サミット広島は人によって評価が分かれているようだが、最大公約数としては「成功」と受け止める人が多い。これから世間の関心は、《解散・総選挙》と《異次元少子化対策とその財源》に移って来るに違いない。ワイドショーでは、もうそんな気配があって、色々なコメンテーターが喧々諤々の話しをし始めている段階だ。
ただ、この少子化対策(≒子育て支援)をまとめ切るには政治的に相当の力技と巨視的で、かつ蛮勇にも近い決断力が必要で、今の岸田首相はそんな性格とはかけ離れたキャラクターだと。遠くからの印象ではそう感じているのだ、な。
ま、この話しは前にも投稿したことがある。
それで、今日はホンノ一言だけメモとして投稿しておきたい。
TV、新聞、週刊誌等々のマスメディアで「異次元少子化対策の財源」を語るとき、多くの有識者が「増税の必要性」に触れるのは共通しているが、その具体案はというと大半の識者が「消費税」を挙げている。世間の風を読むはずのコメンテーターが「増税」を口にするのは、それを受け入れる世間の雰囲気を(何となく?)感知しているからでもあろう。
期待される税収という点では、消費税は確かにその通りで、これまた投稿済みなのだが、ただの一人も「金融所得課税の強化」に触れないのは、正に自民党という政党の限界、NHK・民間放送局の内部における上意下達の体制がプンプンと香ってくる何よりの証拠であると思っている。
あらゆる所得の中で《金融所得》は現在の格差拡大の主因を為している要素であるのは経済専門家も合意している事実である。金融所得は、《配当・分配金》と《株式譲渡益》に分かれるが、いずれも日本では《分離課税・一律20パーセント》で、(限度額のあるNISAのことはさておき)配当が100万円の人も、譲渡益が1000万円の人も、確定申告で分離課税を選べば税率は同じ20パーセントである ― 但し、令和19年までは譲渡益・配当等の所得税額に対し2.1%の復興特別所得税が上乗せして課せられる。
前に投稿したが、日本以外の主要先進国を見ると、英米は申告分離課税について何らかの累進課税を既に実施済みであるし、独仏は分離課税税率が日本より高く、フランスでは社会保障関連経費を上乗せしている(以前の資料は削除されたようで、この資料を参照のこと。譲渡益課税は国税庁資料が良い)。こんな国際比較をしてみても、この日本で配当、譲渡益に対して、このまま一律分離課税を続けるのがよいのか、累進課税を導入するのがよいのか、分離課税税率を引き上げるべきなのか。こういう議論を一切していないのは実に不可解だ。
というか、岸田首相は就任当初、金融所得に切り込む意志を示していた。ところが、その後になって大いにトーンダウンして、今では検討の対象にもしていない。
何を検討するか、何を検討しないかをみれば、寧ろ「しないこと」を吟味すれば、その人がどんな階層の利益を代表しているかが「あぶり出し」のように浮かび上がってくるものだ。マスメディアも気が付いているはずだが、大手メディアの上層部は(多分)富裕層であり、金融資産を多く保有している階層に属し、かつ自民党支持層でもあるだろうから、政府の上層部と同じ利害を共有している理屈である。だから、報道・解説の現場でも「金融所得課税見直し」には全く触れないのではないか、と。小生はそんな風に日本国内の最近の報道をみている。
岸田内閣には「異次元」の政策は期待できないと思う。
そもそも日本社会の上層部が、自らの利害関係の枠外に出る政策を実行するはずはなく、だれかがそうする意志をもっても後のことを予想すると決断するのは無理だろう。つまり、この種の異次元の新規政策は《政権交代》を国民が選ぶことを通して実行が可能になるのである。こう考えるのがセオリーというものだろう。
自民党には自民党の限界がある。自民党の支持層を奪い取って自民党にとって代わろうとする政党も、自民党と同じ限界をもつ。政権交代は、自民党の支持層とは利害を異にする集団(≒職業層、年齢層、地域層など)を基盤とする政党が誕生するまでは無理である。本当は、自民党という保守勢力が二つに分裂し、それぞれが差別化された基盤を固めていくのが最良の展開なのである ―そうすれば、中道右派と中道左派の政党が誕生する素地ができる― が、共産党を核とする極左勢力が強い日本では右派と中道右派、中道左派までが一つの大集団にまとまろうとする力学が働く。加えて、天皇制という極めて保守的な体制を続けているので猶更のこと保守勢力は極左警戒を強固に保つ誘因が働く……
戦後日本の政治体制は、多くの要素が相互依存的に絡み合って、現状を固定している。多くの国民がいくら望んでも「異次元の政策」を実行できる構造ではないと考えざるを得ない。
これが本日の結論ということで。
【加筆】2023-05-25
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