の参議院選挙で嫌な流れを引きずって、ひょっとすると大敗北を喫する怖れはある。そうなれば《ねじれ国会》となり、それを避けようとすれば「衆参ダブル選挙」を選ぶだろうが、これまた危険なギャンブルだろう。


折しも大相撲では白鵬が引退、「間垣親方」を名乗ることになった。その間垣親方だが、伝統のある名称ではあるが、何人もの継承者が不遇のうちに死するか、廃業するかをしており、極めて縁起の悪い札付きの親方株であるという。


今回、宏池会出身者が次期首相となるのはほぼ確実になった。決して縁起がよいわけではない。宏池会の運は、初代・池田勇人氏が使い切ってしまった、そんな印象だ。

大丈夫か?

傍から見ていると権力闘争はいつでも面白いものだが、コップの中の争いで終わるとも思えず、経済政策にも直結することなので、まったく無関心でもいられない。

ただ、正直言うと、ホッとした感もあるなあ・・・

前にも書いたが、小生は最先端・小型原子炉の安全性、効率性の信望者である。ずっと以前に投稿しているし、立場に変更はない。科学技術の進歩には最大限の信頼をおくというのが基本的立場である。

エネルギー計画についてばかりは、激変が避けられたので安堵しているところだ。風が止まって風力発電の当てが外れ、天然ガス価格高騰に苦しむ今のヨーロッパを見るにつけ、400年も昔のオランダの風車じゃあるまいし、お天気任せ、風任せの再エネを基礎にして、本当に21世紀文明を発展させていけるのか?、本当に大丈夫か? 電気自動車はチャンと充電できるのか? 安心できるのか? オイル・ショックならぬエネルギー・クライシスがそれこそ5,6年に一度は周期的に起きますゼ・・と、心配は高まる一方なのだ、な。

「二酸化炭素は出さない方がイイ」、「だったら風や光や水を使おうじゃないの」と、・・・ホントにこんな幼稚な発想で地球を高度文明社会にレベルアップ出来るのだろうか?

マア、問題や障害は小さな規模で早めに顕在化する方がイイには違いない。引き返せないところまで進んでから難問に直面すれば、昭和10年代後半の帝国陸軍と同じだろう。

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