Loading [MathJax]/extensions/tex2jax.js

2024年2月16日金曜日

ホンノ一言: 2023年第4四半期の実質GDP速報をみて

昨年第4四半期のGDP速報が公表された。それによると、実質GDP季調済前期比で、第4四半期は▲0.1%、年率換算値では▲0.4%となった。第3四半期の季調済前期比は▲0.8%であったので、2期連続でマイナス成長となったわけで、日本は景気後退に入っていると判断してもよい状況でもある。

ちなみに、経済成長の駆動力を伝える内需の成長に目を移すと、実質GDP成長率への寄与度で測って、昨年第2四半期以降、▲0.7%、▲0.8%、▲0.3%になっている。年率に直すと、日本国内の消費、投資、政府支出といった内需項目は、コンスタントに▲1%から▲2%程度の大幅なマイナス成長要因であり続けていることになる。

頼みは、円安に支えられた海外への輸出だけであるというのは、

現在の日本経済はかなり悪い

と。多くの経済専門家がそう解釈しているのは決しておかしくはない。

ただ、何度も投稿しているように、GDP統計、特に四半期系列については推計技術上の問題があることから、小生はあまり実質季調済前期比という数値を信用していない。季節調整計算から生じたフィクシャスな結果であるとも思っている。

そこで、例によって昨年の景気動向指数から先行系列(le)と一致系列(co)を図に描くと、下図のようになる。最終月は昨年12月である。ちなみに、毎月半ば頃に景気動向指数を確認しておくのは、個人的には欠かせぬルーティンになっている。



URL: https://shigeru-nishiyama.shinyapps.io/getdrawci/


景気の現況は一致系列が示している。これは2022年夏までは順調に回復していたが、それ以降は一度下降して、その後の上昇も一服気味である。昨年夏以降は、ほぼ横ばいである。実質GDPの季調済前期比のように《マイナス成長》になっているかと言えば、そこまで言うのは眉唾ものだと感じるが、やはり昨年後半の国内経済は決して楽観できるものではない。この位の判断はしてもよい。

とはいえ、
足元でマイナス成長に陥っている・・・
これは流石に、全体としてそれほど暗いわけではないと観ている。

というのは、先行系列の方をみると、2023年1月以降、昨年を通して、ほぼ横ばい基調が続いている。先行系列が下降して景気後退を示唆したのは、寧ろ2022年初から後のことである。先行系列は2022年の間ずっと悪化を続け、景気の悪化を示唆し続けていた。通常、先行系列は半年から1年程度のラグをもって、生産、販売など一致系列の不調につながることが多い。即ち、2023年に入ってからの景気の停滞は、それ以前の先行系列の悪化によって示唆されていたものであった。こう観るのが定石というものだろう。

では、足元の先行系列の動きはどうか?

先行系列の悪化の動きは止まっている。横ばい基調が1年間続いている。

先行系列の横ばい基調は昨年12月まで変わっていない。ということは、この先の一層の景気悪化は考えにくい。そう予測するべきだろう。


景気判断としては、こんな感じかなあ、と考えているのだが、OECDのLeading Economic Indicator(LEI)も見ておこう。

日本とアメリカの2国についてLEIを図にすると下図のようになる。最終月は上図と同じ2023年12月である。


URL: https://shigeru-nishiyama.shinyapps.io/get_draw_oecd_lei/

これをみると、日本のLEIは2023年を通して概ね横ばい基調を続けており、日本政府が公表している景気動向指数・先行系列と整合的である。
景気に対して先行性をもつデータは、昨年1年間ずっと横ばいを続けている
これは複数のデータに基づくかなり固い結論だ。

故に、日本の国内景気の今後を予想する時、景気が一層悪化していくという予測は成り立ちがたい。

面白いのは、アメリカのLEIが明瞭に回復している点だ。これを見ると、インフレ率の前年比がなお3%程度の高さにあるものの、金融当局(FRB)がこの点にそれほど執着せず、バランスよく賢明に行動するとすれば、コロナ後のインフレをほぼ解決し、景気のソフト・ランディングという目標を達成しつつある。そんな明るい予測もあり得る状況だ。

Wall Street Journalなどによると、パウエル議長の成績評価はこれまで「良くもなく、それほど悪くもなし」程度であると以前に読んだことがあるが、足元のアメリカ経済をみると、パウエル議長の評価も<上振れ>する可能性がある。


もちろんFRBの金融政策の他にもリスクはあるわけで、
  1. 中国の金融経済当局の政策運用能力
  2. ロシア=ウクライナ戦争、イスラエル=ハマス紛争に対するアメリカの外交能力
この二つは数あるリスクの中でも相当大きなリスク要因として世界の誰もが知っているものだろう。


それにしても、今日あたりのモーニングショー。珍しく経済ネタをとりあげていた。が、話しは足元の株価上昇に中国経済の不振を関連付けるという「物語り」で、株価が上がったからと言って日本経済が好調なんて実感はまったくありません、と。中国なんです、と。オヤオヤ、TVに出演しているお歴々は、ご自身のポートフォリオに株式は含まれていないので?・・・と。嬉しくないはずはないんだがナア・・・と。

面白いストーリーであったが、何だか成績が良と可の学生がディスカッションしている感じでもあり、正直、参りました。参ったと同時に、怒りを感じたりも致しました。

そのうち、新NISAの普及と退職金支払合計額の推移、米株投資と円安の関係も話題になるでしょう。最近、投資と言えば投資信託だとTVで盛んに宣伝しているが、日本の投資信託の利回りと(日本では買えなくなった)アメリカのBDC(Business Development Company)の利回りを比べるような話がそのうち登場するのかどうか、興味ある点で御座いましょう。


民主主義社会における最適政策の選択を考えるとき、その時々における劣悪なマスメディアの活動は、国会のTV中継、バイアスの酷い「世論調査」とも相まって、確かにリスクの一つに数えるべきかもしれない。


剣呑、剣呑・・・


0 件のコメント: