2024年11月30日土曜日

ホンノ一言: ヨ党でもない、ヤ党でもない、ユ党に頼らざるを得ない日本政治のいまを知れ……、ということか?

野党である国民民主党が、与党である自民党、公明党との政策協議を進め、同党の目標である基礎控除引き上げに向けて努力しているところである。

その様子は、メディア報道で出ない日はないほど、毎日報道されているわけだが、中には

国民民主党は与党なのか、野党なのか?

と、こんな批判を加える御仁もいるようで……。

マア、実に日本的な文化の古層に残る《大義名分》という奴だと思うのだが、このような超越的な観点にわが身をおいた批判は、目にする人、批判の的にされた人等々、多いのではないだろうか?


そうでなくとも、日本人は《そもそも論》が大好きだ。「そもそも論」のどこが便利であるかといえば、

時間をかけて現実を詳細に自分の目で調べることなく、自分一個の思想に基づいて、すぐさま是非を論じることができる

つまり、当人にとっては最も簡単で、かつ相手は最も反論しづらい(と感じさせる)ディベート戦術 ― ディベートが日本ではいま一つ普及しないのもここに根因があると思っているほどなのだが ― それが大義名分論だと小生は思っている。

西洋風にいえば"Armchair Detective"ならぬ、"Armchair Criticism" と言えそうで、今様で言うと「コタツ評論」、「コタツ記事」という言葉になるが、要するに、日本(だけではなく中国、韓国を含めた儒教文化圏)では非常に愛されるのが「大義名分論」である。実際、欧米の新聞報道を読んでいて、

これは西洋の大義名分論だナア

と感じることはない ― バイデン政権辺りは民主主義の大義を語るのが好きであったが、ケース・バイ・ケースで使い分けているのは明瞭であり、本気で聞いている国はほとんどないだろう。

患者に問診したり、診察したりすることなく、

病気は気の病だと言いましてナ、人間には自然な治癒力がありますから、心配はいりません

と。これで終始する医者が完全な藪医者であるのは誰もが分かるはずで、これと同じく、政治や経済について、大義名分論を展開して終わる御仁は、問題解決には「無用の人」と言うべきであろう。

大義を語るときは、語ることが善であることの根拠を語らなければならないが、ほとんどの場合、それが善である論理は示しえず、そう思うから思うのだと、その程度のことに終わるものである。


~*~*~



簡単な図で日本政治の現在は表せる。

青の与党と赤の野党は、その中心点においては支持基盤、基本政策が対立しており、挙国一致連立政権などハナから無理な相談である。

しかし、個々の政策では重なる部分もあり、本当はその重なる個々の政策部分こそ、与野党が一致している政策で、真っ先に実行するべき政策なのである。

ところが、現在は少数与党であるから、野党が基本的対立構造に忠実に従って、政権を打倒する目標を最優先するという大義名分に基づき、本来は与野党ともに賛成するはずの政策にも反対して実行不可能とする。野党の戦術によってはこんな状況も大いに考えられるわけだ。


本来は、過半数を制している全野党が政策協議をしてマニフェストをまとめれば、連立政権が構築できる。そうすれば、野党連立政権によって、与野党共有の政策を直ちに可決、実行できる。しかし、それが出来ないのだ。何故かと言えば、野党集団の内部で、上と相似形の、というより重なる部分をもたない真正の(?)対立構造が包含されており、一致点が見出せないからだ。つまり野党の中心点が図にはプロットされているが、現実にはないのである。故に、野党として行動できず、野党連立政権を構築できない。


こんな中で、野党の一部である国民民主党が、個別政策について与党と協議を進めている。この行動を批判する人がいたりするのだが、もし国民民主党が与党と対立する野党として大義に沿って行動すれば、そもそも与党は過半数を得ていないのだから、野党の反対する政策は実現できない。が、その野党も内部対立のため、与党が反対する政策を実行する見通しはない。上図の赤と青が重なる部分、つまり与野党で重なる部分の政策なら実行可能だが、実行可能だから実行されるとは限らないのが国会の現実だ。

以上の議論をまとめると

与党は本来求めている与党の政策を実行できず、野党もまた内部で対立しているが故にどの野党も自党の政策を実行できない。

つまり、与党である自民・公明党も野党の各政党も政策実行力をもたない  


これが日本政治の現状ではないだろうか?

与野党とも政策実行力をもたないにも関わらず、基礎控除引き上げが、いま実行されようとしている。それは野党の一部である国民民主党が与党と協議しているからである。そして、基礎控除引き上げには国民の大半が賛成していると、(信頼性はさておき)最近の世論調査は示している。

これは悪いことなのか?

逆に、問いたいところだ。

0 件のコメント: