2023年1月18日水曜日

メモ: エンゲル係数の上昇は生活水準の低下の表れである

食費が消費支出合計に占める割合、つまり《エンゲル係数》は(専門的な観点からはバイアスの混在が指摘されているが)概ねその家庭の生活水準を測る指標として広く利用されている。

小生の幼少期はまだ日本のエンゲル係数が欧米先進国よりも高く、「追いつき、追い越せ」とばかりに、ニュースで取り上げられる頻度も高かったものだ。


時間があったので『家計調査』(総務省)から「2人以上世帯」のエンゲル係数を確かめてみた。

以下がその図である。

青い線は食費に「外食」を含めた計数。赤い線は「外食」を除いた食費で算出したエンゲル係数である。当然ながら、外食を含めた計数の方が上側に来る。

エンゲル係数が低ければ生活にはゆとりがあり暮らしは楽、高ければ高いほど余裕はなくなり暮らしは苦しくなる ― もちろん一部には収入の半分を食費にあてるようなグルメもいる。図はあくまでも日本全国の平均的な2人世帯の経済状況である。

これをみると、外食を除くエンゲル係数は2000年以降ずっと20パーセントを下回る高さで概ね横ばいを続けていた。

それが、2015年前後を境にエンゲル係数は上昇基調を辿り、コロナ禍で急上昇したあと次第に低下しているものの、なお20パーセントを超える水準にとどまっている。

2014年4月から消費税率が5%から8%に引き上げられたが、それがエンゲル係数の上昇に関係していると思われる。全ての品目で一斉に同率だけ価格が上がるので、割り算の商として定まるエンゲル係数には無関係とも思われるが、実質所得の低下によって食費の割合が結果として上がるのは十分予想できる。

しかし、2019年10月の消費税率引き上げは食品に対して軽減税率が課されているので、その他品目の消費を含む消費合計を分母とするエンゲル係数には、寧ろ低下要因として働くはずである。ところが、エンゲル係数はそれでもなお高い水準にある。

これを見ると、この近年、日本国内の平均的な生活水準は低下してきたと言え、(時にワイドショーで報道される)生活困窮世帯が増えているという(漠然とした?)体感とも符合している。

個人的な直感だが
日本経済は思っているより危ない状態になっているのではないか
経済専門家によっては、エンゲル係数は色々な要因で高くなることもあるので、直ちに日本人の生活水準が下がっているとは結論できない、と。そう語る向きもいるはずだ。が、実際に生活の苦しさを感じる人が国内で増加している可能性も高い。そう考えるとすると上図は整合的である。

防衛費増額を消費税を含む増税でまかなうのは、財政規律を考えれば、避けられないと考えていた。が、上の図をみる限り、消費税率引上げは家計の現状から無理筋ではないかと感じる。

試みにデータを集めたところ、「やはり・・・」と思わせる図であったのでメモしておく。


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