前々稿ではこんな風に書いている:
財政危機の中で社会保障の持続性に不安が高まるポスト現代においては、ただ「カネ」だけが頼りになった。子供はコストとなり、負担に感じるようになった。だから、たとえ子育て支援のためでも増税は嫌だ、と。そう思ってしまう……
まったく、今という時代は自分が、というか自分たち家族が生きていくために実にカネがかかる。そんな感覚はほぼ大半の日本人が感じているに違いない。
ただこうも言える:
松平定信ではないが、奢侈に流れる現代社会を見直すことも大事ではないかと思うのだ、な。贅沢になってカネが足りないという側面も確かにあるのだ。
子供を育てるのに必要なお稽古ごとの費用、レジャーに連れて行くための費用、塾の月謝などなど、二昔も前はいっさい必要ではなかったのである。そんな時代にあって小生の両親は週三日の学習塾に通わせるために7千円だったか、その位の月謝を月末には小生に持たせていた。『少年マガジン 』が40円、電車の一区間が(確か)大人20円だったか(?)、記憶は薄れたがそんな時代である。入塾テストがあるような塾であったが、ずいぶん負担をかけたものだ。とはいえ、クラスメートの中に塾に通っている友人は他にいなかったと覚えている。女子で音楽教室に通っている子もピアノではなくオルガンであった。今にして思えば、小生の両親が子育てにかける出費が世間では異常値ではなかったかと推量している。そんなにまでした動機は今となっては分からなくなってしまったが……、もっと真面目に塾に通って、親を喜ばせてあげたかったと後悔しても、もう遅い。
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何が暮らしのために必要な出費であるかは世帯ごとの習慣で異なってくるものだ。とはいえ、外食や酒類を除いたいわゆる《食費》は節約にも限度があり、いかなる原因があるにせよ、食費がかさめば暮らしには余裕がなくなってくるものだ。だから、エンゲル係数が生活の余裕度(≒生活水準)を測る一つの指標として使われているのは正当な理由がある。
「家計調査」から年間収入五分位階級別にエンゲル係数(一般外食、酒類を除く)の推移を調べてみたところ、下図のようになった。
少し以前に作成したグラフだから直近月は本年2月である。原系列から算出しているので毎月の変動には季節成分とノイズが混在している。そのためSTL(Seasonal Decomposition Of Time Series By Loess)による成分分解を行い、年間収入階級ごとの傾向・循環成分を描き加えている。
前にも言及している点だが、2014年4月の消費税率引き上げ以降のエンゲル係数の上昇はただ事ではない。2019年10月の再度の税率引き上げの後、コロナ禍3年が家計に与えた大打撃もグラフから自然と伝わってくるはずだ。
興味深いのは、第5分位(=Upper)のエンゲル係数は足元で下方に転換する動きを示しているのに対して、第1分位(=Lower)は下方への修正が微弱である点だ。
このエンゲル係数の下方転換は、食生活の習慣効果によって急上昇した食費を割高な食材から割安な食材へシフトさせて節約するという調整行動からもたらされたものと推察できる。そして、食費を調整できる余地は高所得階層では大きいものの、低所得階層では元々がギリギリの生活をしているために食費調整の余地があまりない。どうやら、世帯収入ごとに置かれている暮らしの断面がこんな側面からも何だか伝わってくるわけである。
こんな図を見ると、新たな政策を実施するにしても、消費税という大衆課税を増やすことによって財源を調達するのは無理筋であるように感じる。
既に投稿しているが、子育ての他に家計で必要となる一時的出費に迫られた世帯を所得控除、税額控除で広く救済する措置が不可欠になるだろう。
マ、厚生労働省と財務省が本気になれば、具体的政策はまとまるはずである―どちらかといえば厚労省が得をする話なので、財務省がどの程度まで協力するかは分からないが。
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上の図は、e-Statからダウンロードした元データをRのtsibble型に変換したうえで、パッケージ"fable::model"でSTLを選び、そのモデル推定動作を年間収入ごとにpurrr::mapして作成したものだ。結構、面倒だ。
もっと簡単にggplotで描画する中でgeom_smoothで平滑線を描き加えてもよい。実際、上の場合、グラフ描画の中で簡単にトレンド線を書き加えた図は
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