2022年6月12日日曜日

ホンノ一言: 「新しい資本主義」に対する世間の反応について

岸田政権が発表した今年度『骨太の方針』に岸田首相がご執心の「新しい資本主義」が反映されているというので、結構、マスコミの餌食になっているようだ。

格好のターゲットになっているのが《資産所得倍増》という単語である。もちろんこれは宏池会内閣の元祖である池田勇人首相が掲げた「国民所得倍増」の二番煎じである。何事もそうだが二番煎じは必ず薄味になるものだ。いや「薄味」どころではない。

よく見ると、盛り付け、飾りつけはソレラシイが、食エタ物ジャナイのは、

現預金を投資に振り向けて資産所得倍増をもたらす

これは政策レシピになっていない。滑稽に過ぎる。ホントに真面目にこんな政策を考えているのか、と。責任とれるのか、と。呆れました。

余りの愚かしさに絶句しつつ今朝もカミさんと話した:

小生: 貯金で株でも買わせようって腹なのかね?どこの株かな?バッカじゃないのかって言われるよ、ホントに。証券会社から頼まれたのかネエ・・・

カミさん: どの会社の株を買えばいいのか普通の家庭に分かるのかな?

小生: それより以前にサ、そもそもこれまでは銀行や郵貯に預金して、そのカネを向こうが融資とかで運用して、その運用利益が利子になって戻っていたわけだよ。今後は、銀行や郵便局に頼るのじゃなくて、自分で判断して、投資先を選んでください。理屈はそういうことだな。

カミさん: でも自分で株を選んで投資するって言われても、損をするのが心配なんじゃないかな?

小生: そのリスクをこれまでは金融機関が引き受けていたんだよね。その金融機関がだよ、最近は有望な融資先がなくなって困ってるんだよ。もう日本で事業をやってる企業が銀行に貸してくれって頼まなくなった。お金は十分持ってます。そんなご時世なんだよ。たまに融資を申し込む企業があれば、資金繰りが苦しいとか、スタートアップ企業があれば利益が出るまで金利を減免してくれとか。もう銀行が預金者に利子をつけてくれる時代じゃなくなったんだよ。

カミさん: そうなんだあ・・・

小生: 今は郵貯の定額貯金の金利がもう0.002%だからネエ。100万円を半年複利で10年間預けても、もらう利子は200円くらいだ。これじゃあ郵便局まで行ってくるバス代にもならない。タンスにしまっておく方が便利だな。日本ではもう余ったお金は預けてもダメですよって、お上も国民にそう伝えているわけさ。まさか「知らなかった」とは言わないヨネ。 それを急に『投資しましょう』って可笑しくないかい?マ、総理大臣になったばっかりで、現実を把握できてないンだろうね。

カミさん: でも投資しなさいって言われても、会社って、大体、赤字なんじゃないの?

小生: マ、「大体」は言い過ぎだけど、当たらずと言えども遠からず、かな。だけどネ、経営の論理としては、いまは赤字でも成長性があって将来に利益の出るビジネスプランがあれば、銀行はやっぱり貸してくれるんだ。金融支援すれば将来には優良貸出先に大化けするからネ。それがなくなった。要するに、日本国内に儲かるビジネスが見つからなくなってきた。どこもかしこも守る一方で先細り。将来性がない。だから成長を諦める。で、カネが余る。会社でも銀行でも持っているカネを減らさない方針でやる。カネは確かに余っている。けど、減らさないようにやる。自分や従業員の生活があるから首は切らず雇用は守る。赤字でも細々続ける。たとえ黒字でも慎重に手堅くでリスクはとらない。だから企業全体としては益々手元のカネを増やしている。日本の会社は大体こういう状況なんだよネ。要するに、稼げなくなっている、というより稼ごうとしなくなったのかもしれないけど、こういうことだよ。こんな状態でサ、日本企業が《投資対象》になるかい?株価は長期横這いだろうし、配当も渋いってことだよ。マ、どの会社の株を買っても、それは一時の値上がりを待つ「投機」だな。成長を待つ「投資」じゃない。国民に投機を進める首相がいるだろうかね?

カミさん: 財産そのものは一杯持ってて困らないけど、収入は少ないから、財産を減らさないように細々やっているイメージってこと?何だか年寄りみたいだネ。

小生: 人は高齢化すると元気がなくなるけど、国が丸ごと元気がなくなるなんて、政府にヤル気がないんだよ。いま世間に出てくるのは、シルバービジネスも過当競争になってきてネ、せいぜいが少額、かつ小規模のネットビジネスか、グリーン何とかで、「新規事業」って言っても、これならクラウド・ファンディングで何とかなるわさ。マ、クラウド・ファンディングに応じるのも投資の内ではあるけどネ。だから『あなたお金が余ってますね。投資に回しなさい!』って政府が声高に旗を振っても、ダメなのよ。止まったものは動かない。銀行にも、企業にも有望な投資先が見つからないのに普通のヒトがどこに投資するの?銀行や郵貯がお金を預かってもチャンスがなくて増やせないんだよ。普通のヒトは増やせるの?そういうことサ。

カミさん: 確かにねえ、アタシも最近教わって株を買ってみたけど、株主優待が魅力だって会社はあるけど、安心して買えるのはないもんネエ・・・結局、教えてくれたアメリカの投資ファンドを買うしかないものネエ・・・日本は利回りも低いし、上がらないし・・・

小生: ビジネスが動くように、やりたいビジネスを止めている障害を取り除くのが、今の日本では最優先事項なのさ。投資先を作れば、日本にはまだカネが余っているんだから、自然に流れていくよ。マ、いま止めている投資先を開放するなんて、自民党には無理だろう。野党も自民党にとって変わりたいって考えてるだけで発想は同じさ。政治的に力で押そうとしたら、スキャンダルが暴露されて既得権層から背中を刺されるのが落ちだ。そういう社会になっちまったんだな、とうとう。マ、お先真っ暗だ。 もう戦前の「新体制運動」じゃないけど、武断的に挙国一致体制を組むしか突破できんだろうネエ・・・

カミさん: そっかあ・・・ ・・・

小生: 去年、楽天がモバイル事業を日本郵政と提携して展開するって報道があってさ、それで急いで買ったんだけど、結果的に上がった後のピークで買ってしまったわけなんだ、な。さっぱり上昇気流に乗れない。それは事業がうまく行ってないからだよ。一事が万事なんだ。日本国内に投資先はない。『投機はあれど投資なし』、これが日本の現実だ、な。

カミさん: ホントにどうなるのかなあ・・・

小生: どの会社の株を買えばいいのか分からないから、結局、《投資信託》を買うンだろうな。でも、投資信託ってファンドマネージャーが結構ガッポリとっちゃうんだよね。マ、いま投資するなら、不動産投資ファンドの「REIT」か、でなければエネルギー投資ファンドの「インフラ投資法人」だろうけど、どうだろうねえ、同じタイプならネット証券に口座を作って、アメリカ、中国、インド辺に投資する方が利回りも高いからネエ、ヨーロッパの方がまだマシだ。結局、岸田政権の「現預金から投資へ」ってスローガン、やっても日本の証券会社が喜ぶだけだろうなあ・・・。

まったく日本国内に満足な投資先もないのに「現預金から投資へ」と言い始めるなど、まるで《政策詐欺》であるとすら言いたいところだ。海外に日本のマネーがそのまま流出して、投資意欲のある海外企業が成長するだけの話である。なぜ《グリーン投資減税飛躍的拡大》とか《AI投資は同年度完全償却へ》とかやらないかネエ。陳腐ではあるが、同じ減税でも消費税減税よりは余程役に立つ。ビジネスが旺盛になれば、投資にカネは流れ、生産性が上がり、賃金も必ず上がる。

いや、いや、悪口を書き続けるのも疲れるものだ。悲観的なことは、つい最近にも投稿したことがある。


それにしても、「現預金から投資へ」という話をすると、すぐさま

その現預金を持っていない世帯が日本には増えているんです

話しをそのまま<格差拡大>へ転じてしまうコメンテーターにも困ったものだ。多くの場合、このタイプの御仁は

資産所得倍増より前に、賃金引上げです

と主張しがちである。この主張にキチンと応対できる経済専門家は多数いるが、いま経済学に沿った正論を日本国内の大衆心理に忖度するテレビ局で堂々と語れる人は少ないのではないだろうか。民間エコノミストも所詮は<商売>をしているわけで物議・悪評は避けるのが賢明だからだ。言いにくいことを言えるのは<官庁エコノミスト>しかいない理屈だが、最近の人材事情はよく分からない。

韓国の文在寅政権が犯した《最低賃金引上げ政策》の大失敗を日本が再演してしまうコメディを観るのも遠くはないかもしれない。

文政権は確かに賃金政策を真っ先に実行して失敗した。しかし、消費需要を軸にして韓国経済の成長を実現したいという理念は本筋に沿っていた。経済のロジックに無知であったため、順番を間違えたのである。いわば善意による悲劇である。その失敗を最近年に観ていながら、同じ失敗をそのまま今度は日本という舞台で繰り返すとすれば、今度は悲劇ではなく喜劇となって、世界中で笑いを誘うに違いない。

小生: 学部のゼミ生の方がまだ中身のあるディスカッションが出来るよ。こんな話をテレビ電波に乗せて放送してイイのかねえ・・・

カミさん: まあ、まあ、ここでボヤいても仕方ないでしょ!

ホンノ今朝の覚え書きということで。


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