来年以降に経済成長をつなげるためには、足元のインフレに賃上げが追いつくかどうかである、と。これが最重要なポイントである、と。メディアは、ここに来て、力説している。何だか目標が出来てウキウキとしている様だ。ま、数字で確認できる話しなので、分かりやすいですワナ。
しかし、こんな単純なことは、デフレで失われた30年の間も分かり切っていたことで、本ブログでも10年以上も前の投稿で賃金ベースアップの重要性を指摘している。
ただ安倍政権発足前の2012年の当時は、ベースアップを求める連合(=労働側)とベースアップは論外とする経団連(=経営側)で意見が対立しており、そうなると日本人は何となく企業経営が不安定になるのは本末転倒だと思うようで、思えばこの辺から日本人の経済政策談義は正常な軌道からドンドンと離れていった。いま思い返すとそう思うのだ、な。結構、日本社会のデフレ体質は根が深かったわけである。
それがいま、やっと
ベースアップ、これ大事ですよね
と、目が覚めたように力んでいるのだから、なるほどこんなレベルでは経済も停滞するはずだ ― 東日本大震災後のエネルギー・ネックもまた日本人のメンタルから派生している大きな制約になっているが。
一口に言うと、日本社会は複数の大きな勘違いから集団的に目覚められなかった。誰がそうさせたのか。結局は、日本の専門家集団がいま一つなのだという解釈になるしかなさそうだが、要するに真の問題に正面から正対してこなかった。
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その意識がいま変わりつつあるのは、とても良いことだ。
ただ、来春以降、大企業は積極的賃上げに動きそうだが、中小企業がどの程度ついて行けるかが問題だ、と。これまた正しい視線だ。
しかし、政府は賃上げが難しい中小企業には、賃上げによる人件費コスト増を税で一部補填しようと。そんな案が検討されている(とも聞く)。
これが本当なら、賃上げ困難な中小企業には補助金を支給する、ということだ。
呆れて開いた口がふさがらない話だ。
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日本政府の補助金行政は世界でも悪名高いが、それでも従来の補助金は潜在的な成長産業、あるいは安全保障と密接に関連する産業部門に投入されていた。その意味では、(独断と偏見が無視できないとしても)戦略的産業政策であったわけだ。例えば、AI(人工知能)、先端半導体企業を支えるための補助金がそうである。
賃上げ支援は真逆である。賃上げ困難な企業は、即ち過当競争に陥っており、賃上げを販売価格引き上げによって吸収するのが難しいが故に、賃上げが難しいという企業が大半だろう。
賃上げが難しく、相対的に低賃金になってしまう業種は、人が集まるのと反対に人が離職し、資本コストを抑えるために設備廃棄をし、供給能力縮小へ向かうのが《市場メカニズム》というものである。
こうすることで、人は衰退産業から成長産業へ移動できるわけで、人出不足の日本では特に必要なメカニズムである。
市場に逆らって賃上げ困難な中小企業を税で支えようという人の頭脳構造はどうなっているのか?
またまた当然のことを言っている顔をして
弱者に寄り添うことは政治の根本です
などと高言するのだろうナア・・・そう想像すると暗澹としてくる。
もしそうなると、これまでもそうだったが《社会主義的気分の夕暮れ》の中で日本は薄ボンヤリと衰えていくしかない。淋しいネエ……。
かわいい子には旅をさせよ
少し前の東芝のように泣いて馬謖を斬るのは経営失敗がもたらした結果であるが、斬るべき馬謖に孔明が寄り添っていれば国が滅んだに違いない。寄り添う事だけが愛ではない。
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