2023年5月27日土曜日

断想: 文字どおり『戦後は遠くなりにけり』の時代になったか

経済新聞である日経でもこんな報道をしている:

政府は今夏にも北大西洋条約機構(NATO)と協力関係の格上げに向けた文書を採択する。軍事連携に動くロシアと中国に対抗するための共通指針に位置づける。

Source:日本経済新聞、5月27日朝刊


今の国連は、第2次世界大戦の戦勝国が常任理事国として集団安全保障の中心的役割を果たすことで誕生し、世界に定着した。

国連憲章にいわゆる「旧・敵国条項」が今もなお残存しているのは、そのためだ。

Wikipediaでは以下の解説がされている:

敵国条項(てきこくじょうこう、英: Enemy Clauses、独: Feindstaatenklausel、または旧敵国条項は、国際連合憲章(以下「憲章」)で、1995年に将来的に削除することが国連総会で確認された「第二次世界大戦中に連合国の敵国であった国」(枢軸国)に対する措置を規定した第53条および第107条と第77条の一部文言のこと。

1995年の第50回国連総会(当時加盟国185カ国)で「時代遅れ」と明記され、憲章特別委員会で旧敵国条項の改正・削除が賛成155 反対0 棄権3で採択され、同条項の削除が正式に約束された。また、国連総会特別首脳会合で2005年9月16日採択された「成果文書」においても旧敵国条項について「『敵国』への言及の削除を決意する」と明記されたこれを受けて、外務省ホームページでは、本条項が死文化しているとしている。

常任理事国である中露の反対が想定されるために国連憲章改正自体は出来ていないが、上記の決議において国連憲章改正に必要な条件の一つである「3分の2以上の賛成」は示されている経緯などを踏まえて、一般的に「オブソリート(時代遅れ)」とされている。日本国としては「死文化」していると主張しているが、ロシア外務省は、北方領土に関連して国連憲章107条を持ち出してくることがあり、適用を試みる国は少なからず存在する。

ところが、米ソ冷戦の賜物である軍事同盟<NATO>にドイツやイタリアが入り、今またロシアがウクライナを攻撃している中で、日本がNATOと協力する、と。


世間では、色々なコメントをしているが、一つ言えることは、ルーズベルトやチャーチル、更にスターリン(や蒋介石も?)が戦争中に構想した平和維持体制は完全に崩壊した、というか歴史的役割を終えた。今後は先入観や偏見なき、つまり<リアリズム>という理屈になるが、そんな合従連衡が始まる。理想主義とは段々と疎遠になっていく……、こういうことなのだろう。分断化といわば言え、そんなことでもある。

確かにそんな時代もあったことを私たちは知っている。「戦後世界」の体制は死にかけている。ナポレオン戦争後のウィーン体制は30年程で崩壊した。Pax Britanicaも30年程たってから普仏戦争でドイツが勝利し峠を越した。19世紀末のベル・エポックも30年程で第一次世界大戦がはじまり崩壊した。欧州列強のBalance of Powerは1814年から1914年までの100年間持続し終焉したのである。

世界の構造は必ず変化するのである。「戦後日本」の体制も「よって立つ基盤」が構造変化する以上、「ポスト戦後世界」の中で「ポスト戦後日本」を造り上げるしかあるまい。

日本にとって損になるのか、得になるのか、日本の政治家の器が試されるときだろう ― 正直、ちょっと危うい気がするが。

憲法、同じままでイイんですかい?何しろ、明治のご一新以来、日本人は憲法をなおすなんてこたあ、一度もやったことないからネエ……大変さね。

明治から大正に移るころの「護憲運動」とポピュリズム、普通選挙導入後の政界スキャンダル続発で彩られる大正末期から昭和初期、その頃と類似の軌跡を辿れば、この日本国もおしまいでござんす、な。

【加筆】2023-05-30

 

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