2024年5月2日木曜日

補足: 足元のインフレ進行について

アメリカのインフレが粘着的(Sticky)で、ターゲットとしている2%まで中々下がらない、というより相当上振れしているので、金利を下げたくても下げられない。そんな状況だとFRBも伝えたいようだが、日本はどうなのだろうか?

日米のマネーサプライの違いから、円が切り下げられるのは当たり前のロジックだと、最近の投稿では書いているが、日本のインフレは足元でどうなっているのだろう。

実は、「帰属家賃を除く総合」でみると足元ではインフレがピークアウトしてきている。

日銀は生鮮食品を除く総合で見たコア・インフレを主に見ているようであり、時には状況に応じてエネルギー価格まで除くコア・コア・インフレを参照しているようだが、ここでは帰属家賃を除く総合をとっている―その理由(の一端)は以前にも投稿したことがある。

前年比ではこの3月においても日本のインフレ率は2%を超える高さにあって、物価の高さが意識されているのが、率直な国民心理だと思う。


ところが、小生が愛用している対前月インフレの年率値(Krugmanは対半期インフレを参照することが多いようだが)を図に描くと以下のようになる。黒い実線は月次データをSTLで成分分解して得られる基調(trend)である。



明らかに、「物価が上がる」という意味でのインフレ率はピークアウトしている。少なくとも価格引き上げが加速しているという状況は過去のものになっている。


実は、1年前の今頃、アメリカのインフレが現時点の日本のインフレのように、まるでピークアウトしたかのような形を示したことがあった。例えば、上にリンクを付している同じ投稿でそうしたことを述べている。

ところが、最近になって、アメリカのインフレはかなり粘着的であることが明らかになった。需要超過体質であるのだな、アメリカは。故に、いまの時点でインフレ・ピークアウト感があるとしても、今後の1年間を見通すときに日本のインフレがどう進行するかは分からない。日本のインフレも(ひょっとすると)粘着的であるかもしれない。日銀(それに政府も?)のインフレ容認姿勢も(今のところ)明瞭である。

アメリカでは、賃金プッシュとインフレ加速の悪質ループが(最近になって)懸念されているようだ。他方、日本では、賃金と物価の上昇ループがまるで望ましいかのように語られることが多い。

TVのワイドショーなどは典型的なのだが
賃金と物価が上がっていく状況に早く持っていってほしいですネエ
と。小生は「何というノーテンキか」と、驚くばかりなのだが、インフレを心配もせず、安楽に語り合っている。もっと本質的に重要な「生産性向上」とそのための「投資」、「市場の活用」、「自由化」は、世間から嫌われるためかどうか、まず口にしない。結局、実質的な問題の解決は世間受けが悪いので、すべて逃げて、
インフレにすればいいんだよネ
と。こう言いたいわけですか?とすると、日本って変われないネエ、呆れますナア・・・新しい逃げ道を見つけただけじゃない、ダメですよ、形だけじゃあ、ダメですよ、と。そう感じることが実は多いのだ。

人の知恵で問題を円満に解決できないなら、天意でもって運命的に、というより社会に備わった自然のメカニズムが働くことを通じて(最終的には)解決されるまでのことだ。どんな風になるにせよ、人間社会はそれでも続くものだから ― "Let it be"である。

マ、インフレが進行するだけでも、少なくとも政府は助かる。

しかし、仮にでもそんな事態になれば、日銀は強力に金利を引き上げる。日本は一時的にでもせよインフレの進行と雇用の悪化が同居するスタグフレーションに陥るのは確実だ。

デフレよりインフレが「好き」なんですか?そう聞きたいところです。


何だか、日米の金融当局と政府がアウンの呼吸でマクロ経済上の火遊びをしているようでもある。で、やはりアメリカが主で、日本は従の役割だ。日銀の低金利維持は、円からドルへのマネー移転を維持することでもあり、アメリカを助けている。にしても、日本人の心理はもうこれ以上の円安に我慢できない限度に近付いてますゼ、どうします?これが今の情況であろう。

杞憂かもしれない。豪雨で床上浸水して、びしょ濡れになった家の中で暖房を使って火事を心配しても仕方がないわけだ。そんな理屈でイイという事かもしれない。



0 件のコメント: